テラーノベル
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森の奥へ進むにつれて、空気が変わっていくのを感じた。 暗さは変わらない。
けれど、ただの闇じゃない。
ここには、時間が積もっている。
足元に落ちた葉を踏むたび、
かすかな音が、胸の奥に響く。
ほたるの光は、前よりも少し強くなっていた。
イルカのキーホルダーが、ゆっくりと脈打つように光っている。
「……さっきより、明るいな」
そう言うと、ほたるは立ち止まり、俺を見上げた。
その目は、少しだけ真剣で、
どこか“確かめる”みたいな色をしている。
まるで、
「ちゃんと、ついて来てる?」
と聞いているみたいだった。
「大丈夫だよ」
俺はそう答えて、軽く笑う。
「ちゃんと、覚えてる」
何を、とは言わなかった。
でも、それで十分だった。
ほたるは小さくうなずき、また歩き出す。
しばらくして、森がふっと開けた。
そこには、円形の空間が広がっていた。
折れた木。
倒れた柱。
何かがあった“跡”だけが、静かに残っている。
「……ここ……」
言葉にした瞬間、
胸の奥が、強く揺れた。
聞こえた気がしたんだ。
誰かの声が。
――大丈夫。
――一緒に行こう。
はっきりした言葉じゃない。
でも、確かに“仲間の気配”だった。
俺は、無意識に一歩、前に出ていた。
すると、空間の中心に、淡い光が集まり始める。
ほたるの光とは違う。
少し、あたたかくて、
懐かしい色。
光は、ゆっくりと形を持ち――
ステージの断片を映し出した。
あの日の、もう一つの場面。
準備の合間。
声を掛け合う時間。
本番前の、ほんの一瞬の静けさ。
派手じゃない。
でも、確かに大切だった瞬間。
「……そうだ」
思わず、息を吐く。
「こういう時間が、あったんだ」
成功とか、結果とかじゃなくて、
“一緒に立っていた”という事実。
それが、どれだけ心強かったか。
映像が消えると、空間は元の静けさに戻った。
俺は、しばらく動けなかった。
胸の奥が、じんわりと満たされている。
ほたるは、そっと俺のそばに立つ。
何も言わない。
でも、その光が、少しだけ近かった。
「……ありがとう」
誰に向けた言葉かは、分からない。
ほたるかもしれない。
仲間たちかもしれない。
あの時間そのものかもしれない。
イルカのキーホルダーが、静かに鳴いた。
短く、澄んだ音。
それは、
「次へ行こう」という合図みたいだった。
コメント
1件
読んだよ!第4話「重なりあう光の先で」。 森の描写がすごく綺麗で、暗さの中に時間が積もってる感じとか、ほたるの光が心臓みたいに脈打つ感じとか、空気が違うって表現、めちゃくちゃ刺さった。 特に「成功とか結果じゃなくて、“一緒に立っていた”という事実」ってところが沁みるわ……。派手じゃないけど確かに大切だった瞬間を思い出させる展開、好きだ。 イルカのキーホルダーが「次へ行こう」って合図するラスト、続きが気になりすぎる。優しいのに確かに進んでいく感じ、良いエピソードだった🔥
#ご本人様には関係ありません
*fuyu*☃️❄️
146
*fuyu*☃️❄️
854
なちょすん✌️
164
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