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ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜
第127話 - 〇〇は『主人公がショタ化』するのを目の当たりにするそうです その2
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2023年12月26日
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2023年12月26日
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「えーっと、言いたいことは分かったんだけど、そこに行くのは変わりないんだから、どこかでゆっくりするのもいいんじゃないか?」
俺がそう言うと、コユリ(本物の天使)はこう言った。
「分かりました。それでは、マスターの世界で言うところの修学旅行の自由行動の時間を設(もう)けましょう。それでいいですか?」
「ああ、それでいいぞ。ありがとな、コユリ」
「いえ、私はマスターの望みをできるだけ叶(かな)えたいだけですので……」
「そうなのか? でも、ありがとな」
「はい、どういたしまして……」
なんだかコユリ(本物の天使)の顔が少し赤くなった気がしたが、俺は特に気にせず、みんなに改めて次の目的地を伝えた。
「よし! それじゃあ、次は『蒲公英《たんぽぽ》色に染まりし花畑』に行くぞ!」
俺が片手をグーにして、上に突き出すと。
『おーーー!』
全員が俺のマネをした。よし、これで次の目的地が決まったな。
良かった、良かった……と、俺が思っていると、急に胸が苦しくなった。
なんだよ……これ!
俺はその場で胸《むね》を押さえながら膝《ひざ》から倒《たお》れた。
その直後、俺の体から白い光が溢《あふ》れ出した。
その時の俺には心配して近づいてくる、みんなの声や足音が全《まった》く聞こえなかった……。
しばらくすると、白い光は消え、痛《いた》みもひいていた。
だが、妙《みょう》に体が軽くなっていた。
俺はミノリ(吸血鬼)たちにそのことを伝えようとしたが、目の前で俺を見ているミノリたちは驚きを露《あら》わにしており、その場に立ち尽《つ》くしていた。
「なあ、ミノリ。俺って、今、何歳くらいに見える?」
俺が思い切って、そう訊《たず》ねると。
「え、えーっと、今のあんたは……」
「今の俺は?」
「……見た目だけで言うなら、十歳くらいになってると思うわ」
「……マジか?」
「ええ、マジよ」
「身長はどれくらいだ?」
俺がそう質問すると、ミノリは。
「あたしと背《せい》比《くら》べしてみる?」
「お、おう、頼む」
俺の服は、お袋(ふくろ)が作ってくれたものなので俺の身長に合わせて形状を変化させることができる。(もちろん、靴《くつ》も!)
俺は、お袋が作ってくれた衣服等に感謝しながら、スッと立ち上がると、ミノリと背中を合わせた。
すると、コユリ(本物の天使)が俺とミノリの身長を肉眼とそれぞれの頭に手を乗せて測定した。
その結果……。
「マスターの身長は今、百三十センチです」
「な、なんだと!」
コユリからそれを聞かされた時、俺は驚《おどろ》きを露《あら》わにし、激しく動揺した。
「コユリ、もう一度やってくれ!」
「いいえ、それはできません。天使型モンスターチルドレンである私の目は真実を見通すことができます。なので、マスターが小さくなったことは紛れもない事実です」
「そ、そんな!」
「大丈夫です。マスターが小さくなっても私は大丈夫です」
「いや、そういう問題じゃなくてだな」
「あー! もう! とりあえずアパートに戻ってからにしない? ナオトだって朝ごはん食べてないんでしょ?」
「ん? あー、そういえば、そうだったな。ありがとう、ミノリ」
「これくらい当然よ!」
「お前はやっぱり頼りになるな」
「小さくなっても、ナオトはナオトでしょ! しっかりしなさい!」
「そうだな。そうだよな。えーっと、それじゃあ、みんなー、朝ごはんを食べに一旦《いったん》戻《もど》るぞー」
『はーい!』
コユリ(本物の天使)だけは返事をしていなかったが、俺はみんなを連れてアパートに戻った。
