テラーノベル
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桜の花びらが地面に着くたびに、涙が零れる。
色鮮やかな桃色で光に反射する度に儚げな雰囲気を浮かべる。
桜とは、本当に美しくて儚い。
そして…桜と同じく、美しくて儚い人がいた。
その人は川上さんと言い、鮮やかなピンク色の看守服を着ていたノイン刑務所の看守長だ。
まるで、俺が触れただけで、消えてしまうような、そんな気がした。
苗字しか聞いたことがないが、名前もきっと華やかに違いない。
だが、川上さんは悩みを持っていた。
俺は救いたかった。それだけだった。水底に沈む前に、手を差し伸べたかっただけ。
俺は日の光になりたかった。あの人を照らせる様に。
桜だって、暗闇に居ては目立たない。日の光で照らされるからこそ、目立ち、美しいオーラを放つ。
暗いままは嫌だったんだ。
でも、川上さんは、静かに、水底に沈んでいった。水面に浮く間もなく。
暗闇に迷い込んだ。静寂に包まれた。
桜の花弁は、いつ散るかわからない。だから、照らし合わせたくなかった。さようならも言えずに、急に消えて行っちゃう気がして。
でも、現実は簡単には行かないようだ。さようならも言えないまま散って行った。
今…俺が見ている、桜のように。
この桜の花びらは、花筏になる間もなく、花びらはすぐに水底に沈んでいってしまうようだ。
まるで、あの人みたいに。
川上さんに最後に会った日。まるで、眠り姫のように美しかった。
闇に沈む前に、もっと照らせていれば、何か変わったのかな。
そう言いながら、桜の花びらが舞うのと同時に、俺は大粒の涙を流した。
ーFinー
コメント
4件
川上さん…どうしてあんなことを……中島さん…😢
川上さあああん!!なかじまさああん、!