テラーノベル
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< pnside >
遠くで誰かが俺を呼ぶ声がする
けれどその音は、水の底から聞こえてくるみたいに歪んでいた
「……ぺいんと」
はっきり聞こえるはずなのに、すぐにまた霞んでいく
目の前の景色は、まだあの日のままだ
木の机の匂い 雨音 本棚の影
俺はそこから動けない
手を伸ばすと、触れた本がぱらりと音を立てる
開いたページに、見慣れた字が並んでいた
それは昔rdに借りて、一緒に読んだ小説の一節
俺は文字を追いながら、声にならない声でつぶやいた
pn「……これ、まだ覚えてるんだな」
その瞬間、文字が滲んだ
紙の上で黒いインクが溶けて、雫のように広がっていく
目を上げると、図書館の光景がひずみ始めていた
rd「ぺいんと」
今度ははっきりした。
その声は懐かしいものじゃない。今ここで呼んでいるらっだぁの声だ。
俺は思わず振り返った。..が、そこには誰もいなかった。
視界が揺れ、心臓が強く脈を打った。
俺はもう知っている。
この景色は過去の記憶が形になっただけで、本物じゃない。
ここに留まってはいけない。
分かっているのに、足が動かない。
思えば思うほど焦りが湧いてくるのに体は重く動こうとしてくれない。
ふと机の上に、誰かの手が置かれているのに気づいた。
温かさが伝わってきた。
その手を見つめるうちに、視界が白く染まっていく。
rd「戻ってきて ッ ….. 、」
強く引かれるような感覚
俺はその手に縋るようにして、光に背を向け、何も見えない闇の中へと沈んでいく。
瞼の裏が微かに明るい。
光が透けて差し込んでくる。
まるで、重く固まっていた体が、少しずつ浮かび上がるようだった。
rd「ぺいんと、」
耳元で呼ぶ声。
あれは夢じゃない。確かに現実の音だ。
俺は力を振り絞って、瞼を開けた。
起きろ。起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ。
視界にぼんやりとした輪郭が浮かんでくる。
揺れる髪の影。濡れた瞳。
それはらっだぁだった。
rd「ぺいんと ッ !! よかったぁ …. 、」
声が震えている。この時俺は初めてらっだぁの涙を見た。
俺は返事をしようとするけれど、喉が乾きすぎて声が出なかった。
唇を少しだけ動かすと、彼はすぐに気づいたようで手を握ってくれた。
その手は熱を帯びていて、夢の中で触れたものよりもずっと強く確かだった。
rd「おかえり」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんと熱くなった
涙がにじむ
俺はかすかに微笑んでみせた。
時間の感覚は曖昧だった
目を閉じていた間、どれくらい経ったのか分からない
けれどらっだぁがここにいる。それだけで十分だった。
rd「すごく長く眠ってたんだよ」
らっだぁは低い声でぽつりとこぼす。
rd「呼んでも返事がなくて、ずっと……」
言葉が途切れる。らっだぁの瞳からは涙が止まることを知らずに溢れ出す。
俺は首を横に振るようにして、言いたかった。
置いていってごめん、と。
でも戻ってこれたから、もう大丈夫だって。
らっだぁはしばらく黙っていたけど、やがて小さく笑った
rd「本当に……よかった」
その笑顔が、ぼやけた視界の中で一番はっきりしていた。
俺はそのまま、もう一度まぶたを閉じた。
今度は眠りじゃない。ただ安らぎのために。
rdの手の温もりを握り返しながら。
夢と現実の境目は、今もまだ曖昧だ。
走馬灯の中で見た景色はすでに消えつつある。
でもそこにあった彼との記憶が、俺をここまで導いてくれた。
だからもう怖くない。
目を開ければらっだぁが…彼がいてくれる。
その確かさだけを胸に抱きしめながら、俺は深く息を吸った。
< rdside >
ぺいんとが再び眠りについたあとも、俺は手を離せなかった。
その手が温かいことを確かめるたびに、胸がいっぱいになる。
どんなに不安でも、この温もりだけは嘘じゃない。
rd「……おかえり」
もう一度、小さく呟いた。
それは誰に聞かせるわけでもない、俺だけの言葉だった。
結局、1度目の手術が行われて医者から説明を受けた後、この話を聞いた院長がすぐに俺のものへ走ってきてくれたのだ。
「お前の勉強してきたことを今ここで活かしなさい」と。
病気によってだめになってしまった部分を取り除くためのもの。
でも結局俺はその場で怖くなってしまい、手術は出来なかった。
院長もそんな俺を責めたりしないで、代わりに手術をしてくれた。
指示も全て俺がして。それはかなりの責任が伴う事だったがぺいんとの命には変えられない。
2時間半もの間手術を行い結果は無事に成功。
その後の俺はと言うとぺいんとが目覚めるまでずっと病室でぺいんとの寝顔を眺めていた。
寝顔と言っても春頃図書館でみた幸せに満ちた表情なんかとはかけ離れた冷たい笑顔だった。
ぺいんとが眠っている間は食事も摂らなかったしもちろん寝なかった。
数日が経過した頃に院長に無理矢理眠らされたけど。
ー ぺいんとが幸せそうな笑みを浮かべて眠る様子も見て俺も数日の疲れがどっと体に降りてきて俺もぺいんとの前で眠った。
本当にありがとう。
コメント
2件
おきたぁぁぁぁぁ!?😭😭😭😭
おっふ……_(┐「ε:)_奇跡起きたぁ………😭😭😭ガチで嬉しい…!!!え、今普通に泣いてる!!!やばい、結構感動してる!!!このまま回復してくれ、pnちゃん!!!頼むから!!!🙏🙏🙏