テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「柔、俺さ……好きな子がいるねん……」舜太から相談があると言われて個室性の店で食事をすることになった。何だか真剣な表情なので心配していたがその内容を聞いて肩透かしを食らったような気分になる。
「マジ?それで相談したかったんだ」
白々しいぐらい驚いたふりをする。だってそんなの前から知ってるから。
言われなくても分かる、相手に向ける視線、ふとした行動…舜太はとてもわかりやすいから。
「どんな子なの?」
「えー…なんていうか、頭の回転も早くて尊敬できて芯のあるタイプやねん。言葉がキツいから誤解されるだけで優しい子で…いつもはツンツンしてるけど可愛い所もあってな?一緒にいるとイタズラしたくなるっていうか…」
最初は神妙な顔だったのに話しているうちにどんどん笑顔になっていく。顔に出過ぎだよ、なんて笑みが浮かんでしまう。
舜太の話を聞きながら「分かる」と「それは分からない」という言葉が浮かぶ。それ隠しつつうんうんと相槌を聞きながら聞いていると舜太がハッとした顔をする。
「あ!ごめんな!つい長くなって…」
「ううん、いいよ。舜はその人のこと、大好きなんだね」
そう言うと舜太はえへへ…と微笑んだ後、しょんぼりしたような顔をする。
「でもな、その……年上の子やからさ、俺恋愛対象として認識されてないと思うねん」
「…へえ、年上なんだ。何歳?」
「3歳違い」
「大して変わらないじゃん、3ぐらい」
そういう所も隠さないんだ。まあ舜太は俺がわかっていることも把握してないしね…。
「でもあの…先輩、みたいな感じやねん」
「先輩?」
「いや!先輩っていうか、そうじゃないんやけど〜」
ごにょごにょと舜太が誤魔化そうとする。ちょっといじわるしちゃったかな。
「まあ年上だとそういう壁みたいなのあるよね、子供扱いみたいな」
「そう!そやねん!」
ゆびを指して一気に声が大きくなる。個室でとって良かったと心から思う。
「何しても俺のこと子供やと思って真面目に相手してくれへんねん、ハイハイみたいな…」
「うーん…」
舜太の言葉を聞いて色々なことを思い出す。確かに最初の頃はその通りだったと思う。
でも最近はちょっと違う。舜太は気づいてないが明らかに反応が変わっている。
「それどころか最近はちょっと冷たいっていうか、鬱陶しがられてる気がしてな…全然目合わせてくれへんし、俺と目が合うとすぐ逸らすねん」
思わず笑いそうになるのを堪える。舜太は素直すぎて鈍感なところがある。自分がわかりやすく愛情を示すタイプなので相手の行動の意味が分からないのだろう。
「最初は普通だったの?」
「うん!まあそんなに相手はしてくれへんかったけど、ちゃんと話聞いてくれたしツッコミ入れてくれたり…」
「で、最近は?」
「前みたいにちょっかいだすと冷たくされんねん…相手してくれへんっていうか、面倒になってもうたんかなぁ…」
舜太は肩を落としてうなだれている。
「それって何かきっかけとかなかった?」
「きっかけ…?うーん…」
「…例えば、転んでたまたま押し倒しちゃったとか」
「……あ」
舜太がハッとした顔をする。ちょっと前の撮影でカメラマンさんに難しいポーズをお願いされた時。ちょっとした事故だった。
俺はすぐ近くで見ていたから少しだけ表情が見えた。押し倒されて抱きしめられるような体制になった時の、あの顔。
舜太はすぐに起き上がってごめんな!怪我ない?って焦って声をかけていた。必死で分からなかったのだろう。いや、見ていたとしても舜太なら分からなかったかもしれない。
「いや!ちゃうねんで!ほんと事故で…すぐ謝ったんやけど…確かにその時から俺と目合わせてくれなくなった気がするわ……」
顔を覆って絶望しいる舜太がさすがに可哀想になってくる。もう堂々と名前を言ってくれた方が励ますのも楽なんだけど…。
「でもそれってさ、照れるんじゃないの?」
「へ?」
「よくあるじゃん、急に意識しちゃって上手く話せなくなるみたいな」
「え〜そんな漫画みたいなことある…?」
「でもそういうタイプの子なんでしょ?」
「…まあ、せやな。嫌って言いながら喜んでたり、素直じゃないっていうか…」
舜太がちょっと考え込むようなポーズをとる。色々なことを思い出しているようだ。
「それに目が合って逸らされるってさ、相手も舜太のこと見てるってことじゃない?」
「!たしかに!」
「前から相手が自分を見たりしてる事ってあったの?」
「ううん。じ……あの子、1人の時間好きなタイプやからスマホで動画見たりしてるのが基本やねん。だから俺が勝手に見つめてるのが基本で…あ、」
目をぱっと開いて反応する舜太。もう一押しかな。
「それってちゃんと意識されるようになったって事じゃない?多分だけど、そうやって目合わせないのは照れてるんだと思うよ」
「そうかな…そう、かもしれんな……」
「チャンスじゃない?今」
悩んでいる舜太に畳み掛ける。
「相手が素直になれないなら、舜太からちゃんとハッキリアプローチしないと。相手も年上だから年下にはアプローチしにくいじゃん。舜太がリードしてあげなきゃ」
話してるうちに舜太の目がキラキラとしていく。
「せやな!俺、何でこんな事気づかなかったんやろ?頑張らなあかん時なのに!」
「気づいたならいいじゃん、こっからだよ本番」
舜太の肩をぽんと叩くと満点の笑顔を向けてくる。
「うん!こっから俺、マジで頑張るわ!柔に相談してよかった〜ほんまにありがとう!」
立ち上がって俺の手を握ってぶんぶんと振り回す。舜太のこういう素直で真っ直ぐな所が眩しく感じる。自分も頑張らないとな、なんて思いながらその日は”好きな子”の話を聞きながら食事を終えた。
「………はあ…」
「どしたの?疲れてる?」
「まあ………」
「ストレス?」
「いや、そういうじゃないけど……」
それから数日後にあったゲーム配信の撮影現場、配信開始前に椅子で待機してると横にいたよっしーは随分とぼうっとしていた。考え事をしてるんだろうと見てるだけで分かる。
「何かあった?」
「……別に、何も」
「絶対何かあったやるじゃん、相談、のるよ?」
ニヤニヤしながらそう言うとよっしーは一瞬俺の顔を見て何か言いかけたが、すぐ口を閉じて画面に向き直った。
「……言えるような事じゃないから、いいわ」
「ぷっ」
思わず吹き出して笑いだしてしまった。その俺の様子を見てよっしーが不審がるような顔をする。
「あーごめん。なんか、思い出し笑い」
「こーわ…」
「まあ悩み事なんてすぐ解決するでしょ。仁ちゃんがもっと素直な性格になれば」
「…………そうなれたら苦労してねえよ…。ていうか何も知らねえのにテキトー言うな」
「あはは、ごめんて」
お互いこんなに分かりやすいのに、本当に性格が真逆でおかしくなる。だからお似合いなのかな?
次は舜太からはきっといい報告が聞けるだろう。
━━━━━━━━━━━━━━
第三者から見たカップルっていいですよね…塩レのお話結構読んで頂いて嬉しかったです
今度は惚気話を聞かされる話とか、お互いにカレカノ自慢する(される)話も書きたい気持ち
kimi
353
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!