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続きです。今回は緩い感じですので気長に見て頂けたら嬉しいです🙇♀️
ではどうぞ。
第15話【波乱の前兆】
窓から滑り込むように部屋に戻れば何鋒煜は卓に座り、お茶の用意をしていた。
こちらが戻ってきたのに気付いた何鋒煜は周りに花が飛びそうな程に華やかで優しい笑みを浮かべ、手招きをする。
「今日は冷えますから、お茶をどうぞ飲んでください」
「あ、ありがとうございます」
烨霖は顔の熱を覚ますように手で仰ぎながら向かいの椅子へと座る。
「、、、?なにやら顔が赤いようですが、、、」
「なんでもありません!!ほんと!!少し運動しただけですので!!」
「そうですか、、、」
烨霖は置かれた茶を勢いよく飲み干し、深呼吸をして心を落ち着かせてようやく平常を取り戻す。
「あの、、、阿洋の面倒を見てくれてありがとうございます」
「え?」
「あの術、貴方がしてくれたんじゃ?」
「あ、えっと、、、私、ですが、そんな大層な事でも」
何鋒煜は少し顔を俯かせ、寂しげな瞳で寝台で眠っている龍洋を見据える。
「私も術を施したことがありますが効きませんでした」
「やはり熟練した人の方が効くんですね」
まるで自分が無力な子だと言っているような言い方と哀愁漂う雰囲気に烨霖の胸に刺すような痛みが走る。
「君は立派だよ」
気付けば口をついて出ていたその言葉に烨霖は目を見開く。そして何鋒煜もまた、目を丸くしてこちらを見ていた。
「え、えっと、その!!君は彼の世話をこうして務めているし自分に出来る最大限を見つけようとしている。」
「ははっ、むしろ私よりも立派だよ」
何鋒煜はその言葉にどう答えるのが正しいのか、何を言えば良いのか暫しの間戸惑い、最終的に誤魔化すようにはにかむような笑みを浮かべる。
「お褒め頂いて嬉しいです、、、なんだか、貴方とお話していると少し思い出してしまいます。」
「、、、誰を?」
「陳烨霖の事です。」
烨霖は内心その言葉に勢いよく心臓を跳ねさせたが、顔には一切出さずに平然を装い、軽い笑みを浮かべる。
「あの陳烨霖がですか?まさかそんな、」
「彼は私たちを拾ってくれた頃はとても良くしてくれたんです。」
「私と阿洋も陳烨霖に褒められたくて稽古を朝から晩まで頑張るほどに、、、優しい方でした」
何鋒煜の声は何処までも静かで、この寒さに似合う程に冷たく悲しげだった。
何鋒煜は無意識に己の背中にある思い出したくない程に過去の傷を摩る。
「、、、全部、偽物だったのですが、、、それでも、彼の優しさは支えでした。」
知り合ったばかりの人間にもこうして胸内を話してしまう程に何鋒煜の心は疲弊しているのだろう。烨霖はどうにか出来ないかと考え、口を開く。
「、、、私の優しさは本物です。なので、どうか頼ってください」
そう言えば何鋒煜は一瞬目を見開き、その瞳には光が差す。そして次に和かに笑い、皺の刻まれた眉間は滑らかになる。
「ふふっ、では、頼りたい時は、また連絡をよこします」
「はい、もちろん」
少し影のかかった雰囲気から和やかな雰囲気へと変わり、烨霖は軽く息を吐く。すると、目の前の何鋒煜が何か思い出したかのように一声上げ、興味津々な様子で口を開く。
「そうだ、下で聞いた噂はどうでした?何か役立ちましたか?」
「、、、まぁ、、はい、、、」
烨霖は先程食堂で教えて貰ったことを事細かく語る。すると何鋒煜の顔色は徐々に曇り始め、眉間への皺も増えていく。そして暫し考え込むように顎に手を添えた何鋒煜は重々しげに口を開く。
「腐餐草、、、確かそれは魔教の住処にしか生えない筈、、、商人の聞き間違いでは?」
「だが、門派の人間出なければその名を知っている筈もない、その草の効果もハッキリと聞いていた。」
だが、今烨霖が最も気掛かりなのはそこではなかった。
「、、霖唱派は、本当に、、死人が多いのか?何かしらの邪術の手に染まった様子が?」
「霖唱派は、、、まぁ、その噂はあながち間違いではありませんね、、」
何鋒煜は神妙な表情で話し始める。
「印象が悪くなっているのは確かなんだ。」
「それは、新しい門主に変わったのが原因か?」
「はい、それに加え、今の門主は随分と周りを警戒視しています。表にも一切顔を出ませんし友好関係を築いていた他の門派との交流も経ち、完全に独立しています」
「なんだと、、?それはあまりにも危険だ!」
今の門派間の状況は随分と悪く、魔教の進軍によって土地が減っており、そのせいで門派の間での争いも耐えない。それに加えて魔教勢力の脅威もあるというのにそんな中で後ろ盾もつくらずに完全に無防備な状態で居れば他の門派から集中攻撃を受けるのは想像するまでもなく明白だ。やるにはあまりにも危険性が高過ぎる。
では、何故そんな危険な事をしてまで独立を成す理由は?
