テラーノベル
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その場に腰を下ろし、持ってきた軽食を取っているニティアとルシオ。そしてフィニスの3人。フィニスの膝の上には丸くなって座っているリヴァレーがいた。
『10年くらい前から、魔族がこの遺跡の奥に住みつきだしちまったんだ。それから湖の水が汚れ始めてな』
フィニスに頭を撫でられながらリヴァレーが続ける。
『最初のうちはボクも穢れを直そうと頑張ったんだけどな……綺麗にした途端、綺麗にした水と一緒に魔力も一吸い込まれて、また穢されちまうんだよ』
「魔族か……」
頭を撫でながらフィニスが呟く。
『だからそこの気持ち悪い女と男。その魔族を倒してきてくれ』
その言葉にピクリと肩を振るわせるニティア。
「だ〜か〜ら〜……気持ち悪くないって言ってるでしょ!!」
「まぁまぁ、精霊は魔力の波長の合う合わないにすごい敏感らしいから……気にするなって」
宥めるルシオ。
『それと、お前はフィニスって言ったか?』
「そうだけど」
『お前は気に入ったから、ボクの力を……』
「ん?」
『お前……なるほど。だから居心地がいいんだ。そうか……お前のこと気に入ったから力を貸してやろうと思ったのに。残念ながら力貸してあげられなさそうだな』
「精霊は気に入った人間に力を貸してくれるんでしょ?なんで貸してくれないのよ」
「……」
ニティアの言葉を無視するリヴァレー。ニティアの肩がカタカタ震えている。
その様子を見ていたルシオが平身低頭に尋ねる。
「リヴァレー様。私たちはあなた方高貴な精霊様と異なり、知識も乏しい愚者でございます。リヴァレー様が気に入ったフィニスへ……なぜお力をお貸しくださらないのか……この愚者へもお教え頂けませんでしょうか?」
『仕方がないな。別にボクが意地悪をしているわけではないんだ。僕たちは、魔力の波長が合う人間に力を貸す。魔力のは波長を重ねる事で、人間の力を増幅させるんだ』
「あぁ……なるほど、そう言う事なのか……」
1人頷くルシオ。
『でもフィニスにはその増幅するための波長。魔力そのものが無い。だから、力を貸したくても貸せないんだよ』
「あーなるほど!」
「そう言う事なのね」
ニティアとフィニスも理解した。
「別に俺はそんなの気にして無いぞ!そもそもお前が襲われてるのかと思って助けに来ただけだったし」
そう言ってリヴァレーを撫でるフィニス。ニティアの手もソワソワしている。
「とりあえず、水を穢している魔族を倒せばいいんだな」
ゆっくりと立ち上がるフィニス。
「とりあえずって……そんな簡単に言うけどさ……」
杖をつきながら立ち上がるニティア。
「でもお前ら2人はすでに一体ずつ倒してるんだろ?」
盾を片手に立ち上がるルシオ。
「まぁ、どのみち俺は奥にある歯ブラシに用があるからな!ついでに倒してこようぜ!」
『頼んだぞー。あ、でもボクは力を貸せない以上、ボクひとりではあまり力を具現化できないから。危なくないところで降ろしてくれよな』
「はいはい、なんとかするわよ」
さりげなく頭を撫でようとするニティアに、リヴァレーはシャーと唸り声をあげていた。
⸻
『この扉の奥。少し開けたところにそいつがいるんだ』
3人がしばらく歩いたその先に見えてきたのは、少し廃れではいるが、豪華な装飾の施された大きな扉。
扉の少し手前で、先頭を歩くルシオは立ち止まる。
「その魔族はどんなやつなんだ?戦い方とか」
リヴァレーはフィニスの腕の中から答える。
『ボクもよく分からないんだよね』
「わからない?」
首を傾げ、リヴァレーに視線を落とすフィニス。
『ここに迷い込んだ魔物や人間。そして、部屋の中を流れている、ボクが浄化した水から魔力を奪っていることはわかるんだけど、分かることはそれくらいなんだ』
『ボクだって痛いのは嫌だからな。その魔族を直接見たのだって、最初のうちの数回だけなんだよ』
「なるほど、そういうことね……そうなると、ここで話し合ってても意味がないわね」
『でも、確か……魔族にしては珍しく大きな剣を持っていたぞ』
「剣……接近戦に特化した魔族か?」
「そうなるとニティアは少し離れてろよ。もしくはルシオの後方にいるように」
3人がゆっくりと扉を開ける。
ギギギ……
開けた空間。道中と同様に、部屋全体がうっすら青白く光っており、端には水が流れていた。
そしてその部屋の最奥には腰を下ろして座っている一体の黒い影。胸元には微かに白く濁ってはいるものの、赤黒いコアが鈍く輝いている。
『久しぶりの来客かのぉ……』
そう言い、大きな剣を杖のように地面に突き立てて腰を上げる。
威圧もしていなければ、殺気も出していない。ただそこに存在しているだけの魔族。
しかし、今まで感じたことのない恐怖感が3人を包み込んでいた。
『こいつだ……』
『ん?あぁ、ここにおったネズミか。もう水の浄化は良いのか?』
「……お前……なんでこんな所に住み着いてんだ?」
リヴァレーを降ろし、剣を抜くフィニス。
『ふぉっふぉっふぉ……隠居じゃよ隠居』
「ノクスが死んで魔力の供給が切れたからか……」
『……お主、知っておるのか……』
冷や汗を垂らしながら、苦笑いをするフィニス。
「やっぱりそうだったのか。先生の言っていたことは間違いじゃなかったみてぇだな……」
『ふぉっふぉっふぉ……カマをかけたのか……こりゃいっぱい食わされたわい』
ルシオがフィニスの前に出る。
「フィニス……こいつ……やべぇぞ……」
「あぁ……ニティアは下がってろ」
「私だってやれるわよ!」
『ここの地盤はそんなに硬くないからな。でかい魔法使ったら崩れるぞ』
「なっ!それを早く言いなさいよ!」
魔族がゆっくりと剣を持ち上げ……
『だいぶ魔力が回復したとはいえ……ワシはあまり派手な魔法が使えなくてのぉ……これしかまともに使えんのじゃ』
刃を指でなぞる。
『とはいえ、老いぼれの身……お手柔らかに頼むぞ』
「来るぞ!」
盾を構えるルシオ。
魔族とゆらりと剣を構えた次の瞬間……
ガキーン!!
「っつ!!」
ルシオが後方に吹き飛ばされる。
『ふぉっふぉ……盾ごとは切れなかったか……』
「なっ!?」
「え!?」
盾を少し下げ、顔を出すルシオ。
「イッテェ……」
不敵に笑う魔族。
『少しは楽しめそうじゃの……』
魔族の持つ黒い大きな剣が、鈍く輝いていた。
コメント
1件
読了しました!今回もグッとくる回でしたね〜。 まずリヴァレーがフィニスに力を貸せない理由が「魔力そのものがないから」っていうオチ、すごく納得でした。確かにそういう設定なら腑に落ちる。でもフィニス本人が「別に気にしてない」って撫で続けるシーン、めちゃくちゃ好きです。そういうところだぞフィニス……! そして何より、老いぼれ魔族の登場。「隠居じゃよ隠居」って、飄々としてるのに一太刀でルシオ吹き飛ばす強さ。このギャップ、痺れました。盾ごとじゃ切れなかったけど衝撃で吹き飛ぶって、どれだけの膂力なんだ……。続きが気になりすぎます!
308
甘泉めあʚめめあ・めあちɞ
175
羽海汐遠
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こと-koto
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