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「おはよー!」
登校しているときに声をかけられる名良(なら)。
「おぉ。ビックリしたぁ〜。おはよ雲善、あ、ふーもおはよ。今日都(きょうと)さんもおはようございます」
「おはよ」
「おはようございます」
「あれ?今名良、ふーって呼んだ?」
「え、まあ、うん」
「そういえば名良にふーって呼ばれたことあったっけ?」
「…なかったっけ?」
「ないんじゃない?なんか新鮮感あったけど」
「うん。オレも記憶にない」
「なんか、雲善(うんぜん)が雲善だから、風善(ふうぜん)も風善かなって思ったり
周りはみんなふーって呼んでるからふーって呼ぼうかなって思ったり」
「なぁ〜るほど」
「なるほどねぇ〜」
「なるほど」
「雲善と琴道(ことみち)と今日都さんはふーでしょ?」
「そうね。ま、ふーちゃんとかふーたんのほうが多いけど」
「うん。私はふーって呼んで、ます」
「そうだね。琴道も部活の先輩もふーかな」
「他はたぶん風善だよね」
「うぅ〜ん。そうかな」
「親しければふーなのかな」
「かなぁ〜。ちなみに父さんと母さんは風善って呼んでるけど」
「たしかに!父さんと母さんは雲善、風善って呼んでるわ」
「あ、そうなんだ?」
「うん。姉ちゃんたちも…あ、姉ちゃんたちはふーって言ってるかも」
「うん。お姉さんたちはふーって呼んでるね」
「どうしようかな…」
腕を組む名良。
「そんな悩む?」
笑う風善。
「この際だから、これを機にふーにシフトチェンジしちゃえば?」
「ま、そうね。今日からふー呼びで、いかせていただきます」
と軽く頭を下げる名良。
「あ、わかりました」
風善も軽く頭を下げる。
「じゃあ早速。ふーさ」
「ん?」
「ま、ふーだけじゃないけど、いつも一緒に登校してきてんの?」
と名良が雲善、風善、恋弁(れんか)の3人を見る。
「あぁ、恋弁とってこと?」
と言う風善に頷く名良。
「ま、家が近くだからね」
「幼馴染なんだもんね?」
「そうそう!小さい頃から一緒の3人ん〜」
と楽しそうにする雲善。
「ま、仕方なく…」
と呟く恋弁。そんなこんなで正門から高校の敷地内に入り
昇降口の下駄箱で上履きに履き替え教室へと向かう。
「んじゃ、また後で」
「ういぃ〜」
「じゃ、またね、ふー」
「うん。なんか新鮮」
と微笑み、軽く頭を下げる恋弁とD組の教室に入っていく風善。
「お。また夫婦で登校ですか。毎日毎日いいですなぁ〜」
「どうも」
という声がD組の教室から聞こえてくる。
うん。ふーと今日都(きょうと)さんは恋愛関係でもないのに
ただ男女で来ただけでこの言われ様。それが恋愛ってなったら…
よりめんどくさそうと思う名良。
教室に入り、自分の席の机のサイドのフックにスクールバッグをかけ、イスに座る。
スクールバッグから筆箱を出し、机の収納部に突っ込む。
「うわ」
と言う雲善の声に反応する。
「なに。どーしたの」
「琴道がハーレムってる」
と言う雲善の言葉に琴道の席のほうを見る。すると琴道の周囲に糸、嶺杏(れあ)、ヨルコがいた。
「奥田くんってさ」
「はい」
「音楽何聴くー?」
「音楽?」
「J-pop、ロック、パンク、邦楽ー洋楽ーとかジャンルだけでも」
「んん〜…。邦楽で、ジャンルはわかんないけど
うん(アーティスト名)とかIMI(アイ エム ワン)とかHouse of owlとか」
「!おぉ!マジ!?」
「ん?うん」
「おぉ〜!幅広いね?」
「そう、なのかな?」
「うん(アーティスト)は新進気鋭の己の道を突き進むオシャレ系アーティストで
IMIは韓国系のアイドルで、House of owlはゴリゴリのバンドじゃん」
「そうなんだ?」
