テラーノベル
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朝から学校はいつもと違うざわつき。
飾りつけされた廊下、制服の上にエプロンや仮装、屋台の匂い、笑い声。
今日は、文化祭本番。
の「えとさーんっ!!チョコバナナ食べよっ!!」
のあさんが腕を引っ張ってきた。
いつもより気合いを入れた髪型、かわいい
朝からテンションが高い。
え「おはよ…まだはじまったばっかだよ」
の「そんなの関係なーいっ!食べれるうちに食べとこっ!」
のあさんに連れられて向かった中庭には、出店がずらっと並んでた。
そこにすでに、うり、じゃっぴ、ひろくん、ゆあんくんの4人も集合してた。
う「うわ、なんか今日のえとさん、ちょっとだけ特別感ない?」
うりがチュロス片手に軽口をたたく。
え「え?普通の制服だけど?あー今日はポニテの位置高いから?」
う「そういうとこだってば〜、なんか文化祭の日の女子って、3割増しってやつ?」
じゃ「おいおい、うり、朝から口軽いぞ」
じゃぱぱが笑って肩を叩く。
ゆ「…ってかさ」
小声で言う。
ゆ「さっきチラシ配ってたら、他校のやつが“あのセーラー服の子かわいくね?”って言ってた」
じゃ「え、誰のこと?」
ゆ「……えとさん」
え「え?」
思わず声が裏返った。
ひ「まぁ、見る目あるよな!」
ひろがさらっと言って、わたしの髪に何かついてたのを取ってくれた。
近い、距離が近い。
その瞬間、全員の視線がわたしに集中して、めっちゃ気まずかった。
の「なんか…全員、今日テンションおかしくない?」
⸻
午前中はわちゃわちゃ食べ歩いて、わたしはチョコバナナ、ポテト、クレープでお腹いっぱい。
のあさんは輪投げで景品をゲットしてテンション最高潮。
午後はいよいよステージ発表。
舞台袖で衣装に着替えて、手汗でぐちゃぐちゃになった台本を握る。
わたしの相手役は、ゆあんくん。
ゆ「…緊張してる?」
え「してないって言ったら嘘だけど」
ゆ「うん、でも、大丈夫。昨日の練習で、えとめっちゃ良かったし」
そっと目を合わせてくれたゆあんくんの目は、まっすぐだった。
ドキっとしたけど、なぜか不思議と落ち着いた。
「いってらっしゃい、がんばれ」
みんなからの応援で少し安堵した
「うん。いってくる」
⸻
劇が終わると、会場は拍手で包まれた。
ライトの下、ゆあんくんと並んで礼をすると、達成感と熱で足がふわふわした。
⸻
ステージ後、控室に戻ると、うりが真っ先に駆け寄ってきた。
う「えとさん、やっっっばかった!!惚れ直したんだけど」
じゃ「もともと惚れてたんかい」
じゃっぴがすかさずツッコミを入れて笑う。
ひろは、ふっと静かに笑って、
ひ「…ちゃんと届いてたと思うよ、セリフ」
そう言ってくれた。
なんだろう。
今日一日、わたしはずっと誰かの視線を感じてた気がする。
悪い意味じゃなくて。
なんか…あったかくて、くすぐったい感じ。
⸻
夕方、みんなで買い込んだジュースと余ったお菓子を持って、校舎裏の階段に集まった。
オレンジの空、鳴り止まない笑い声。
の「ねぇ、また来年も、みんなで出たい」
のあさんがぽつりと言った。
う「やろうぜ、来年はもっとヤバいの」
じゃ「その前に、今日の打ち上げ、どうする?」
え「じゃっぴんち集合?」
じゃ「え!?勝手に決めるな!!」
なんでもない、でも忘れられない放課後。
たぶんわたしは、今、青春ってやつのど真ん中にいる。
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