コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ともかく、私はなにも罠なんて張ってません。
達人のおばあさんを調達してきたりとか。
そんなすごいことできるのなら、こんなところでしょぼい店なんてやってません」
とあかりは主張する。
「ちょっとあなた、自分でしょぼいなんて言ってどうするのっ」
とあかりは、いきなり寿々花に怒られた。
「この店、そう悪くないわよ。
ちょっと人目につきにくい感じの店なだけでしょ。
この私が友人への手土産を買いに来るくらいだから、あなたのセンスは間違ってないわ。
私は、どんな知り合いの店だろうと、気に入らないと買わないから」
と突然の叱咤激励をされる。
……なんかあの、ありがとうございます、と思った。
確かに、寿々花のことだ。
気に入らない店なら、どんなに忖度の必要な相手の店でも、
「なにこれ、私が来る価値ないわね」
とか言い出して、周りを慌てさせそうだ。
そのとき、寿々花のスマホが鳴った。
これから訪ねていく、この間のご友人が、用事はもう終わったから、早めにいらっしゃったら? とかけてきたらしいのだ。
「ありがとう。
今、あかりさんのお店にいるの」
すると、彼女は、あら、と声を一オクターブ高くして言った。
「この間の上品なお嬢さん。
お話も合いそうだし。
今日、ご一緒にいらしたら?
みんなで堀様のお話でもしましょうよ」
そのとき、
「あかりー、暑いからなにか飲ませてー」
と母、真希絵がハンカチで顔を扇ぎながらやってきた。
寿々花の姿を見て、あからさまに後退していこうとする。
「真希絵さん、今、お暇?」
といきなり言われ、真希絵は、え? は? ええ、と寿々花の迫力に押されて、頷いている。
「あなた、このお店の店番、なさらない?
私のお友だちが、あかりさんとお話ししたいと言っているの」
「い、いえ、日向が待ってますので」
と買い物に出てきただけらしい真希絵は言うと思っていた。
だが、
「わかりましたっ」
と真希絵は何故か目を輝かせて言う。
「あかりにもたまには息抜きが必要ですものね。
お任せくださいっ」
お任せください、オーナー! な勢いだったが。
お母さん、オーナーは私です……とあかりは思う。
「あかりをよろしくお願いいたします」
と言った真希絵は上機嫌でカウンターの中に入ってくる。
たまたま現れたお客に、いらっしゃいませ~と楽しそうに言っていた。
……そういえば、子どものころから、お店屋さんごっこだけはよく付き合ってくれてたな。
やりたかったんだな、きっと……。
「ああ、あかり。
手土産に、浜野屋のお菓子買っていきなさい。
お母さん、連絡しとくから」
と真希絵は言う。
はーい、とあかりは胸につけていた店長のネームプレートを外す。
いやまあ、オーナー兼店長しかいないんだが、この店……と思いながら。