*
その頃『ナーラのまち』では。(この世界でいうところの奈良県)
「あれ? ここはどこだ? あたしらは確か、奈良の大仏を見に行くために集まってたよな?」
「私にも分かりません。ですが、ここが私たちの知っている日本ではないことは分かります」
「私の力……使ってみる?」
「うわっ! お、おどかすなよ! 高木! ああ、びっくりした」
「ごめんなさい。私、存在感ないから……」
「そ、そんなことないですよ! 高木さん! 元同級生である私から言わせてもらうと、あなたほど、その力を活かしきれている人はいませんよ! だから、気を落とさないでください! ほら、黒曜《こくよう》ちゃんも!」
「あ、ああ! そうだな! 相馬(そうま)の言う通りだ! お前のその力は使い方次第では、スゲーものになるぞ!」
「ほん……とう?」
「ああ、本当だ! だから、そんな悲しそうな顔すんなよ」
「うん、分かった。ありがとう、黒曜《こくよう》ちゃん、夏樹(なつき)ちゃん」
「いいってことよ! じゃあ、このまちを探索(たんさく)しようぜ!」
「そうですね。何はともあれ、まずは情報収集です。ほら、行きますよ。高木さん」
「うん……そうだね」
こうして女子三人は探索《たんさく》を開始した。さて、彼女たちが探索している間に彼女たちのことを紹介しておこう。
男勝りな彼女の名前は『杉元《すぎもと》 黒曜《こくよう》』。杉元式|激槍《げきそう》術の使い手で、名槍《めいそう》『黒神槍《こくじんそう》』の所持者。
上半身は胸部《きょうぶ》を『サラシ』で隠《かく》していて、下半身には黒いスパッツと黒いスカートを纏《まと》っている。(靴(くつ)は履《は》いておらず、両足にテーピングをしている)
長い髪《かみ》は黒く、白い紐《ひも》でポニーテールにしている。赤い瞳《ひとみ》は血のように赤く、肌《はだ》は白い。
先ほど紹介した槍《やり》は黒い布で隠《かく》した状態で持ち歩いている。
「ん? なんか、あたしのことを紹介されているような……気のせいか」
次に丁寧《ていねい》な口調で話していたのが相馬《そうま》 夏樹《なつき》。
相馬式|操馬《そうま》術の使い手。馬の類《たぐい》なら、なんでも召喚でき、操れる。一番のお気に入りは『首なし馬』。
馬に乗っているときは、本来の持ち主であった者《もの》の武器を使える。つまり『セ○ティ・ストゥルルソン』さんの影の力も使える……かもしれないということだ。
服装は白い半袖《はんそで》Tシャツと水色のショートパンツ。(動きやすい格好《かっこう》が好きらしい)
白い靴下と黒と白が混ざったスニーカーを履《は》いている。
父親と同じ金髪はショート。黒い瞳《ひとみ》は母親と同じで肌は白い。
「そうですね、先ほどから妙な視線を感じます」
そして、無口キャラの『高木《たかぎ》 弓子《ゆみこ》』。高木式|射撃《しゃげき》術の使い手で、弓の類《たぐい》なら、なんでも召喚可能。
彼女は弓以外の武器も普通に使えて、なおかつ運動神経も抜群《ばつぐん》である。
お気に入りは『与一《よいち》の弓』。(矢は構えると装填《そうてん》され、なおかつ透明なので、厄介)
身長『百四十センチ』という小柄《こがら》な体型だが、存在感のなさを活かして静かに敵を殺す。
高校時代から無表情だったが、ナオト(主人公)にだけは懐《なつ》いていたらしく、時折、笑みを浮かべていたそうだ。
服装は黒と白のシマシマ模様《もよう》があるTシャツと白い上着と水色のショートパンツ。白い靴下と白い運動靴も着用している。
白く長い髪と黒い瞳と何を考えているのか分からないポーカーフェイスが特徴。
背中に背負っている黒いリュックが気になるが、中身を調べるのは困難《こんなん》である。
「やっぱり見られている……そこ!」
物陰《ものかげ》に隠れていた僕の方を向いた高木さんが飛ばしてきた短剣を躱《かわ》した瞬間、僕の目の前に黒い布に覆《おお》われた『黒神槍《こくじんそう》』の切っ先が向けられていた。
「よお、久しぶりだな。時坂《ときさか》」
「あ、あはは、久しぶりだな。三人とも」
「時坂式時間拘束術の使い手で、その力でタイムマシンを作るとかいう野望を持っていたメガネ野郎が、なんでここにいるんだ?」
「まあまあ、落ち着けよ。杉元。元同級生である、この俺にこんな挨拶《あいさつ》をするのは失礼だぞ」
