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───痛い。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
全身が『あれ』に包まれていると思うと気持ち悪さで頭が可笑しくなりそうだ
そしてそれ以上に
(痛い痛い痛い痛い!!!!)
あの男に切られた断面が焼けるように痛い
そして全身の皮膚が『あれ』に触れているからだろうか、
溶かされるような、熱されるような、削られるような痛みに悶える事しか出来ない
そして息も出来ないため既に酸欠状態である
それなのに
「ハンスっ!はんすっ!! 」
残り少ない酸素を無駄に吐き出す
助けた筈の男に助けを請う姿は、普段の冷静な彼女からは想像出来ないほど 無様なものであった
(死にたくない…しにたくない
……死にたくない!!! )
普通の人間なら既に死を乞うであろう激痛に対し、彼女は未だ生きることを望んでいた
共に何年も死線をくぐり抜け、酸いも甘いも噛み分けてきた彼と…
都市に絶望した自分に生きる目的をくれた彼とこのような別れをしたことが、感謝の一つも言えなかったことが、この激痛と同じほど辛かったのだ
(生きたい… いきたい)
そう思う彼女の意識は、無情にも酸欠によって薄れていく
───はずが
(?!
何か…あたまに……はぃっ…て)
手折れた翼の…L社の跡地へと向かう
周りの血に肉に煙は時間によって腐り、薄れている
「………」
L社の元職員は殆どが裏路地へと追いやられた為、驚く程人は居なかった
護身用の処刑弾は必要無いだろうが、一応構えておく
認知フィルターを付けている為、見る物全てが簡略化されている
既に幻想体を使って検証は行った為心配は不要だろうが、L社の特異点を直接視認する事だけは避けなければ
「……………」
頭の襲撃によって失った多数の研究員、そしてゲブラーを思い出す
(……カルメン)
都市の病を治す
その為には………
「………?」
多少の丘を乗り越え、その下を見下ろせば…
「人間…なのか?」
周りに『CENSDRED』と表示されている物が点々と落ちている
幻想体ですら多少チープな見た目になるだけだが、ここまで規制されている物は初めてだ
そしてその中心に倒れている少女
(…あれがL社の特異点か)
これから翼の席に座る予定の為自分も特異点についての知識は誰よりもある…が、煙の根源なんてマシなものではないだろう
そう思考する間にも、規制された物が少女の中へ入ってゆく
「……どうしたものか」
正直近寄りも視界に入れたくもないが、頭の襲撃によってゲブラーという最高戦力を失ってしまった手前移動させる事は難しいだろう
少し考えた末、処刑弾を向ける
旧L社の特異点
かなり貴重な物で個人的に興味もあるが、少なくとも光の種シナリオには使えないだろう
そうして拳銃に指を掛けた…所で少女に動きが見られた
「………ぅ……っ…う……?!う”え”ぇ …………?!?!
はぁっはぁ”っはっ…おぇ”ぇ……」
息を吸いたいのか 先程入ってきた物を吐き出したいのか分からず、
苦しそうに悶えている
ただ胃の中に何も入っていないのか、胃液しか出てこない
「………」
顔をしかめてしまう
(特異点はあの『CENSDRED』と表示された物だろうが…あの少女は関係ないのか?
…いや、関係ないことだ
…今楽にしてやろう)
そうしていると少女は此方に気付いたようで、鋭い視線を向ける
…自分はこの眼を知っていた
あの死闘の中、最後の最期まで立ち向かい、切り裂き、調律者と相打ちにまで持って行った彼女と似た物を感じたのだ
「勿体ないな」
そう言い拳銃を構えたままゆっくりと降りる
そうして数メートル程離れた場所から問う
「……初めまして。俺の名前は…そうだな、Aだ
…お前は何なのかな?」
───生きていた
全身が未だに痛いが、それでも生きていたのだ
それだけで十分だろう
頭ではそう思いつつも、肉体はあの状況を再現するように震え、嘔吐を繰り返す
そうして男が…白衣を着た男が拳銃を向け、こちらへ歩んでくる
(……………なに?)
何か男が話している
(…しにたくない)
そう思うと同時、体がゆっくりと起き上がる
…起き上がる?
記憶では私の下半身は…
何も分からないが、目の前の男を睨み続ける
「…あー…もう一度言うぞ
俺はA、お前は何なんだ?」
「……………?意味が─ 」
男の拳銃を握る力が強くなる
今の私では一発で……
両手を上へ上げ、答える
「スミレ。 元■■■事務所所属
…色々あって煙の根源に飲み込まれて…目が覚めたらここ。」
「………」
男が考える素振りを見せる
…今の内にその拳銃を奪って……
(…いや、無理だ)
正直立つだけでも精一杯な為、今はまだ手を上げて質問に答える事しか出来ない
「………そうだな
お前、俺の会社で働いてくれないか?」
「……は?」