コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『愛してる』の言葉が欲しかった。
『好き』の2文字でも構わないと思っていた。
けれども、どう足掻こうが、その言葉は俺には向けられなかった。
だったら、もういっそ…
壊れてしまった方が良いのではないのだろうか?
…なんて。「馬鹿だなぁ。俺は」
涙が滴る。
頰をつたって行くその涙は、自らの手にのせ制止する。
向けられなかった訳じゃない。向けることが出来なかったんだ。
………俺たちは、同性愛という偏見に塗れた恋路を辿っていたのだから。
「2組の〇〇さん可愛くない⁈」
「…あ〜、な」
彼が可愛いという相手は、女子生徒の一人。
嗚呼、やはり異性なのか。 お前の恋愛対象となる人物は。
「Broooockお前食いながら喋んなよw」
「あはは〜wごめ〜んw」
「…ぁ、そういやなんだけどさ〜…」
「え〜?wでも………ーーーw」
「いや、そこは〜〜〜…wーー〜〜〜…〜w」
むねが、苦しかった。
苦しみは、帰路についてもなお続いた。
「………」
プルルルル…と、着信音が鳴った。
「ズビ、…きりやん…?」
電話の要件は、Broooockに関することだった。
「…で、何なのお前。何言いたいんだよ」
「だーかーら‼︎‼︎早くBroooockに告れっつってんだよ‼︎‼︎」
「……………は」
なんで
なんでバレてんだ?
誰にも、言ったことなかったのに。
なんで
「きりやん様の洞察力とNakamuの推察力舐めんなよ‼︎」
「………」
「分かったな‼︎」
プツリと電話は切られた。
既に壊れてしまいそうになっている俺の心には、とてつもない重荷が乗ったような心地だった。
「…いやだよ。そんなの」
…適度な距離感で
適度な時間だけ会って、話して
適度に、適度に。
嫌われないように、好かれるように…
………『友達』、として………………。
「だからずぅっと、友達のままなんだよね」
…壊れてしまう前に伝えとけばよかったなぁ、なんて思っても
壊れてからは遅いんだよな。
もう、
もう…、
もう…ッ、俺は…
2度と、Broooockと『友達』になれないんだろうなと…
そう、悟った。
「ごめんな、Broooock。こんな終わり方で」
「え〜?wなにが?」
「…や、何でもないよ」
伝えた。
もう終わるって、伝えたから。
終わっても…良いよな…?
「好きになって、ごめんね」
なんて、ありがちなセリフを口にして。
終わろうじゃないか。
この一生を。
この恋を。
全て、終わらしてしまおうじゃないか。
…俺の手が、背丈の3分の2程の鉄のフェンスに触れた。
俺の体が、そのフェンスを超えて、屋上の端の端に追い出された。
「ッスマさん⁈」
Broooockが、此方へと駆け寄ってくる。
はは、と乾いた笑いが俺の口から溢れた。
「ばいばい、俺の最愛の人」
なんてカッコつけて。死ねたらいいな。なんて思って宙を舞う。
綺麗な青空。Broooockの瞳みたいだ。
「大好きだったのになぁ」
…ガクンと身体が静止した。
「…なんで」
Broooockが、俺の腕を掴んでいた。
「なんでって……ッ大事な人が死のうとしてるの見て見ぬ振りするとか…できる訳ないでしょ‼︎」
真剣な顔。そんな真剣な顔…初めて見た。
かっこいいなぁ。
結局俺は、助けられるんだ。
「この気持ちが終止符を求めてるだけだよ」
「気持ちのせいで死んじゃうの?」
「そうだよ」
「…そっか」
俺の頬には、既に涙の跡がついていた。
「…終わらせてあげようか?」
Broooockが、俺の涙の跡を撫でてそう言った。
「死なせてくれる?」
「死なせる訳ないじゃん」
「大好きだよ。スマイル」
…ずっと欲しかった言葉。
「…別に、嘘つかなくていいけど」
「嘘じゃないよ」
「…俺、もうお前のこと好きじゃねぇし」
「それこそ嘘でしょ。意地っ張りだなぁw」
「そんな泣いちゃってるくせに。大好きなんでしょ?僕のこと」
「…ッ………‼︎」
涙の跡を沿うように、涙がするすると溢れでる。
…あ〜あ。
俺って本当に
「馬鹿だなぁ…っ」
「可愛いね。スマさんは」
「は?可愛くねぇし」
「ふふ。耳真っ赤なのにそんなこと言うんだwかわい〜w」
「…るせ」
馬鹿だなぁ、俺は。本当に。
偏見に塗れた世界でも、救いの手はあるって言うのに。
信じないで勝手に壊れて。
勝手に、終わろうとして。
「好きだよ」
彼の紡ぐこの言葉は、俺の、俺だけの…宝物。
彼が見せるその言葉も、身体も、顔も、熱も。
全部全部ぜぇんぶ………
涙の果てに、俺だけのモノになったんだ。
「愛してね?最後の最後に尽きるまで。」