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夜風は冷たいのに、繋いだ手のぬくもりがそれを忘れさせてくれる。
歩くたびに、指先から心臓へじんわり熱が伝わっていくようだった。
「……あの」
勇気を振り絞るように咲が声を出す。
「ん?」悠真が横を向く。
「私……今、すごく幸せです」
顔は真っ赤で、うつむいたまま。けれどその言葉ははっきりと届いた。
悠真はしばらく黙って歩き、やがて少し苦笑するように答えた。
「俺もだよ。……もっと早く気づいてればよかった」
その言葉に胸がぎゅっとなり、咲はぎこちなく首を横に振る。
「いまだから……よかったんです」
街灯の下、二人の影が重なり合い、寄り添うように揺れていた。