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――ポタ、ポタッ・・・
楽譜の隅に何粒もの涙が零れ落ちては染みこんでいく。
楽しかった。あの日々のひとつひとつが。
一緒にしたいことも、まだたくさんあった。
アラスター『貴女とはどうやら趣向が似ているのでしょうね』
アラスター『話していて興味深いものばかりです』
いつか彼が言った、そんな何気ない一言がずっとずっと忘れられなかった。
こんなことになるのなら、もっと早く素直になるべきだった。
―――彼の事が、心の底から大好きだった。
〇〇「今更気づいたって・・・もう、遅いじゃん・・・・・・ッ」
せっかく完成させた楽譜に染みた涙が、五線譜を滲ませる。
せめて、せめて私の気持ちを込めたこの曲がアラスターに届きますように。
“私を忘れずにいてほしい” そんな自分勝手な、私の最後のわがまま。
〇〇「さようなら・・・」
〇〇「ありがとう、ごめんね・・・みんな・・・っ」
これでいい。何を引き替えにしてでも守りたいもの。
後戻りできなくなってからではもう遅い。
危険に巻き込んでしまう前に。
―――今度こそ、選択を間違えてはならないのだから。
フロントの鍵置き場に、自室のキーを掛ける。
玄関扉が小さく閉まる音を背に聞いて、私はハズビンホテルを後にした。