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哲汰side
病室の外の椅子に座って、
俺はひたすら両手を握りしめていた。
ドアの向こうで何が起きているのか、
何をされているのか、
音だけは聞こえるのに何も見えない。
ナースコールを押したときの直弥の顔が、
頭から離れない。
哲「直弥……大丈夫、だよな……」
呟いても返事はない。
ただ時計の秒針だけが、
やけに大きく響いている。
不安が胸の奥でどんどん膨らんでいく。
しばらくして、病室のドアが開いた。
白衣の先生が出てきて、
俺に向かってゆっくり歩いてくる。
哲「……先生、直弥は……?」
先「そのうち意識は回復しますので、大丈夫ですよ」
その言葉に、胸の奥で詰まっていた息が
一瞬抜けた。
よかった、と安堵しかけた次の瞬間――。
先「ですが……心臓がかなり弱くなってきています。このままだと、もってあと半年かと……」
世界が止まったみたいだった。
耳鳴りがして、先生の声が遠くなる。
哲「……はん、とし……?」
かろうじて出た声は、
自分の声じゃないみたいに震えていた。
先「直弥くんの体は今、非常にデリケートな状態です。詳しい説明は後日ご家族の方に――」
先生の言葉が続いていたけれど、
もう頭には入ってこなかった。
目の奥がじわりと熱くなって、
気づけば涙がこぼれていた。
哲「……なんで……なんでそんな……」
直弥がいない世界なんて、想像できない。
笑って、怒って、拗ねて、ツンツンして、
俺のことを見てくれる直弥が、
あと半年……?
短すぎる。あまりにも、短すぎる。
どうすればいいのかわからなかった。
俺には何もできない。
ただ、頭を抱えて、
その場にうずくまるしかなかった。
哲「直弥……っ……」
嗚咽がこぼれる。
いくら泣いても、彼の時間は止められない。
それが悔しくて、苦しくて、
胸が張り裂けそうだった。