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⚠️注意事項⚠️
●戦争や犯罪、特定の政治や思想、人種差別を支持・助長するものではありません。
●ナチ日帝 (ほんのりソ連日帝)のBLです。
今日は国際会議があり、各国が集まって談義するなどしていた。
とは言っても旧国と呼ばれる我々がこれといった権限を持つわけではなく、進言をしてやる程度ではあるが。
「移民か。」
「うん、今後の受け入れ規制について考えてるんだけど──」
「そもそも何故 受け入れる必要がある。」
「……」
「異民族の血が混じってはゲルマン民族の──」
「もういい。こんなレイシストに聞いた俺が馬鹿だった。」
「…」
ドイツはいつも私を煙たがっている。
先程のように意見を求めてくることもあるのだが、私が何か言えばいつも冷めた視線を送ってくる。いつものオチ、と言うやつだ。
悲しいかな、血を分けた息子に否定されるとは。
……ああ、やはり私の味方は一人しかいない!
日帝の方に視線をやると、彼は日本君の隣で静かに座っていた。
彼を見守る日帝は父親の目をしていて、私のよく知る愛らしい仔猫の姿ではない。
……決して私に見せることのないであろう表情。
どうやら私は、彼の息子にさえも嫉妬心を燃やしてしまったようだ。
「?」
「っ……」
あまりに凝視してしまったせいか、日帝がこちらの方を不思議そうに見つめてくる。
どうやら気づかれてしまったらしい。
妙な焦りと恥ずかしさを覚え、思わず目をそらそうとする。
しかし、それよりも先に日帝は私に優しく微笑んだ。
「……ぁ、」
それはほんの一瞬だった。
だが私には分かる。
彼は間違いなく私へ向けて───
「全く……本当に可愛い奴だな。」
「父さん?」
ぼうっとしていると、ドイツが怪訝そうにこちらを見ているのに気づく。
私は慌てて上げた口角を戻し、軽く咳払いをした。
「何でもない。」
退屈な会議も終わり、ようやく散開となった。
途端 会議室はパーティー会場と化し、各々帰るなり他国と話すなり、好き勝手に過ごしている。
そんな中、私は先程の柔らかな笑みを思い浮かべながら日帝を待っていた。
「……日帝…」
いつもああして笑っていればと思う反面、これで良いのだと納得したりもする。
輝く鉱石や真珠も、ありふれてしまえばその価値は希釈されていくもの。
美しいものは稀少性を以てより一層渇望され──その優美さに相応しい価値が生まれる。
彼のあの表情も、そういうものなのだ。
無論、彼に値段を付けるというわけではない。
これはあくまで例え話。
我々の関係は決して金に代えられるものではないし、彼の値踏みなどは私が許さない。
「どうしたんだよ、ニマニマと笑って。相変わらず気味の悪い奴だな。」
「……ああ、ソ連か。」
あれこれと考えに耽っていると、影で視界が暗くなっていることに気づく。
ふと顔を上げれば、かつての宿敵が目の前にいた。
「いや何。非常に重要な問題について考慮していただけだ。」
「お前の言う”重要な問題”なんてどうせアレしかないだろ。」
「アレという言い方は気に食わんが、貴様の頭に浮かぶものは正しいな。」
「……そういえば、今日は誰の隣に居た?」
ソ連は娘息子が多いからか、会議では決まった国の隣にいることがない。
とは言っても友好的なのはロシアかベラルーシあたりだろう。
バルト三国の対応と言ったら、それはもう見ていられないものだ (あまり人のことは言えないが)。
「ロシアの隣に居ただろ。見てなかったのかよ。」
「すまない、私の興味の対象はただ一人だからね。」
「ハッ、惚気か。」
「貴様がそう思うのならそうなんじゃないか?」
「うぜぇなお前……」
ソ連はため息混じりにこちらを見つめてくる。
何も言わないのをいいことに、私は恋人の話をしてやることにした。
コイツに日帝のことを話すのは些か勿体ない気もする。
……だが、牽制も兼ねて私達の関係を見せつけておくのも悪くはない。
他の劣等種どもに取られるのは癪だし、私自身のためにも外堀は埋めておくべきだろう。
そう思っていた矢先。
背後から私の好きな低い声が聞こえてきた。
「先輩、お待たせしてしまいすみません……」
振り返れば、彼は僅かに背中を丸めて申し訳なさそうに立っていた。
会議の時にあったはずの帽子は外れており、可愛らしい獣耳がしゅんと垂れ下がっている。
個人的には、その姿は敵国に見せたくないのが本音だ。
「……って、ソヴィエトもいたのか。珍しい組み合わせだな。」
「よぉ。帽子はどうしたんだ?」
「ああ…さっきパラオに会ってな。俺の帽子を被りたいって言うから。」
パラオ……かつて兄の植民地だった国か。
随分と日帝に懐いていた記憶があるが、今も関係は良好らしい。
「猫耳……ロシアが見たら喜びそうだな。」
「何故だ? 俺とお前は敵だっただろう?」
「アイツ、めちゃくちゃ猫好きなんだよ。」
「そうなのか?意外だな…」
「まあ俺も嫌いじゃないが。」
……あ?
「ほら、猫はネズミを食ってくれるだろ?」
「な……っ…!貴様、俺が齧歯類を食うと思っているのか!?」
「まさか、冗談に決まってるよ。」
「……は、」
喉から掠れた声が出た。
この男、正気ではない。恋人の前で堂々と口説く奴が何処にいる?だいたい日帝も日帝だ。私を他所に他の民族と……ましてやよりもよって我が宿敵と談笑など、承認できるものではない。
どうやら私の駄犬は、自分が一体誰のものか理解できていないようだ。
帰ったらきつく躾けてやる必要があるみたいだな。
「……日帝。」
「はい、先輩───え?」
「えっと…大丈夫ですか? 顔色が優れないですけど、何か……」
「ああ、とても不愉快なことがあってね。」
声を低くして言えば、日帝は僅かに肩を揺らして耳をぺたんと下げる。
いつもなら喉元を撫でてやるところだが、これ以上 恋人の愛らしい姿を人前で見せる訳にはいかない。
「そうですか……ではそろそろお暇しますか?」
「そのつもりだ。さて、もう行こうか。」
「ぇ、ちょっと……! 」
ソ連に見せつけるように日帝の腰に手を回し、颯爽と踵を返す。
「す、すまんソヴィエト…!」
「ああ……」
日帝の律儀な一面は私も評価するところだが、今回ばかりは憎らしい。
背後を振り返ると、あの大男のぎょっとしたような……それでいて何かを言い淀む口惜しげな顔が見えて少し清々とする。
嗚呼……渡してやるものか。離してやるものか。
優れた血と高尚な魂の紐帯。我々は互いに選び、選ばれた存在なのだ!
「……ふ、」
そして──
この可愛い二等種には、その意味をもう一度教えてやらねばなるまい。
コメント
12件
ちょっと待ってください… めっちゃ好きです……
最高過ぎる...ッッ!! 主さんもっと周りから評価されるベきです.(
この作品を無料で読める時代に感謝するに限ります…、🥲💕 もうホント天才すぎて…泣く…あの…■んじゃう…、ありがとうございます…( ? )