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ふと思う時がある
私は、この世界で
賢者以外の何になれるのだろう
「賢者とは名ばかりの、居場所のない異端者のくせに!」
そんな風にオヴィシウスに言われてから
ずっと考えていた。
ある日突然、この世界に召喚され
何の力もない私が
“賢者”
そう呼ばれている。
でも私は知っている。
“賢者”
それでない私に意味などない
ここにいる存在意義というものもない
だとしたら私は
何のためにここにいるのだろう。
ただ、賢者がこの世界に必要だったから
それだけだろう。
賢者に選ばれるシステムはよく分からないけれど…
誰でもいいとしたら?
もし…
前の賢者様のように
私も、忘れ去られてしまったら?
それはもはや、”賢者“という名前を借りて
一定期間存在しているだけの、ただの人間だ
もし私が賢者ではなかったら
例えばこの世界で
偶に、賢者の魔法使い達と
道ですれ違うような役だったら。
本来、必要ともされないだろう
どこかで死んでさえいるのかも。
無論、普通に生きれていたら
こんなことは思わなかっただろう
別に、特別な役で
主人公で
生きたいわけじゃないけど
もし私に力があったら
何かできたら
魔法使いのように、誰かを守ったり
癒したり
何かのために闘うことができたら。
また違ったのかもしれないけれど。
カイン「”賢者“様!おはよう、入ってもいい か?」
賢者「どうぞ」
カイン「ハイタッチ」
「ようやく見えた!
賢者様、ネロが朝食を作ってくれている
もう支度は終わったか?」
賢者「はい、さっき終わったところです。
一緒に行きましょう」
”賢者“様…
そう呼ばれるたびに
なんだかいつもより
大きく引っかかっている気がした
賢者「あ、アーサー」
アーサー「おはようございます、”賢者“様」
賢者「…」
まただ
賢者「、アーサーもこれから朝食に向かうところでしたか?」
アーサー「はい、もしかして賢者様とカインも?」
賢者「そうなんです、一緒に行きましょう」
思えば、ここに来てから
まともに名前を呼ばれていない気がする
私も、みんなと同じように
名前で呼び合いたい
様や賢者
そんなものじゃなくて
ちゃんと”晶”として…
ネロ「お、”賢者“さん、おはよう」
賢者「おはようございます、ネロ」
ヒースクリフ「”賢者“様、おはようございます」
賢者「おはようございます、ヒースクリフ」
ファウスト「”賢者“、おはよう」
賢者「おはようございます、ファウスト」
スノウ、ホワイト「”賢者“ちゃん!おはよう♪」
賢者「おはようございます、スノウ、ホワイト」
賢者と呼ばれて
答えるのにも慣れたけど…
時々、私は私の名前が分からなくなる。
賢者「今日はミチル、リケ、ルチルと私で任務に向かえばいいんですよね」
カイン「そうなんだ
本当は俺が着いてってやれたらいいんだが…
別の依頼が入ってしまって」
(サクちゃんもメンテナンス中)
賢者「大丈夫です、よろしくお願いしますね。」
カイン「ルチル、賢者様のことは頼んだ
お前を信頼してるぞ!」
ルチル「はい♪もちろん、お任せ下さい」
ミチル「僕だって守れますよ!」
リケ「僕も、がんばります」
賢者「ありがとうございます、みんな
よろしくお願いします」
カイン「なあ、フィガロは空いてないのか?」
フィガロ「俺は今日、忙しいから…」
カイン「何がだ?」
フィガロ「…お昼寝、かな」
カイン「…とにかく、よろしく頼む」
賢者「はい」
ルチル「この辺りで不審な影を見たという報告をいただいたのですが…」
賢者「うーん、特にそれらしきものは見当たらないですね…」
ミチル「あ!」
賢者「ミチル、どうしました?」
ミチル「可愛いお花が…」
賢者「わあ、本当だ、綺麗ですね」
リケ「せっかくなら少し摘んで、魔法舎のみんなに持って帰るのはどうですか?」
ルチル「そうだね、少しだけ摘ませてもらおうか」
賢者「…うーん…」
ルチル「あれから30分以上この辺りを歩きましたが…
何も見当たらないですね…」
賢者「そうですね…ん?」
その瞬間
ザク、っとなにか固いものを踏んだような感触が足にあった
賢者「なにこれ、マナ石…」
ふと空を見上げると
賢者「どこ…?」
さっきまでの青空とは全く違う
暗くて淀んだ、まるで今にも豪雨が降りそうな
そんな空と
足元にぽつぽつと転がるマナ石
賢者「ミチル、リケ、ルチル…」
ルチル「空間魔法…?
