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「やられたぁぁ!!」
インクまみれの画面を前に、ハルカはコントローラーを握りしめていた。
元気いっぱいでちょっとドジっ子な彼女のウデマエは、まだC-。スプラを始めたばかりの初心者だ。
「うぅ……ローラーってこんなにむずいの!?」
ジャンプ→塗り→滑る→敵に撃たれる。
カラフルなバトルの中で、彼女だけがいつも床の模様と化していた。
でも、それでもやめられない。
なぜなら——
「レイちゃんみたいになりたいから……!」
ハルカの目線の先、スマホの画面では超人気スプラプレイヤーのレイが映っている。
ウデマエX(XP4500)
使用武器:リッター4K
無駄のない立ち回り、冷静な判断、そして抜群のエイム力
さらに、寡黙そうに見えて意外と優しい
配信や動画でファンも多い、まさに“憧れのヒーロー”
「次の大会もレイちゃん出るんだ……生で見れたらなあ」
そんなある日。
ハルカはふと目にしたSNSの投稿に目を奪われる。
『【初心者歓迎】スプラ交流会!
なんと特別ゲストに、あのレイ選手が登場!』
「………………うそでしょ!!!??」
「はぁ〜〜緊張する〜〜〜〜!!」
人混みに揉まれながら、ハルカは会場の隅でぷるぷる震えていた。
(私なんかが来てよかったのかな……でも、でも!チャンスだもん!)
「——そこの子、ハルカちゃん?」
声がして振り返ったその瞬間、時間が止まった。
そこにいたのは——
白いジャケットに銀髪ポニーテール。
動画で何度も見た、本物のレイだった。
「わっ、わっ、え!?本物!?あの、あの、あのっ!!!」
ハルカの語彙力が崩壊する中、レイはクスッと笑った。
「よろしくね。一緒のチームみたいだし、楽しくやろっか」
「よ、よよよよろしくお願いしますううう!!!!!」
レイと同じチームで始まったナワバリバトル。
最初はボロボロだったけど、レイの一言がハルカを変えた。
「前行ってみて、私が見てるから」
——信じてくれてる。
それだけで、体が勝手に動いた。
「やった!裏どり成功!倒した、倒したよ!!」
試合後、レイが静かに笑って言った。
「ナイス。ハルカ、動きよかったよ」
「……ほんとに?へへっ、うれしい!」
「わたし、もっと上手くなりたいんです。レイちゃんみたいに!」
言葉が自然と口からこぼれた。
すると、レイが言った。
「じゃあ、また一緒にやろっか。練習付き合うよ」
「えっ……ほんとに!? ほんとにほんとに!?」
「うん。C-からでも、Xまでいけるよ。信じれば、ね」
その瞬間、ハルカの目が輝いた。
(——この人の背中を、いつか並んで歩けるようになりたい)
「ハルカ、B帯の壁にぶつかる!?」
初めての連敗、崩れる自信——
だけど、レイとのリグマで見えた新しい世界とは?