他の人には見られたくない何かがあると考えるのが自然だ。
「それは皆も思っている事です。でも、誰も霖唱派に手を出さないんです。」
「それは、、、人体実験、邪術があると言われているからか?」
「恐らくそうです。霖唱派が何かを隠すために独立を果たしたのなら、、、邪術を使っている可能性が一気に高くなりますからね」
「それに独立したのは話を聞く限りですと腐餐草の噂が広がった後です。あまりにも怪しい。いや、むしろこんな疑われる行為をすること自体も、怪しいんです」
何鋒煜は1拍置き、重苦しい声を吐き出す。
「もし、霖唱派を調べるのならば気を付けてくださいね。」
何鋒煜は烨霖が霖唱派の事を聞いてきた時から彼が霖唱派に不必要に関わり、それによって壊れてしまうのを恐れていた。彼は本当に陳烨霖とよく似ていた。だが、死んだ者は戻りはしないという事をよく分かっていた何鋒煜は惨めだと分かっていながらも彼と烨霖を重ね始めており、これからもっと関われば心に酷い傷を負った龍洋の少しの拠り所になると先程、彼からの慰めを受けた時に直感で、本能でそう感じたのだ。だが、霖唱派に関わり、もし壊れてしまえば?また失望してしまうかもしれない。せっかく、信頼出来そうな人を見つけたというのに。
自然と何鋒煜の手に力が入り、膝の上で強く拳を握りしめる。
だがそんな事露知らずな烨霖は呑気に微笑みながら答える。
「、、、そちらも、気を付けて。」
その後、烨霖は何鋒煜に話を聞いてくれたお礼として仙人の法術すらも跳ね返す程の強力な護符を半ば強引に手渡す。そして何鋒煜が予め取っておいてくれた隣の部屋へと戻る。 阿和と会話をするのが少々気まづかった烨霖は飛びつくように早々に寝台へと潜り込み、瞼を閉じて眠りへと落ちていった。
◇
朝起きれば阿和は既に起きており、烨霖の寝台の横に座ってこちらをじっと見詰めていた。
起きた途端にかち合う視線に驚いた烨霖は反射的に阿和の頭を布団に押し込む。
「なんっ、びっっくりするだろ!!」
「すまない、起きるまで暇だったのだ」
烨霖は阿和の頭から手を離し、ボサボサになった髪を丁寧に撫で梳かす。
「暇だからといって、、はぁ、、、」
「、、、そなたは長く眠っていた。だから、その間にあやつらに門派の事を聞いておいた。」
「、、、え?そうなのか?」
烨霖は目を丸くして阿和を見つめる。
「嗚呼」
「今の門派で最も権力があるのは霖唱派であり、表面では分からないが他の門派を支配下に置いているようだ。 」
「、、、厄介だな」
顎に手を置いて顔を顰める烨霖をじっと見上げ、寝台の上に腰を降ろす。
「霖唱派へ行くつもりなのか?」
「いいや、その前に、もう一度結界へと戻る。まだあの文字が刻まれた石を見ていないからな」
阿和は少し厳しい表情を浮かべたが、何も言わずに烨霖を寝台から下ろそうと手を伸ばし、抱えようとする。
その様子に烨霖は慌てて自分から寝台を降り、素早く身支度をし、部屋を出て食堂の方へと降りてゆく。食堂の方では龍洋と何鋒煜が椅子に座り、待っていた。
「皆さんお早いですね、あはは、、、」
「お前は遅かったな!ははっ!」
昨日の様子から想像出来ないほど元気な姿に烨霖は心の中で安堵する。
「龍洋殿は昨日すぐに酔い潰れてしまいましたもんね、沢山寝て満足したのでは?」
「ははっ、確かにそうだな、、、あ、そういえば、僕に悪夢を見ないように術をかけてくれたんだな」
「情けない所を見せたな、、」
龍洋は恥ずかしそうに頭を掻きながらはにかみ笑いを浮かべる。その子供っぽい姿が妙に愛らしく、思わずくすっと口元が緩む。
「誰にだって情けない所はありますよ、人によっては手で数えられないくらいに」
「それもそうだな!!」
龍洋は大きな声で爽快に笑い声を上げ、烨霖に向かって供手する。
「術を掛けてくれた事、感謝する」
「こちらこそ、貴方のお陰で色々と知る事が出来ました。」
龍洋と話しているとふと、腕の袖を引っ張られる感覚がし、そちらを振り向く。すると阿和と視線がかち合い、何処か拗ねたように眉間を寄せながら早く先へ行こうと訴えられる。