…いや、特に異変を感じないので
この辺り一体が変化してしまったのかもしれません
何があるか分かりません、慎重に動きましょう。
賢者様は私から離れないでください」
賢者「分かりました」
ルチル「…っ
オルトニク・セトマオージェ」
賢者「…なに、あれ…」
いち早く異変に気づいたルチルが呪文を唱えたあと
全員が後ろを振り返ると
そこには狼狽えている、得体の知れない
不気味で、大きな黒い影がいた
ここにいる全員が、
叶わない
そうよぎったことを、なんとか静めた
茫然としていると突如
大きなうめき声と共に
今にも飛ばされそうな風と
黒い煙に襲われた
ミチル「オルトニク・セアルシスピルチェ!」
ルチル「オルトニク・セトマオージェ」
「リケ!賢者様を連れて来た道を戻って!」
リケ「分かりました!」
「賢者様、こっちに…」
まるで何かが叩きつけられたような…
リケ「ルチル!」
ルチル「…う…」
かろうじて意識はあるようだが
苦痛に顔を歪めている
ミチル「兄様!…っ、オルトニク・セアルシスピルチェ!」
リケ「…ルチル!!」
「っ、サンレティア・エディフ!」
「ごめんなさい、賢者様…!」
「私は大丈夫です、ルチルを…!」
フィガロ「…賢者様たち、遅くない?」
レノックス「ご無事だといいのですが…」
ファウスト「フィガロが忙しいなどと言うから…」
フィガロ「ん?俺のせい?」
シャイロック「心配ですね、ミスラ」
ミスラ「はい?」
シャイロック「貴方の魔法は空間魔法だったでしょう」
ミスラ「はい」
シャイロック「賢者様達が任務に向かった場所への扉は開けますか?」
ミスラ「はあ…
なんで俺が」
シャイロック「ルチルとミチルも任務に行っています、何かあれば貴方にも良くないのでは?」
ミスラ「…よくさらっとそんなことが言えますね」
シャイロック「…ふふ」
ミスラ「まあ、仕方ないですね」
「アルシム」
ミチル「オルトニク・セアルシスピルチェ!」
リケ「サンレティア・エディフ!」
賢者「…っルチル、大丈夫ですか…?」
ルチル「賢者様っ…、すみません、本来なら私が守らなければいけないのに…
守られてしまうなんて…、まだまだですね…」
賢者「そんなことありません…
ルチルはいつも、ミチルやリケ、私や街の人のことだって守ってくれています…
ありがとう、無理に喋らないでくださいね」
ミチル、リケ「賢者様!!!」
ミチルとリケに一斉に呼ばれて
後ろを振り返ると
?「…」
そこには黒い影がいて
考える間もなく
襲いかかってくるのが見えた
賢者「…っルチル!動かないで!」
木の陰にルチルの体を隠し
前に出た
ミチルと摘んだ花をなるべく潰さないように
ポケットに入れて。
“逃げればよかったかも”
“なりふり構わずに走って
助けを呼べばよかったのかも”
“ていうか、ミチルとリケは?”
“私、死ぬのかな”
それが私に触れる前
時の流れが遅くなった気がした
分からないけどでも
私は確かに思った
初めて、この世界で
身を挺して
誰かを守れるかも
“みんなのように”
って
鈍い音と共に
ものすごい勢いで体が宙に浮くのを感じた
痛いなあとか
そんなことを思って
どこに行くんだろうって
ふと、身体の体温が下がっていくのを感じた
(冷たい…)
濡れているんだろうか
血?
それとも湖?
