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カーテンの隙間から、やわらかい光が差し込む。
静かな部屋。
その中で、先に目を覚ましたのは——
緋八マナだった。
「……ん」
ぼんやりした視界。
まだ少し重たい頭。
でも。
すぐに気づく。
「……近」
目の前にあるのは、
伊波ライの寝顔。
昨日のままの距離。
というか——
ほぼ、くっついてる。
「……離れへんかったんか」
小さく呟く。
思い出すのは、昨夜のこと。
“離さない”って言ってたな、こいつ。
「……ほんまに離してへんやん」
少し呆れながらも。
そのまま見つめる。
⸻
静かな寝顔。
普段より少し幼く見える。
「……無防備すぎやろ」
そっと手を伸ばしかけて。
一瞬止まる。
——起こしたらあかんか。
でも。
少しだけ、触れたくなる。
結局。
軽く髪に触れた。
「……」
柔らかい。
その瞬間。
「……マナ?」
目、開いた。
「うわ、起きてたんか」
「今起きた」
少し寝ぼけた声。
「おはよう」
「……おはよ」
⸻
数秒。
そのまま見つめ合う。
距離、近いまま。
「……近いな」
「近いね」
でも、どっちも離れへん。
⸻
「マナ、ずっと見てた?」
「……見てへん」
「嘘」
「……ちょっとだけや」
素直に言ってしまう。
「ふふ」
笑われた。
「なんやねん」
「嬉しいなって」
「……意味わからん」
でも。
ちょっとだけ、顔が熱い。
⸻
そのまま。
少しだけ距離が詰まる。
「……朝からか?」
「だめ?」
「……だめちゃうけど」
ほんま、慣れてきてるな。
⸻
軽く触れるキス。
まだ少し眠たい空気の中。
やわらかい感触。
「……っ」
ゆっくり離れる。
「……朝やぞ」
「知ってる」
「なんでこんな余裕やねん」
「マナがいるから」
「……っ」
それはずるい。
⸻
「……なあ」
「うん?」
「もうちょい寝る?」
「いいよ」
そのまま。
また少しだけ近づく距離。
⸻
今度は、マナの方から。
軽く寄る。
「……珍しい」
「たまにはな」
照れ隠し。
でも、ちゃんと触れる。
⸻
「マナ、あったかい」
「そらそうやろ」
「安心する」
小さく呟く声。
それが、やけに近くて。
⸻
「……俺もや」
ぽつりと返す。
「え?」
「……なんでもない」
「絶対なんか言った」
「言ってへん」
⸻
笑い合う。
朝の、ゆるい空気。
昨日よりも自然な距離。
⸻
「なあ、ライ」
「うん?」
「これ、クセなるな」
「なにが?」
「こういうの」
少し考えて。
ライがふっと笑う。
「これからいっぱいできるよ」
「……せやな」
⸻
また少しだけ目を閉じる。
隣にある温もり。
近い呼吸。
⸻
起きたばかりなのに。
もう一回眠れそうな安心感。
⸻
「……なあ」
「うん?」
「今日、どっか行く?」
「いいね」
「ほな、あとで決めよか」
「うん」
⸻
ゆっくり流れる朝。
特別じゃないけど。
特別な時間。
⸻
隣にいるのが当たり前になっていく。
その感覚が、少しだけ嬉しくて。
⸻
マナは小さく笑った。
「……悪ないな」
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