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朝のニュースサイトに、若井は自分の名前を見つけた。
『人気バンド・若井滉斗、真剣交際発覚!お相手は一般女性』
スマホの画面を握る手が汗ばむ。
添えられた写真は、彼女と一緒に歩く姿だった。
マスクと帽子で顔を隠していたはずなのに、どこか決定的なものを抑えられている。
「……なんで、こんな……」
心臓が嫌な音を立てた。
記事はSNSですぐに拡散され、コメント欄にはさまざまな言葉が飛び交っている。
⸻
昼前、彼女から電話がかかってきた。
着信音が鳴るたびに胸が締め付けられる。
出るか迷ったが、指が勝手に応答ボタンを押した。
「……滉斗くん」
声は震えていた。
「ごめん……私、無理だよ。こんなに注目されるの、耐えられない」
「待ってくれ、俺は……」
言い訳を探すが、喉が詰まる。
「嫌いになったわけじゃない。でも……私、滉斗くんの“彼女”でいる自信がないの」
その一言で、すべてが崩れ落ちた。
⸻
電話が切れたあと、若井はしばらくその場に立ち尽くしていた。
耳の奥で自分の心音だけが響く。
(……俺が、守れなかった)
後悔と自己嫌悪が押し寄せてきた。
それでも、心のどこかで“あの夜のこと”がよみがえる。
元貴が見せた笑み、支配するような手つき。
「……くそっ」
壁に拳を叩きつけた。
もう二度と彼女に触れられない現実。
そして、頭の片隅で元貴の顔を思い出してしまう自分。
⸻
その日の夜、若井はスタジオに向かった。
しかし、ギターを手にしても指が動かない。
集中しようとすればするほど、心が空っぽになっていく。
「……どうしたんだよ、俺」
呟いた声が、スタジオの空気に溶けた。
こんな感覚は久しぶりだった。
自分の中の“何か”が崩れていく音がする。
⸻
夜遅く、帰り道のコンビニでコーヒーを買った。
レジに並ぶ途中、ふと誰かの視線を感じた気がして振り返る。
だが、そこには誰もいない。
(……元貴……)
名前が自然に浮かんだ。
なぜか分からない。
でも、あの視線を感じるたび、胸の奥が妙にざわつく。
コンビニを出ると、雨が降り出していた。
傘を差す気力もなく、若井はそのまま外に座り込み、濡れた髪をかき上げた。
スマホを開くと、未読のメッセージが一件。
元貴からだった。
「今、どこにいる?」
短い問いかけ。
それだけで、心が揺れた。
コメント
2件
ひろぱがからっぽになっちゃった!?続きはどうなるんだろ?あ!!ちなみに課題はもうちょいです(๑•̀ㅁ•́ฅ✨