今はもう、わからなかった
ミスラ「アルシム」
「…どこですか、ここ」
ミチル「…っミスラ!!」
ミスラ「、ミチル?ルチルはどうしたんです?」
ミチル「兄様が、襲われてっ…
賢者様が、襲われた後湖にっ…」
ミスラ「っ…アルシム」
ミスラ「アルシム」
フィガロ「おかえり…って
ミチル、リケ、こんなにボロボロになって
何があったんだい?」
ミチル「兄様と、賢者様がっ…」
リケ「ミチル、泣かないでください…」
ミチル「…っぅ…」
フィガロ「ルチル!酷い怪我を…」
ミスラ「…もっと酷いのはこっちですよ」
フィガロ「…賢者様?」
カイン「賢者様!」
「おい、ミスラ!賢者様は…」
ミスラ「俺に聞かないでくださいよ」
フィガロ「カイン」
カイン「フィガロ!…賢者様、どうなんだ?」
フィガロ「意識を失ってる、酷い怪我だ。
任務先で相当厄介な奴と出くわしたみたいでね。
ルチルを庇って襲われて、そのまま湖に投げられたみたいだ」
カイン「…ルチルと、ミチル、それからリケは?」
フィガロ「ルチルも、意識はあるが酷い怪我だ。
ミチルとリケは歩けるがあの2人も怪我をしてる、手当ては終わっているよ」
カイン「そうか…、なあ」
フィガロ「ん?」
カイン「賢者様、死なないよな…?」
フィガロ「…
俺にできる限りの治療はした、あとは賢者様次第かな」
それから、何人もの魔法使いが集まった
賢者のために。
街にも、このことは広く知れ渡っていた。
アーサー「賢者様…もう3日になりますが、まだ目を覚まされないのですか…」
フィガロ「…」
クロエ「賢者様…っぅ…」
ラスティカ「泣かないで、クロエ。
きっと大丈夫」
ヒースクリフ「賢者様…」
オズ「…」
ネロ「賢者さん…」
レノックス「賢者様…」
ムル「賢者様、まだ寝てるの?」
シャイロック「こら、ムル
…にしても、長いですね」
賢者は相変わらず、弱い呼吸を繰り返しているだけだ
ファウスト「賢者…」
スノウ、ホワイト「賢者ちゃん…」
ルチル「私が守れなかったから…」
ミチル「そんなことありません、僕が
もっと強ければ…」
リケ「ルチルもミチルも、自分を責めないでください…」
こんなに重く淀んだ空気は魔法舎にとって
久しぶりのものだった
ムル「賢者様」
賢者「…ムル…?」
ムル「久しぶりだね、こんばんは」
賢者「こんばんは…」
ムル「ねえ、いつまで寝てるつもりなの?」
賢者「…っえ?寝てる…?」
ムル「そっか、忘れた?
3日前に君にあったこと」
賢者「あ…
うっすら、分かります」
ムル「悲しいよね」
賢者「…?」
ムル「みんな、君のこと賢者賢者って呼ぶから」
賢者「…あ…」
ムル「俺は知ってるよ、君の心の弱い思い。
君には”賢者“じゃなくて、名前があるのにね」
賢者「…」
ムル「分かるよ、晶
みんなが呼び合うように、名前があって
私は”賢者“そんな名前じゃない」
賢者「うん…」
ムル「今の君は…まるで
帰り方を忘れたつばめみたいだ」
賢者「…」
ムル「ねえ、役に立てた、そう思ったでしょ?」
賢者「…っ」
ムル「突然召喚されたこの世界
どこにも居場所はなくて
何も持たない自分が賢者と呼ばれて
嫌気が刺したんだろう?」
賢者「うん」
ムル「君がここにいる意味…
それは賢者だから」
賢者「…うん」
ムル「もちろん、間違っていないさ」
賢者「…」
ムル「君が賢者だから
必要で、ここにいる
そして、賢者と呼ばれている」
賢者「…」
ムル「でも、忘れられてしまうかも?
