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結奈side

遥が早退した、その日の夜。彼女から電話があった。

「…遥?どうしたの?」

そう問いかけても遥は黙ったまま、時折鼻を啜る音が聞こえるばかりだった。

何かあった?

病院行ったの?

どっか体調悪い?

ビデオ通話にしようか?

何を聞いても、何も返ってこない。

「はる」

「私、死ぬんだって」

「え?」

「余命、1年なんだって」

余命…?

理解するまでに時間を掛けた。

正確には、掛けた気がした。

ガツンと誰かに頭を殴られた気がして、正直その時の記憶は朧気で。

「、嘘だ、だって、ただの貧血なんじゃ、、」

「…それだけ。おやすみ」

「ちょっと、遥、」

無機質な機械音が響く。

その後何度か掛け直したり何通もメッセージを送ったけれど、電話に出ないどころか既読すらも付かなかった。


次の日の朝。

朝起きて1番に、遥とのトークルームを開く。

もしかしたらなにかの悪い夢で、私が送った内容も通話履歴も何も無いんじゃないか、なんてありもしない希望を持って。

けれど、そんな希望はいとも容易く壊れてゆく。

メッセージもたった数十秒の通話履歴も、昨日のまま何も変わらない。

揺るぎない事実を突きつけられた朝だった。

遥はその日、学校を休んだ。

理由を知らないクラスメイトはあっけらかんとしていて、それが余計に悲しみを誘う。

おはよ、どう?体調

気休めに送ったLINEが何も意味をなさない事はよく分かっている。

思わず携帯を握る手に力がこもる。

こんなの、悪夢に決まってる。




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