「知らずに聴いてるぅ〜」
「うん。好きな曲しか聴いてないんだよね」
「なるほどね。アーティストが好きでではないのね」
「申し訳ないけどね」
「まあまあまあ。え、他には他には?」
と盛り上がっている様子を遠目で見る雲善と名良。
「ま、ハーレムっていうか、女楽国(にょたくに)さんと琴道、イサさんと福留さんで二分されてるけど」
「たしかに」
雲善は糸と琴道が楽しそうに話す様子を見て、なにか心に変な感覚を覚えていた。
担任の先生が入ってきてヨルコが自分の席に戻る。
「あ、おはよう紺堂くん」
綺麗なピンク髪のツインテールを揺らして、人類の最高峰と思える可愛さの笑顔で挨拶するヨルコ。
「おぉ、おはようございます、イサさん」
「イサさん!おはようございます!」
振り向いてヨルコに元気良く挨拶をする雲善。
「おはよ、雲善くん」
「今日も可愛いですね!」
ド直球どストレート。
「あ、ありがとう?」
「受け入れるタイプね」
と呟く名良。
「貰えるものは貰うタイプ」
と笑うヨルコ。
「え、名良はイサさんのこと可愛いと思わんの?」
と言う雲善。口角を上げつつも「?」の表情で名良を見るヨルコ。
いや、可愛いとは思うけど…
それを口に出すというのは恥ずかしいというかなんというか、だったので
「んん〜…。んん〜…」
と腕を組んで考えるフリをし
「はい。では」
と担任の先生が朝のホームルームを開始したことで逃げ切った。朝のホームルームが終わり、授業が始まる。
1時間目の授業中、雲善は1時間目の授業から突っ伏していた。
琴道は頭の中で好きなアニメのシーンを流し、そこから連想される別のアニメのシーンに
そしてさらにそのアニメのシーンから連想される別のアニメのシーンにと
アニメシーンしりとり、通称アニメシーンりとり(通称はない)をして楽しんでいた。
糸は頭の中で好きなアーティストのライブに参戦しており
その後ろの嶺杏(れあ)はつまらなそうに授業を聞いていた。
名良もつまらなそうに授業を聞いているとヨルコにツンツンと肩を突かれる。
パッっとヨルコのほうを見るとヨルコが自分のスマホを軽く振っていた。
それを「スマホ見て」というサインと受け取り、ポケットからスマホを出し、太ももの部分、机の収納部分で
先生からは死角となって、隠れてスマホをいじれる場所で画面をつける。
するとそこにはヨルコからのLIMEのメッセージの通知が来ていた。
ヨルコ「さっきの答えは?」
そのメッセージの後に金髪の天使が「?」という表情をしているスタンプが送られていた。
さっきの答え?
と思う名良。ヨルコとのトーク欄でメッセージを打ち込む部分に
さっきのこ
答えってなに?と打ち込もうとして思い出す。
「え、名良はイサさんのこと可愛いと思わんの?」
という雲善の発言と、その後の「?」の表情で名良を見るヨルコ。
あぁ…もしかしてあのことか?
と思い、バツボタンを長押しして打ち込んだメッセージを消す。
しかしメッセージを消したからといってなんと返信していいのかは思い付いていない。
な、なんのこと?
とわざとらしく惚けてみる。その後に牛がとぼけた顔をして口笛を吹いているスタンプを送った。
ヨルコのスマホの画面が机の収納部分で光る。ヨルコがスマホを太ももの上、机の収納部分で
先生からは死角となって、隠れてスマホをいじれる場所でスマホの画面をつけ
ロックを解除する。名良からの返信を見て、口をむにゅむにゅと動かすヨルコ。
名良の机の収納部分が光り、名良はスマホを出し、ロックを解除する。
ヨルコ「言ったほうがいい?」
というメッセージの後に金髪の天使がニマニマとしているスタンプが送られていた。
名良は小悪魔のように笑うヨルコが容易に想像できた。
あの質問ですか?
