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21 - 第21話 爆弾(解除編)

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2023年03月04日

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本棟の二階は、何か信じられないくらいに、重い空気だった。

「切れたよ。ねえ、景音くん、どうする?」

「そりゃ技術室まで行って道具を借りるか、もしくは、FBIを呼ぶか。しかし、呼んだところでって感じだよ。ほとんどの捜査官は今いないだろうし」

景音は冷静に技術室の方を見て言った。

「爆弾を解除しなくちゃいけないんだろうけどさ、さっきの雪ちゃんの電話の方が気になるよ。ねえ。雪ちゃんのとこ行こう」

「それはやめといたほうが良さそうだ。この爆弾、時計も無いし、遠隔式なのかも、時限式なのかも不明なのに、離れれば、犠牲者が多くなる」

景音の頬に一筋の汗が伝っていた。

「まあ、あいつが死ぬなんてヘマしないしな」

景音は壁にもたれかかった。そしてゆっくりしゃがみこんだ。

「どうしたの?」

「ごめん、貧血、みたいだ……」

景音の顔がだんだん青くなっていく。

「ま、まずい……私一人で爆弾解除なんて……」

歩美が目を瞑った時、随分昔の事を思い出した。


緑色の草原が広がっている庭に、兄妹がそこに居た。

「ねえ、お兄ちゃん。いい加減教えてよ~」

「何を?」

「これの直し方。間違えて、変なコードと繋げちゃったんだもん」

歩美は不服そうな顔を兄に見せた。

「えー、もうしょうがないな」

在人は歩美の持っていた目覚まし時計を取ると、家の中に戻って行った。

そのまま庭の中に向かうと、2階にある自分の部屋に向かって行った。

クローゼットを開けると、その中からドライバーを取り出した。

「うーん……まあ、開けてみればわかるよな」

在人はどらーバーの先をねじに当てると、左向きに力強く回した。

中を開けてみると、配線がぐちゃぐちゃになっていた。

「……なんでこんなことになってんだ?」

彼は眉を顰め、微妙な笑みを見せた。

彼はそのまま、下に降りて何かを取りに向かった。

しばらくして戻ってきたのだが、彼の手にははさみがあった。

「それで、コード切るの?切って大丈夫なの?」

「こんな繋げ方したら切る以外ないだろ」

赤いコードを引っ張り出すとそれをはさみで切った。

すると、甲高い昔の黒電話のような音が鳴り響いた。

「びっくりした」

「直ったよ」

在人は後ろのスイッチを切ると歩美に渡した。

「解除成功、みたいだな」

「爆弾みたい」

2人は部屋の中で笑っていた。


歩美は唐突にそれを思い出した。

歩美は支えていた景音を床に寝ころばせると、すぐに立ち上がり、ペンチを取りに技術室に入って行った。

「爆弾を早く解除して雪ちゃんのところに行かないと!」

黒板の前にあった大きな机の引き出しを開けると、中に大量のペンチとドライバーがあり、それぞれ2つずつ取り出すと爆弾の場所へ戻って行った。

「点火装置に直接つながっているのは、この白いコードで、黒いコードは、此処に直接つながっているから切れなくて、黄色いコードは、黒いコードの隣だから危険……じゃあ、切るのはこの白いコードで良いんだよね?」

歩美は、ペンチの刃を白いコードに引っ掛けた。

彼女は目を瞑ると、勢いよくペンチを握った。

カチッ。

コードの切れる音がする。

「何も起こらない……良かったあ解除できた~」

歩美はほっとしたように床に腰をつく。

しかし、爆弾はまだ止まっていないと気が付いた。

「さっきまでこんなの無かったのに。タイマーが表示されてる!あと30秒しかない。なんで?」

歩美は両手で爆弾を持ち上げると、それを良く観察した。しかし、手掛かりは得られなかった。

「どうしよどうしよ。こんなところで……」

爆弾の下をよく見てみると、赤いコードがあった。

「……もう、一か八かだ!」

ペンチの刃を赤いコードに引っ掛けると、さっきと同じようにペンチを握りしめた。

「……ふう。焦ったー。爆発しなくて良かった……」

歩美がそう呟いた途端、一階から爆発音が聞こえてきた。

「一階って……まさか……」

電話が鳴っていることに気が付いたのか、スマホを手に取ると、すぐに電話に出た。

「もしもし?二人とも大丈夫?」

「まあ、大丈夫よ、危なかった……ほんとに。さっきまで一階を探してたから、死ぬとこだった」

「良かった……こっちはもう爆弾解除したよ」

「もう見つけたの?早いね」

「まあね。最後に探したところに見つけたから、終わったら、そっち行くよ」

歩美は、スマホを耳から話すと、通話終了ボタンを押した。

「でも気になるのは雪ちゃんのところ。確率的には雪ちゃんの探してる場所が一番高いんだよね」

雪が担当している場所は、FBIの本部がある、旧校舎。旧校舎には人はめったに入らないため、本部はここに置かれている。

「一人で行くにしては、確率の高い場所だし……何より気になるのは雪ちゃんの携帯を奪ったのが誰かってこと……」

歩美には一人で行くというのが気になって仕方なかった。

一分間硬直したまま考えていると、雪はハッと気が付いた。

「もしかして、雪ちゃん。一人で行って死のうとしてるんじゃ……誰かと行けば、止められると思って……」

歩美の顔がどんどん青ざめていった。

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