コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
1話の前の日の話
ろふまお塾での飲み会にて加賀美にある男が声をかける。
「しゃちょ~~!!」
陽気な声の主は同僚の不破湊。この男完全にしあがっている。赤い顔にあり得ないテンション酔っ払い以外の何物でもなかった。
『…不破さん。そろそろセーブしないと明日に響きますよ』
「んぇ~?しゃちょーのんでるぅ?にゃはは」
『にゃははじゃないんですよもう。家に帰れなくなりますよ?』
「んー?じゃあしゃちょうんちとまる~」
『ええ?自分の家にいきなさいよ笑』
「しゃちょーってダー○ィンが来たみてた?」
『ありえんほど話が変わるな』
なんて他愛のない会話を続けていればとっくに飲み会のお開きの時間になっていた。Dに不破さん家まで送っていってあげてもらえますか?なんて頼まれてしまった。送ることは何ら問題はないが足下のおぼつかない不破を支えながら歩くときに妙な色気を感じる香りが鼻をかすめ少し複雑な気持ちに陥る。
『不破さん?おうちどこですか?』
「……んぇ?にゃはは」
『仕上がってるな…』
こんな状態の酔っ払い外に捨てるわけにもいかないため仕方がなく自宅にいれた。
『不破さん?洋服脱げそうですか?』
「……ぬげん…しゃちょーぬがしてよ」
『……ええ?今日だけですよ?…』
そういった加賀美は不破のシャツのボタンに触れる。不破に恋愛感情を抱いている加賀美は不破の洋服のボタンをひとつひとつ外す作業に後ろめたさを感じていた。
(なんか…いけないことしてるみたいだな…)
「…にゃは、なんかぬがせてんのえっちやね」
『…ちょっと、なにいってるんですか不破さん…』
心の中を読まれたのかと思いながらも不破にまとうシャツを丁寧に脱がしていく。
スル…と服と肌が触れあいながら生まれる音にさえなにか特別な意味を感じてしまうのはきっと酒によって熱に浮かされたせいだろう。
「ね、しゃちょう」
不破特有の柔らかい声がきこえた。しかしそれまでの不破の声色とはどこか異なり違和感を覚えた。子供のような、何かにすがっているような、そんな声だった。思わず顔を上げる。
『不破さん…?』
「おれがしゃちょうのこと好きって言ったらしゃちょうどうする?」
『え……』
不破の加賀美を見つめる瞳はどこか幼げでねだるような欲を感じる色が混ざっていた。
「しゃちょうはやさしいからさぁこんな俺を家に入れてくれるし、いつものおれも笑って受け入れてくれるやん。だから」
そのしゃちょうのやさしさいいわけにして俺にほだされてくれって思うのってだめなんかなぁ
と消え入りそうな声で不破は言葉を紡ぐ。
『…不破さん。私はねあなたの一挙一動に心かき回されるくらいにはあなたのこと好いてます』
それに、と加賀美は付け足す。
『やさしさや同情なんかであなたとの関係を割り切れるくらいの単純な感情を抱いているつもりはありませんよ』
「………え?」
「ほんまに?」
『ほんまですよ笑』
「え、まじすか、え?うそ」
あんまり動揺するものだからおもわず笑みがこぼれる。
『あははかわいい』
意図せずこぼれた思いに不破は目を白黒させる。
「んへぇ…あーもーマジでかっこいいっすねしゃちょう。後悔してもしらんよ俺」
『ええ、上等ですよ後悔』
へぇ、と挑発するような声には確かな期待が感じ取れた。そしてあと、と不破が付け足す。
「おれめっちゃずるい男なんよね。しゃちょうに脱がしてもらったんのも目的あるし」
『…目的ですか?』
そう、と肯定し言葉を続ける。
「おれにほだされてくれたんならさぁおれのこと抱いてよ」
『……!』
「…ね、服脱がすの最後まで手伝ってや」
ああ、もう本当に、この目の前の男は
『…たしかにこのずるさは心臓に悪いなぁ』
そうして加賀美は不破のベルトに手をかけた。