少しだけ寒いなと思い、薄らと目を開けた。ぼやける視界の中にベランダの窓が少し開いていて、そこから入ってくる風だと気付く。
適当に着たのは彼のパーカーだった。鼻の奥をくすぐる、あの独特の匂い。
「ボビー」
「すまん、起こしたか?」
「いや、ちょうど目が覚めたとこだった」
「そうか」
ボビーは体を重ねた後、よくこうやってベランダで煙草を吸っている。いつもは換気扇の下だったりするのだが、セックスのあとは必ずと言っていいほどベランダにいる。
「てかそれ俺の服やん」
「あー、寒くて借りた。ダメだった?」
「良いけど……それにもコレの匂い染み付いてんぞ?大丈夫か?」
大丈夫か?と聞いてくるボビーに優しさを感じた。
俺は煙草を吸わない人間だからだろう。気遣いもできるのかぁと思いながら、ふっと笑う。
「なんだろ、慣れたかも」
「ほんまにー?」
「わかんね。直接はどうだ、ろ……」
そこまで言って唇が重なった。
服の匂いとは違う、濃い煙草の匂い。それがボビーの舌にまとわりつき、俺の舌に絡めてくる。
逃げようと思うのに、俺の頭をがっちりと押さえて逃げられないようにしている。
濃い煙と彼のキスと舌とで、頭がぼんやりとしてくる。精を吐き出したものがまた熱くなってくる気がした。
やっと離れると、俺は少し涙目でボビーを睨んだ。
「こんなとこで盛んじゃねえっての……」
「いやー、すまんすまん。慣れたとか言うからさ」
「……どーすんの、これ」
ボビーの手を自分のモノへと持ってくる。
にやりと笑うと「続き、したげる」と言って手を引いてきた。
またセックスが終わったら、彼はここで煙草を吸うのだろう。
そしてまたあの光景を思い出してしまうのだろう。
そしてきっとまた、体を熱くさせて彼を求めてしまうのだろう。
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