と返信し、その後に牛が焦って汗を飛ばしているスタンプを送った。
ヨルコ「あの質問とは?」
金髪の天使が「?」という表情をしているスタンプ
名良「え?」
牛がとぼけた顔をして口笛を吹いているスタンプ
ヨルコ「え?」
金髪の天使が耳に手をあててよく聞こうとしているスタンプ
名良「ショートケーキ茶奢るんで勘弁してください」
牛が土下座をしているスタンプ
名良は白旗をあげた。名良はスマホを机の収納部分に入れると
横から視線を感じたので、ヨルコのほうを見る。するとやはりヨルコが名良のほうを見ており
目が合うとヨルコがペロッっと舌先を出し、小悪魔のように笑った。
ドキッっとした名良。名良自身の頭の中の小さな名良が頭を思い切り横からに振る。
そのドキッっとしたことを無かったことにするように
脳震盪が起こるんじゃないかというレベルで頭を振った。
実際の名良は頭を振っていないのにクラッっとくるような気がした。
1、2時間目の授業が終わり、3、4時間目の授業へ。
3、4時間目は他クラスと合同の体育。男子も女子も更衣室へ行って着替える。
「今日はバスケかぁ〜!」
腕をクロスするようにして左右の腕を伸ばしながら体育館へと歩く雲善。
「そうだね」
と言いながら雲善の横を歩く風善。
「兄弟対決が見れるわけか」
「ただ見てたいよね」
「ね。参加はしたくないよね」
と言う琴道と名良。しかし結局仲良いメンバーでチームを組むことになり
同じC組の雲善、琴道、名良は同じチームになった。
「っしゃー!弟には負けんぞ?」
「ま、現役のバスケ部員として兄ちゃんには負けるわけにはいかない」
ということでC組の雲善、琴道、名良のチーム対D組の風善のチームの試合が始まった。
女子陣は校庭でサッカーをすることに。男子と同じでチーム分け、そしてそのチーム毎に試合をする。
なので試合がないチームは必然的に見学となる。
日焼けを気にする女子は大概の場合は体育館や校舎の影の部分で過ごす。
しかしさらに良い方法がある。それが体育館に避難するという方法。
さらに体育館では学園のアイドル的存在、風善がバスケの試合をする。
体育館の2階の応援席のような部分に女子が集まる。
それは糸、嶺杏(れあ)、恋弁(れんか)、ヨルコも例外ではない。
「お。始まった」
ジャンプボール。中央で背の高さ、顔が同じ雲善と風善が対峙する。
ほぼ同じタイミングでジャンプをしたが、なんとジャンプ力はほんの少しだけ雲善のほうが上だった。
「やりぃ〜」
弾じかれたボールが収まったのは琴道の手の中。すぐに名良にパスする。名良は少しだけドリブルしてみた。
琴道も名良も運動、スポーツが苦手ということはない。人並みにできるほうではあるがあまり好きではない。
少しドリブルをした後、雲善にパスをした。
「ナイスぅ〜」
ボールを受け取った雲善。対峙するのは弟風善。
「お。兄弟対決」
応援席のようなところで糸が言う。
「バスケで対決するのいつ振りかな」
と恋弁が言う。
「おぉ。レアなんだ」
嶺杏(れあ)が興味あるのかないのか、わからない感じで言う。
「お?ジョーク?嶺杏だけにレアってか?」
糸が「このこのぉ〜。やりおるのぉ〜」と嶺杏の脇腹を肘でツンツンするが嶺杏は無視。
「お兄様たる威厳を見せないとな」
と言う雲善に後ろでは
「雲善に威厳?」
「ないよね」
と話す琴道と名良。
「バスケだけは負けらんないな」
と言う風善を前にドリブルを始める雲善。
右にドリブルを進めようと右足を出し、ボールも右方向に出そうとする。しかしそれはフェイント。
足を元の位置に戻しボールも自分の近くに引き戻す。風善はフェイントに合わせて動くが
フェイントで抜かれないように程よい距離を保っているので抜かれることはない。
「おぉ〜。さすがだな」
「こんなんで褒められても」
ダムダムというバスケットボールが弾む音がこだまする。雲善がゆっくり進む。風善もそれに合わせて進む。
無理にボールを取ろうとは試みない。しかし常時隙は窺っている。
雲善は無理に抜かずに名良にパスをした。しかし悪手。パスはカットされ相手ボールになった。
「ナイス」
「くそっ」
みんな一斉に反対に向かって走り出す。パスが回っていき、風善にボールが回ってきた。
先程とは逆。しかし雲善とは違い、体を斜めに
ボールを持っているほうをなるべく相手から遠いところにするように構えてドリブルをしている。
そのままスリーポイントラインの半円をなぞるようにドリブルしていきコートの角のほうに来た。
そこからゴール下のエリアに踏み込もうと試みる。しかし雲善もバスケ経験者。そう簡単には抜けはしない。
ロールターンをし、抜くと見せかけて仲間にパスをする風善。
するとサッカーのときの雲善のように、雲善の場合は「雲のように」だったが
風善は風のようにスルスルとゴールしたへと入っていき、ボールを持っている仲間がパスを出しやすい位置
でも近すぎるとパスの意味もなくなってくるので、ある程度の距離を取った位置に行く。
マークについていた雲善も風善も見失うほど風のように素早い。
