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校舎の方に近づくにつれて、人影が増えてきた。
今日は休日のはずだけど、全寮制だから生徒はいてもおかしくないんだろう。
それにしても…。
「見て…!!電気様が居る…!!」
「きゃ~っ!!ホントだっ!!」
女の子からの視線が凄い…。
視線を集めているのは、もちろん僕ではなく隣にいる上鳴先輩。
みんな目をハートにして、先輩の方を見ていた。
「上鳴先輩もだけど、生徒会のメンバーってホント素敵だよね~っ」
「ほんとほんと!!あたしは切島先輩がかっこいいと思う!!」
「わかる~!!優しくて頼りになる兄貴分って感じだよね!でも、美人さで言ったら八百万さんが一番じゃない??」
「芦戸さんもかわいいよね〜!!」
知らない名前がちらほら聞こえるけど、どうやら女の子たちは生徒会の話をしているらしい。
生徒会って、人気なんだなあ…。
「みんな素敵だよね!でもやっぱり一番は…」
「「「勝己様でしょ〜!!」」
声を揃えてそう話す声が聞こえた。
勝己って、なんか聞いたことあるなあ…。どこで聞いたんだろう…?懐かしい感じ…。
よくわからないけど、いつか会う日が来るよね!!
というか、上鳴先輩はこんなに視線を集めているのに気にならないのだろうか…堂々としていらっしゃる…。
スタスタと平然な容姿で歩いている上鳴先輩の姿に、感心する。
女の子たちは相変わらず、楽しそうに話していた。
「勝己様って首席で勉強も運動もできてそのうえ高等部1年で生徒会長なんて、ハイスペックすぎるよね…!!」
「あ~、女嫌いじゃなかったらお近づきになりたい運命だった…」
「一度でいいから勝己様とお話してみたいなあ…」
そんなに人気なんだ…。
「…ていうか、上鳴様の隣にいる地味なやつ、誰?」
ギクッと、体がこわばった。
こ、これ、僕のことだよね…。
「さー、なんか案内してるみたいだし、生徒会の仕事中かなんかじゃない?」
「電気様が汚れるから近づかないでほしい〜」
クスクスと笑い声が聞こえて、恥ずかしさと上鳴先輩への申し訳なさで視線を下げる。
僕みたいなちんちくりんが隣を歩いてすみません…!
そう心のなかで謝罪したとき、上鳴先輩が口を開いた。
「気にすんな。品のねェ女子生徒も居るけど、何とでも言わせておけ」
あれ…聞こえてたんだ…。
上鳴先輩にとって、騒がれるのは日常茶飯事なんだろうな。
こんなに顔が整っているから、当然か…。
「は、はい。ありがとうございます」
僕はお礼を口にして、視線を前に戻した。
校舎に入って廊下を進む。ある部屋の前で、上鳴先輩は足を止めた。
「着いたぞ、緑谷。ここが理事長室だ」
立派な作りの扉の前。表札には上鳴先輩が言うように、理事長質の文字。
「ありがとうございました」
ここで上鳴先輩とはバイバイかと思ったけれど、どうやら先輩も理事長室に入るみたいで、僕の先を進んでくれる。
3度ドアをノックし、上鳴先輩はドアノブに手をかけた。
「失礼します。編入生を連れてきました。」
中から、返答はない。
しかし、先輩は重たそうな扉をいとも簡単に開け、私に入るよう促した。
細身に見えるのに、意外と力持ちなのかな…って、意外とは失礼だっ。
「失礼します」といって、足を踏み入れる。
扉の先にはクラシック調の広い空間があり、奥の席に一人の男性が座っていた。
「はじめまして。緑谷出久サン。理事長の相澤消太です」
「はじめまして」
「よく来てくれたね。君のような優秀な人材が我が校に来てくれてうれしいよ。教師一同皆、歓迎している」
物腰柔らかそうな、理事長というには疑わしい容姿の男性。
「そんなふうに言っていただけてうれしい限りです。ありがとうございます」
「どうぞ座ってくれ。君には少しだけ、今日からの学校生活について話をさせてもらおうと思ってね」
「失礼します」と頭を下げて、ソファに座った。
僕の隣に、上鳴先輩も腰を下ろす。
「我が校に関して走っていると思うけれど、国内でもトップクラスの学力を誇っている。その他、部活動や野外活動にも力を入れているから、すべてにおいて、他の雇用では経験できないようなレベルで勝負できるだろう」
へぇ、活発的な学校なんだ。
「…と、表の説明はこんなもんだ。裏のことは…そこにいる上鳴クンから聞いてくれ」
…裏?
聞き返そうとした瞬間、理事長が話を続けた。
「なあに、少し乱暴な生徒もいるが、ここでの暴行事件は即刻停学だ。ここで問題を起こすものはいないから安心してくれ」
意味深な言葉が引っかかったけれど、理事長から詳細を告げる気はないらしいので、後で上鳴先輩に聞こう…。
「それじゃあ、あらかたの説明は終わりだ。何か質問はあるか?」
「いえ、ありません」
「そうか。それじゃあ上鳴に寮まで案内させる。君が素敵な学校生活を送れることを祈っているよ」
「ありがとうございます」
席を立ち、理事長に頭を下げる。
「上鳴、頼んだぞ」
「はい…行くぞ、出久」
首を縦に振って、上鳴先輩に「はい」と返事をした。
「お?珍しいな、上鳴が誰かのことを下の名前で呼ぶなんて」
「そんなことないですよ。余計なこと言わないでください理事長」
…?
少し焦った様子を見せた上鳴先輩を不思議に思いながら、その後ろをついて行った。