「あいさつじゃねえ、脅《おど》しだ」
「おー、怖い、怖い」
「ところで、お前はなんでここにいるんだ? というか、お前が知っていることを全部話せ」
「……はぁ、仕方ないな。分かったよ、今から説明するから、ちゃんと聞けよ?」
「さっきからやっているナオトのマネをやめたら聞いてやらんこともないぞ」
「……あははは、やっぱりダメかー。まあ、僕みたいなのが|ナオト《あいつ》のマネなんかしても無駄《むだ》だってことは分かってたんだけどね」
「今、お前のことはどうでもいいんだよ。さっさと教えろ」
「はいはい、分かりましたよ。コホン、えー、それではここがどこなのかをお教えしましょう」
「時坂くん、自分の自己紹介はしなくていいの?」
「おっと! 僕としたことがすっかり忘れていました! さすがですね、相馬さん。コホン、えー、僕の名前は……『時坂《ときさか》 賢太郎《けんたろう》』。時坂式時間拘束術の使い手で、メガネ属性の持ち主! どうぞ、これからもよろしくお願いいたします!」
「時坂くんも……あの頃と全然……変わってないね」
「そう言う高木さんも、あの頃と全然変わってないですね」
「ねえ……それ、どういうこと?」
「い、いえ、特に深い意味はありません。気にしないでください」
「……分かった」
「えー、それでは改めまして、ここがどこかをお教えしましょう! コホン、えー、ここは『|神獣世界《モンスターワールド》』という異世界です!」
「それで? お前の目的は何なんだ?」
「僕の当面の目的は『ナオト』を見つけることです。そして、今度こそ勝ってみせます!」
「やめとけ、やめとけ。お前は一生、あいつには勝てねえよ」
「なぜ、そこまで断言できるのですか?」
「お前とあいつとじゃ、潜《くぐ》ってきた修羅場《しゅらば》の数が違うからだ」
「そうですか。ですが! 僕は諦めませんよ!」
「はいはい、それはもう分かったから、あたしらがこれからどうしたらいいか早く教えてくれ」
「はい、分かりました! ……とは言っても、あと僕が知っているのは、このまちが日本で言うところの奈良県だということだけなのですけどね」
「ちっ……使えねえな……。はぁ……んじゃあ、あたしらもとりあえず『ナオト』を探すからお前もついて来い」
「ぼ、僕が同行してもいいのですか!」
「あぁん? お前は、今も昔も『副リーダー』だろう?」
「そ、そうですね。そうですよね……。分かりました! ならば、僕も全力で三人をサポートしますよー!」
「はいはい、分かった、分かった。じゃあ、とっとと出発するぞ。日が暮れちまう」
「そうですね、先を急ぎましょう」
「ナオト……この世界にいるんだね……早く会いたいな」
「ちょっと! 置いてかないでくださいよー!」
こうして、杉元、相馬、高木、時坂の四人は『ナオト』の波動を追うことにした……。
ちなみに、時坂 賢太郎(黒髪)は、白いワイシャツと黒いズボンと白い靴下と白い運動靴を着用している。
『獄立《ごくりつ》 地獄高校』の最初で最後の卒業生は、卒業記念でもらった『白いおまもり』で同級生の位置を特定することができる。
探す対象を脳内《のうない》で意識することによって、その人物の居場所を特定できる。
そしてこれは、絶対に肌身離さず持っていなければならないという意識を先生に植え付けられているため確実に探し出せる。
*
「あれ? なんか、俺の元同級生たちが俺のことを探しているような……気のせいか」
俺が朝ごはんを食べながら、そんなことを言うと。
「当たり前だ……ここに転移したやつはみんな、お前と合流することを……まず考える」
名取がそう言った。(名取《なとり》 一樹《いつき》。名取式剣術の使い手で名刀【銀狼《ぎんろう》】の所持者。ナオトの高校時代の同級生。前髪で両目を隠しているのは、彼が人見知りだから。いつもは途切れ途切れに話すが、武器のことになるとよく話す。今はナオトたちと共に旅をしている。存在感が薄(うす)い)
「そういうもんかな?」
「そういう……ものだ」
「……そうか」
「ああ、そうだ」
俺と名取は、ちゃぶ台の周りに座っている十人のモンスターチルドレンとその他の存在たちと共に、朝ごはんを食べながら、そんなことを話していた。
はぁ……早く元の姿に戻りたいな……。