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1. 無の中で、再び**
白い空間。
何もない、ただ、静かな世界。
時間も、音も、痛みも、希望さえも存在しない。
ただ、記憶の残滓だけが漂っていた。
そんな中で、ポオは立っていた。
身体があるわけではない。けれど、“彼である”ことだけは、なぜか自覚できていた。
「ここは……」
呟く声すら、自分の中に消えていく。
——そして、目の前に。
乱歩が、そこにいた。
けれど、それは彼の姿というより、\*\*彼の“存在感”\*\*だった。
声もなければ、形もない。それでも、分かる。
*「君だね」
ポオの中に、確かに何かがあった。
「俺は……君を失ったと思ってた。
でも違ったんだな。君は、ずっとここにいたんだ。」
感情はもう、彼の中に残っていなかった。
けれど、**感情の記憶だけが、あたたかく彼の胸を満たしていた。
ふたりだけの再生
空間がわずかに震え、彼らの“形”が生まれ始める。
肌の温度、まばたき、手のひらの感触。
それらが、意味を持たずにただ存在する。
ポオと乱歩は、また向き合っていた。
記憶も、名前も、苦しみも、もう必要ではなかった。
「……また君に、会えてよかった。」
その言葉に、乱歩は小さく笑う。
「ポオ君。今度こそ、もう何も怖くないね。」
「うん。もう誰も傷つかなくていい。」
二人の声は、互いの意識の中にじんわりと溶けていった。
それは、\*\*言葉よりも深く、存在そのものに刻まれる“誓い”\*\*だった。
約束**
「次に、もし、世界が生まれるなら。
今度は、もっと早く出会おう。」
「そうだね。きっと、今度は――」
乱歩は、目を閉じて微笑む。
「君が僕を見捨てないで済むように。僕も、君を疑わないで済むように。」
ポオは頷く。
その約束だけが、この世界の唯一の真実だった。
「どこにいても、たとえ名前が違っても。
君を見つけるよ。」
「それは、君が探してくれる限り、
僕はそこにいるってことだ。」
その瞬間、白の世界に小さな花が咲いた。
記憶でもない。愛でもない。
**ただ「ふたり」が在ったという証だけが、永遠に残った。**
エピローグ:**君に名前をつけよう**
何千回目かの世界の再生。
どこかの町、図書館の奥の静かな部屋。
一人の少年が本を読んでいた。
ページをめくる指の隣に、もう一人の手がそっと重なる。
「名前、なんていうの?」
「……まだないよ。」
「じゃあ、僕がつける。」
静かな声で、少年は笑った。
「君の名前は、“乱歩”。」
本のページが、風に吹かれて舞い上がった。
過去も、未来も、すべてを超えて。
――**また、君に会えたね。**
完
以上です
もう一個書き置き出しますね