大切になることって、怖いよね」
賢者「うん…」
ムル「毎朝、美味しい朝食を作ってくれるのは?」
賢者「…?ネロ…」
ムル「毎朝、扉をノックするのは?」
賢者「カイン…」
ムル「君と魔法使い達に、洋服を仕立ててくれるのは?」
賢者「クロエ…」
ムル「君に、美しいピアノを聞かせてくれたのは、指揮官が大切だと教えてくれたのは?」
賢者「ラスティカ…」
ムル「ぜーんぶ正解」
賢者「…?」
ムル「君と魔法使い達が過ごしてきた日々の話さ」
賢者「…」
ムル「賢者と、賢者の魔法使い
君達が出会ったキッカケは、確かにそこにある」
賢者「…」
ムル「けれど、君と魔法使い達が過ごしてきた日々には
それだけだったかな?」
賢者「…」
ムル「そんなに、淡々とした
何の感情もない日々だった?」
賢者「…違う…」
ムル「…そうだよね」
賢者「…
嬉しかった。
クロエが仕立ててくれる洋服は、いつも可愛くて、思いやりがあって…」
「カインは、いつも私にとっての1日の始まりで。ずっと守ってくれて」
「ネロは、美味しいご飯を毎日振る舞ってくれて」
「どんなことにも素敵だねって…
教えてくれたのはラスティカで。」
ムル「そうだね」
賢者「…でも、怖かった
私は賢者だから、ここにいて
きっといつか忘れられて。」
ムル「うん」
賢者「サクちゃんも…
みんなも、大切になったあとに、失うことが怖くて。」
ムル「うん」
賢者「本当はみんな、私の名前すら忘れちゃってるんじゃないかって…
っ…私のいる意味なんてないんじゃないかって…」
ムル「賢者様」
賢者「…っぅ…?」
ムル「起きたら、名前で呼ばれたい、ってみんなに言ってみようよ」
賢者「…え…?」
ムル「話してみようよ、みんなに」
賢者「…」
ムル「忘れられたり、大切な何かを失うのが怖いこと」
賢者「…」
ムル「ここにいる意味が、分からなかったこと」
賢者「…うん…」
ムル「襲われたとき、本当はものすごく怖かったこと」
賢者「…うん」
ムル「だーいじょうぶ、きっとみんな聞いてくれるよ」
賢者「…どうして…?そんな風に…」
ムル「だって、君と魔法使い達が過ごした日々は
そんな淡々としたものじゃないでしょう?」
賢者「…」
ムル「賢者としての君じゃなく
1人の人間として
君と過ごしていた」
賢者「…うん…」
ムル「賢者でも、もちろんあるけど
1人の友人としても、君のことを見ていたんだよ」
賢者「…うん」
ムル「今まで過ごしてきた日々が、そうやって言っていると思わない?」
賢者「…うん。」
賢者「…」
ファウスト「…賢者?」
「フィガロ、賢者の目から…」
フィガロ「涙…?」
カイン「っ…賢者様!」
フィガロ「みんな、賢者様に呼びかけよう
意識が戻りかけている」
アーサー「賢者様!」
ネロ「賢者さん!」
ファウスト「賢者!」
スノウ、ホワイト「賢者ちゃん!」
アーサー「…賢者様、目が覚めたら、私とオズ様の話を、また…させてください」
カイン「賢者様、明日の朝もまた、起こしに来る」
ルチル「賢者様、また任務に行きましょう」
ミチル「賢者様!また一緒に可愛いお花を摘みましょう!」
リケ「賢者様…まだ貴方から教わりたいこと、たくさんあります」
ネロ「賢者さん、起きたら、とびっきり美味い飯を作ってやる、明日も明後日もずっと」
シノ「賢者、1番最初にお前に呼ばれた魔法使いはオレだ。まだ何にもできていないんだから、早く起きろ」
ヒースクリフ「賢者様、まだ、何も賢者様に返せていません…
突然この世界に来られたあの日、ドラモンドさんの話ではなく、俺たちを信じて着いてきてくれた…
貴方にまだ、恩を返せていないんです」
ラスティカ「賢者様、私はまだ、貴方に聞かせたい音色が沢山あります」
クロエ「賢者様!起きたら、とびっきり可愛いお洋服を仕立ててあげる…!」
レノックス「賢者様、また、貴方をお守りします。」
ムル「賢者様!まだ面白いこと、いーっぱいしようよ!」
シャイロック「賢者様、また沢山お喋りしましょう」
ファウスト「賢者、僕を助けてくれたあの日のこと、感謝しているんだ。君にも恩を返したい」
オーエン「…」
ブラッドリー「賢者のやつ、いつまでも寝てんじゃねえよ」
ミスラ「いい加減、起きたらどうですか」
スノウ、ホワイト「賢者ちゃん!起きて!」
オズ「‥賢者、私は、お前がいないと困る」
ムル「ほら、呼ばれてるよ
…賢者様、もうとっくに、色んな人の役に立ってたみたい」
賢者「そう、ですね…
ふふ、帰らないといけないみたいです」
ムル「嬉しいって、顔に書いてあるよ」
賢者「っえ?!」