風善は部活ではスモールフォワードと呼ばれるポジションを任されている。
このスモールフォアードと呼ばれるポジションでは
スリーポイントなど遠距離からのシュート能力も求められる。しかし風善はスリーポイントの精度は高くない。
風善はドライブ、簡単に言うとドリブルでゴールしたに切り込んでいくのが割と得意なので
仲間からパスをもらった瞬間、少しだけドリブルをして1歩、2歩
その2歩もしっかりとフェイントなどを入れて
3歩目にジャンプをし、ゴールの下を抜け、レイアップシュート。
ボールはゴールの後ろの四角い板のゴール付近の小さな四角のラインの右端にあたり
ゴールネットへ吸い込まれていった。
「ふーナイスぅ〜」
「さすがふー」
チームメイトとハイタッチをする風善。
「お。先制点はC組の風善くんチームですか」
糸が言う。
「ま、バスケだからね」
どこか誇らしげな恋弁。
「ほおぉ〜ん?」
名良がボールを持ち、コート外に出て、コート内の雲善にパスする。
「さすがは我が弟。やりおるな」
ドリブルをして歩いていく。雲善もサッカー部とはいえ運動部。
さらに小学校、中学校と授業でバスケを経験しているバスケ経験者。
それは生徒皆経験しているのだから、それで経験者とはいえないかもしれないが
それでも小学生の頃も中学生の頃も他人よりも上手くできた。
ドリブルで自分についていたマークを抜く。今度は風善がマークにつく。するとすかさず名良にパス。
ボールを受け取った名良も少しだけドリブルをして1人も抜かすことなく琴道にパスをする。
ボールを受け取った琴道はどうしたらいいかわからなかったがスッっと現れた雲善が
「琴道!」
と言ったので雲善にボールを投げる。雲善はジャンプしボールを受け取る。
左足を軸足に左足を動かすことなく右へ行こうというフェイントをし右足を出す。
そしてすぐ右足を引っ込め、ピポットを踏み左に回る。
ちなみにピポットとはボールを持っているプレイヤーが
軸足を固定して、もう片方の足を動かすことである。
バスケットボールではボールを抱えた状態では2歩しか進むことができない。
3歩進んだ時点でトラベリングという反則行為と見なされ、ボールが相手チームに渡る。
そのトラベリングを防ぐための対策、というか技術の1つがピポットである。
バスケマンガやアニメ、風善から聞かされていた知識を駆使して
ゴール下へドリブルしていき、レイアップシュート。
ボールはゴールの後ろの四角い板のゴール付近の小さな四角のラインの右端にあたり
ゴールのリングにあたった。
「あ」
嶺杏(れあ)はゴールに嫌われたと思った。
ちなみにバスケで「ゴールに嫌われる」とはリングに弾かれたり
リングをクルンと回り外れたりすることである。雲善もゴールに嫌われた思った。
ボールはリングの上を半回転し、ネットを潜り抜けた。
「っしゃ!」
入った。
「ナイス雲善!」
「ナイス!」
「サンキュ!」
と琴道、名良とハイタッチをする雲善。
「おぉ〜。さすが。運動神経はいいのね」
糸が感心する。
「サッカーだけじゃないんだね」
嶺杏(れあ)も多少興味が出てきて試合を見守る。味方からボールを受け取り風善がドリブルを進める。
今までのゆっくりと全体を見てーというドリブルではなく一気にギアを上げた。
右に行く動線でドリブルをしていき、ロールターンをして左に回り、まずは1人抜く。
右手でドリブルしているボールを取ろうとしてくる相手を
背中側で右手から左手に受け渡すことで華麗に避ける。2人目を抜く。
「名良!琴道!」
と言う雲善。雲善、琴道、名良。気合いを入れる。風善はボールを持って右にボールを持った手を出す。
琴道が右に動くのを見て、ボールを持った手を引っ込め左に1歩進む。
琴道を抜いた。お次は名良。琴道と同じように今度は左にボールを持った手を出す。
名良が食いついたので、ボールを持った手を引っ込め右に1歩進む。
名良を抜いた。最後は兄、雲善。しかしもう歩くことはできない。
なのでジャンプしてシュートするしかない。その場で飛ぶか、前に進むようにジャンプするか。
しかし、琴道、名良を勢いを殺すことなく、流れるように抜いたので
その勢いのまま前に進むようにジャンプした。雲善もジャンプする。
風善はダブルクラッチという空中でフェイントをする技をした。
雲善は空中で翻弄され、風善はボールを放った。ボールはレイアップシュートのように
ゴールの後ろの四角い板のゴール付近の小さな四角のラインの右端にあたり
ザボッっとネットに吸い込まれていった。
「ナイスふー!」
「さすが!このイケメンが!」
仲間から絶賛される。
「いるよなぁ〜。体育で圧倒的実力出してくるやつ」
つまらなそうな雲善。
「ヤバ!今の何!?」
興奮する糸。
「たしかにヤバいね」
嶺杏も珍しく目を丸くして驚いていた。
「すごーい」
ヨルコも手を叩いて喜んでいた。他の応援席にいた女子もキャーキャー言って盛り上がっていた。
「さすが」
恋弁(れんか)だけはどこか誇らしげだった。
その後も風善の活躍、そしてアシストにより風善率いるC組のチームが勝利を収めた。