「では、私達はそろそろ行きます。ご飯に誘ってくださり、ありがとうございました」
「そうか、じゃあ次会ったら、また飯を食おう!! 」
「もし何かあれば、私達にも言ってくださいね。」
2人に見送られ、食堂を出てすぐ、阿和は珍しく伝送符を取りだし、烨霖を引き寄せる。
「え、阿和、これは」
「こっちの方が効率がいいだろう」
伝送符が発動し、その場に大風が巻き起こる。その瞬間、今までずっと阿和という男性を少し怪しく感じて注意深く見ていた何鋒煜は風に吹き、双方の服が乱れた瞬間、とあるものを目にし、息が止まる。
我に返った時には既に2人は伝送符によってその場から姿を消しており、何鋒煜は顔から血の気が引いたような感覚に陥った。顔全体から冷や汗が流れ、切羽詰まったような顔で龍洋の方を振り向き、声を張り上げる。
「阿洋!!今すぐ門派に連絡してくれっ!!!」
「ど、どうしたんだ、、、?」
何鋒煜の唯ならぬ様子に龍洋は慌てる。
「あれはっ、あいつは、、っ!!魔教教主」
「方泰和だよ!!」
その名を聞いた瞬間、地が割れ、龍洋の顔には青筋が浮き上がる。
そして重苦しく、低い声を喉奥から絞り出して何鋒煜を凝視する。その瞳の奥にはどす黒い闇と怒りがとぐろを巻いていた。
「お前、、、それ本当に言っているのか?お前の見間違いじゃないのか!?!?」
「見間違いじゃない!!見間違えるわけがない!!」
「胸元から見えたあの銀の仮面、、、あれは間違いなく方泰和の物だ!!!」
銀の仮面などはこの世に山という程ある。だが何鋒煜は方泰和と初めて会った時からその底知れぬ雰囲気に警戒して怪しみ、日頃から注意深く見ていた。そんな何鋒煜がここまで言うのならば本当の事なのだろう。
本当にあれが方泰和ならば、あの隣の奴は、、、?いや、そんなの決まっている。彼奴しか居ない!!!
方泰和は常日頃からたった一人だけをずっと追い求めていた。その者の言うことしか聞かず、その者が大罪を起こし、死亡した時はその怒りからその場全体を巻き込み、殺戮を行った。それ程までに方泰和が心酔していたのは___
「陳烨霖、、、っ!!よくもあんなぬけぬけと、、、っ!!」
「彼奴の面の皮はどれだけ厚いんだ!?」
龍洋は怒りに任せて思い切り食堂の玄関の柱に拳を打ち付ける。拳から段々と亀裂が広がり、瞬く間に食堂の玄関が崩壊する。だがそんな事を気にしている余裕など今の龍洋達には持ち合わせていなかった。
まだ信じきれていなかった何鋒煜は龍洋の拳を掴み、険しい顔をして鋭い瞳で龍洋を射抜く。
「待ってくれ!!まだ決まった訳ではないだろう!彼は私達に良くしてくれていたじゃないか!!」
「また、、、あいつが俺に嘘をついた、それだけだ」
こうなった龍洋はもう話を一切聞かなくなる。諦めた何鋒煜は何とか別の対策を巡らせる。
「、、、門派に広めるには、まだ証拠がない、それは君も分かってるはずだ」
「、、、なら、まずあの仏像師叔に言おう」
「だってこの門派界で最も陳烨霖を見分けられるのは、、、」
かつて、陳烨霖と好敵同士であり、それと共に竹馬の友でもあった。そして、最終的に陳烨霖の命を奪った者___
命月派の門主である俊力にほかならないだろう、、、
第15話【完】
ここまで見て下さりありがとうございました。これからやっと大きめに話が広がりますのでどうかこれからも宜しくお願いします🙇♀️
ではまた次回。
コメント
1件
まだ緩やかな空気のまま話が進むのかなと思ってたら、最後のあの一瞬で全部ひっくり返された感じが凄かったです……。何鋒煜が烨霖にかけた「気を付けて」が、実は自分たちにも向いてたんだなと気付かされる終わり方でした。阿和=方泰和って、確かに伏線はあったけどここで来るか!って驚きました。銀の仮面、胸元一瞬で見抜くの渋すぎる。龍洋さんの怒りも重いし、次から本当に大きくなりそうで続きが気になります!
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