ムル「冗談。」
賢者「もう…
…私、大丈夫でしょうか。」
ムル「…きみこそが、かけがえのないもの。
きみの代わりはいないって。」
賢者「…!」
ムル「前にも、教えてあげたでしょう」
賢者「そうでしたね…
ありがとうございます、ムル」
ムル「どういたしまして」
賢者「…また、会えますか?」
ムル「魂の欠片がある限り」
賢者「じゃあ、また」
ムル「いってらっしゃい」
賢者「…」
カイン「賢者様…」
ファウスト「賢者…!」
スノウ、ホワイト「賢者ちゃーん!」
賢者「みんな…
ごめんなさい、待たせてしまって…」
フィガロ「謝ることないよ、君が目覚めてくれてよかった」
賢者「ルチルは…」
ルチル「賢者様のおかげで、元気になりました。
ありがとうございます」
賢者「よかった…
ミチルと、リケも元気ですか…?」
ミチル、リケ「「バッチリです…!」」
賢者「ふふ…」
フィガロ「君、人の心配はいいから
体調はどう?」
賢者「うーん…
まだ、よく分からないですが…
ちょっとだけ身体が痛いかもです」
フィガロ「まだ安静にしていてね」
賢者「はい。
…みんな」
フィガロ「うん?」
賢者「今更こんなことを言うのも恥ずかしいんですが
私、きっと、みんなのことが大好きなんです」
フィガロ「…うん」
賢者「だから、怖かったんです。
”賢者 “って呼ばれることが。
私は、この世界でずっと1人でした。
”賢者“そういうものにしかなれなくて。
私の存在する意味は、きっとそれで
賢者じゃない私には意味はなくて…」
フィガロ「…」
賢者「…私も、いつか忘れられてしまうんじゃないかって。
そしたら、私は本当にここに、”賢者“という名前を借りていただけの、ただの人間になってしまう気がして。」
フィガロ「…うん」
賢者「そんな風に考えていたら、何かを大切にすることが怖くなったんです。
…サクちゃんも。」
フィガロ「うん」
賢者「だからせめて、私もみんなのように
誰かを守ったり、癒したり…
何かのために闘えたら、って思ってしまって。」
フィガロ「うん」
賢者「そしたら、本当に賢者としてここにいる意味があるのかも、って…」
フィガロ「…うん」
賢者「それでこんな、身を挺して守るようなことをしてしまったんですけど…
すごく、怖かったです。
このまま、死んじゃうのかもなって…。
でも、ルチルが元気でよかったです。」
フィガロ「…賢者様」
賢者「…はい」
怒られるのかと思った
フィガロ「ごめんね、きみにそんな風に思わせてしまってたなんて」
賢者「…っへ?」
フィガロ「君の名前は、晶。真木晶だ。」
晶「そう、ですね…」
フィガロ「君がよければ、これからは名前で呼んでもいいかな。」
晶「…みんなは、それでいいんですか…?」
賢者の魔法使い「「もちろん!」」
アーサー「まだ、少し慣れないですが…」
ブラッドリー「呼びやすくなって助かるぜ」
晶「…ずっと、みんなが名前で
友達のように呼び合っているのが羨ましかったんです。
みんなは、友達なんですけど…」
ブラッドリー「何辛気臭ぇこと言ってんだ晶!
俺達とお前はもう友達だよ」
晶「…!
…ぅ…ありがとうございます…」
スノウ、ホワイト「うわ、ブラッドリーちゃんが泣かせた〜」
ブラッドリー「は?おい北の双子、ぶち抜くぞ」
フィガロ「はいはい、喧嘩しない」
晶「…ふふ
賢者様って呼ばれると、賢者様と、魔法使い、たったそれだけのような気がして。
みんなと、友達になりたかったんです。」
フィガロ「…」
晶「ありがとうございます、みんな」
フィガロ「こちらこそ、いつもありがとう」
晶「これからも、よろしくお願いします。」
「あ、それと…
これ、ミチル達と摘んだんです。」
晶「…ネロ、これは作りすぎでは…?」
ネロ「美味いもん作るって言ったからな」
晶「食べられるかなこれ全部…」
晶「ラスティカ…
この曲も、綺麗な音色ですね」
ラスティカ「よかった。
晶が、目覚めたら聴かせたいと思っていたんです。」
晶「ありがとうございます、聴かせてくれて」
晶「…クロエ?これは?」
クロエ「あっ!これはぜーんぶ晶のお洋服!」
晶「えっと…嬉しいけれど、全部着れない…」
クロエ「大丈夫!今日のかいきいわい?のパーティー衣装はみんなお揃いで決めてあるから!」
晶「ありがとうございます」
クロエ「あとは普段着として着てくれたら嬉しいな!」
晶「…ありがとうございます、クロエ
じゃあ毎日1着ずつ、大切に着させてもらいますね。」
クロエ「…!うん!」
このあとのかいきいわいパーティーも
大変楽しいものになりましたとさ。