由梨と会えるようになり、数ヶ月経った。幽霊だということを忘れて、ついつい触れそうになってしまうこともあったが、それ以外は人間の様に話して遊ぶことができた。けれど、ずっと引っかかっていることがあった。
「ねぇ、由梨。」
「ん?どうした?」
「由梨ってさ、なんで私が海に入ると出てきてくれるの?」
「…なんとなくかな」
「………そっか」
顔こそは見えなかったものの、言いたくなさそうな雰囲気を感じた。正直なところ、海に入るのは寒い。入った後も風でとても冷える。一応浜辺に羽織やタオルなどを用意してはいたが、それでも寒い。万が一でも風邪を引いてしまうと、由梨にしばらく会えなくなってしまうので、それだけは避けるべく、会う時間が段々と短くなっていた。
これ以上追求するかしないか。しないままならまだ友達でいられる。けれど、わだかまりがずっとあるまま友達で居続けるのは辛かった。
「由梨。なんとなくじゃなくて、本当の理由を教えて」
「マジでどうしたの?急に真面目になっちゃって…」
「………」
「あー…そんな目で見ないでよ。言うから」
「本当?」
「うん。生きてたときから由紀のその目に弱かったんだよね〜…。」
「はぐらかさないで。」
「はいはい。何から話せばいい?」
「会ってくれる理由。」
「実はね。私が死ぬ前に強く思ってたのが、“由紀には長生きして欲しい”ってことだったの。」
「…え?」
「私に始めて会った時に、由紀海で死のうとしてたでしょ?」
「う、うん。」
「あの時は由紀を死なせたくない!!って思いが通じたのか、ちょっとだけ体が実体化したんだ。だからああやって由紀と話せたりした。」
「そうなんだ。」
「でも、その後も由紀何回も来たじゃん?」
「だから、私が死んだ海限定だけど、一定時間なら実体化ができるようになった。最近はそんな感じかな。」
「し、知らなかった…」
「知られてても困るよ 笑」
「あれ?由梨さっきよりもちょっと薄くない?」
「あっ…ダメだったか。」
「もしかして話しちゃいけなかったとか?」
「そうっぽい。」
「ごめん、言わせちゃって。」
「全然!どう?スッキリした?逆に黙っててごめんね。」
「ありがとう。分かってよかった。あと…」
「あと?」
「生きてた時の質問とかってしてもいいのかな」
「………それは、消されちゃうかな」
「わかった。」
「ちなみにどんなこと聞きたかったの?」
「……………由梨が…んだ、…う」
「え?ごめん聞こえな、」
「由梨が死んだ理由。」
「あ」
「ご、ごめん。こんなこと……って、由梨?」
「あぁ…ぁ゙っ、」
「由梨?大丈夫!?」
「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!!!!」
「ッ」
眩い光で包まれたかと思うと、次の瞬間、由梨は消えていた。