注意
キャラ崩壊、半学パロ、kgri、hsrbさんも後半登場、誤字脱字、晒しなどはお控えください。
何でも許せる方向けです。メモから引っ張ってきたので変な所でおわります。長いです。
駅の改札が開く。雪崩のように進む人は一か所に集まり、三列になって電車に乗り込む。駅のホームでスマホを見ながら下校する為の電車を待っていた伊波は、アナウンスが流れるとその場から立ち、抱えていたリュックを背負い直した。
電車に乗り込む時、ふと黒い人影をみた気がした。そりゃ、駅なのだから人は沢山いるのが当たり前だ。けれど黒い人影はこちらを見ていたような気がしたのだ。
伊波は不審に思いながらも電車にのって席に座った。すると1幅開けて隣に同年代くらいの青年がつり革を持たず立ち止まった。両手はパーカーのポケットに入れてフードを深く被っている。そこそこ揺れる電車に左右されることなく青年はじっと立っていた。伊波は珍しい人も居るもんだと、何処か感心しリュックから読みかけの小説を手に取った。読み進めている途中、青年から視線を感じた。ぱっと顔を上げると視線は消える。まるで元から誰も見てなかったみたいに。それでもまた小説に戻れば青年はこちらをじっと見ている気がしてならない。いや、確実にこっちを見ている。フードから隠れた緑の瞳をジロリとこちらに向けている。伊波は不気味に思ったが、こういうのは無視をするのが一番良いと聞いたことがある。その視線を頭から無くすように小説に没頭した。
気が付けば、目的の駅を通り過ぎてしまっていた。伊波はハッとして一つ後の駅で降りる。どうしたもんかとホームから外を見れば、空はもう茜色を少しだけ残して深い青色になっていた。取り敢えず、戻る電車に乗ろうと時間表を確認しようとした時、コトンと足音が鳴る。
ホームには見た限り誰も居なかった。だとすると後ろに人がいる。古びたホームで少し怖くなって伊波は勢いよく振り返った。しかし、そこには誰もおらず、電車もドアが閉まりごうごうと音を立てて走り去っていった。空耳かと首を傾げる。ふと、隣を見るとフードの青年が立っていた。声を上げずに驚く、いや人が一人居るだけだ。なにも怖がる事はない、きっと彼はこの駅に降りようとしていただけなのだ。そう唱えて、ふぅとため息を吐く。兎に角、時間表だ、最悪スマホで検索しよう。そう伊波は足を進めた。
コトン、コトンとホームの階段を降りる。ホームは端の方が黒くカビていてピトンと水滴が垂れる。まるでホラーゲームの世界に来たみたいだ。伊波はぶるりと体を震わせた。目線だけ後ろに向ける、背後にはフードの青年がポケットに両手を入れたまま階段を降りていた。
一定間隔を開けて伊波の後ろをずっと歩いているのだが、まぁいつしかいなくなるだろうと思っていた。階段を降りた先は薄暗く、蛍光灯がバチバチと音を鳴らしてチカチカと眩く光っている。駅員さんに電車ついて聞こうかと周りを見渡したが、誰も居ない。少し気味が悪かった、何とも言えない恐怖が伊波に纏わりつく。足を止めて立ちすくんでいると、蛍光灯の音よりもより一層大きくバチバチッと音が鳴った。
振り返ると、フードの青年の手にはスタンガンが握られていた。
「ひっ…!」
青年は伊波に見られたと気付くとスタンガンを持つ手とは逆の腕を伊波に伸ばした。伊波は顔を青くして、逃げようと足を動かすがそれよりも先に青年に腕を掴まれる。
「離せっ! 金なんて持ってないぞっ!」
必死に腕から逃げようとする伊波に青年はオロオロとし始めた。
「ちゃっ…違う!僕は別にそんなんじゃ……。」
「え?なに!? フードで聞こえない!怖いよ、離してっ!」
「あっ、フードっ…ちょっと待って…。」
そう言うと青年はフードを取る。綺麗な白髪が顔を出し、数人しか生まれないとされるオッドアイを持つ彼は一目見れば忘れられないような顔をしていた。ああ、そうだ見覚えがある。
「え…お前、クラス同じの…不登校の子?」
「っ! 覚えててくれてるん!?」
そう言うと青年は身を乗り出し、きらきらとした目で伊波を見つめた。存在は思い出せても入学式以降から顔を出していない彼の名前をなかなか思い出せず、小骨が喉に引っ掛かったような感覚になる。
「やっぱ伊波って優しいんやな……。」
そうボソリと呟いた彼の頬はほのかにピンク色で、ニタリと口元に手を当て笑った。伊波は何のこっちゃと分からないまま彼に対して苦笑いを送る。
「こんな僕も覚えてて…まだ2回しか話してないのに…。」
2回もあったっけ。彼とは入学式以降会っていないはず、と口に言いかけた言葉を飲み込む。彼はすっかり心酔していて上の空だった。けれども手首を掴む手は一向に弱まらず。ギリ…ともっと強く握ると伊波を押し倒した。
「ちょっ…!なにすんのっ…。」
「ああ、怖がらんでいいよ。ちょっと僕の家への道知られたくないだけやからさ。」
「何言って……っやめてよ!ほんとにお願い、どうしちゃったの?そんな人じゃなかったでしょ?」
怯えた目でそう問いかけると青年は複雑ような顔をして、スタンガンのスイッチを押す。
「僕の事何も知らんクセに…。」
冷めきった目で伊波を見つめる。伊波はゾクリと背筋が震えて、発言を後悔する。青年はバチバチと音を立てるスタンガンを伊波の首筋へゆっくりと近づけていく。やめてと懇願する伊波に青年はただ大丈夫と言うだけでやめる気は一切ないようだ。
「大丈夫、ちょっとバチってなるだけやから、静電気みたいなもん。」
「暴れんとって、狙った所に当てれへんから…」
「あ、そうや名前、久しぶりやから忘れてるんちゃう?」
青年は既の所で腕を止め優しく微笑む。
「叢雲カゲツ…覚えててくれとった?」
そう言うとバチリッと音が鳴る。一気に全身から力が抜けて目の前が真っ暗になった。
目が覚めると、ベッドの上に寝転がされていた。知らない天井を見て、気を失う前の事を思い出す。ああ、そうだ、連れ去られたのだと思い出し、伊波はがばっと起き上がった。ふと左手に吐息がかかる。
「んんっ…いなみおきたぁ?」
目線を向けるとカゲツが目を擦りながらむくりと顔を上げた。伊波はひっと悲鳴をあげて後退する、がすぐにベッド端について思ったより距離は開かなかった。
「あっ、怖がらんといて…別に酷い事とかせんし…。」
そう言いながらカゲツはベッドに片膝を置いて、自分もベッドの上へあがってくる。起き上がった伊波を戻すように肩に両手を置いて押す。何とか持ち堪えようとするとバタバタ動かす足を引っ張られストンと枕に頭を打った。
「僕、伊波の事好きやった、前からずっと。…どうやったら伊波も僕の事好きなってくれるか……聞いたんやけど。」
誰に、と聞く前にカゲツは伊波に覆いかぶさるようにして、ちゅと音を立てて口を塞ぐ。すぐに離れて、息を吸うとまた口を塞いだ。今度は吸い付くように塞がれ、硬く閉じた口をこじ開けるように舌を伸ばされる。顔をそらしても頬に手を添えられ、足を動かそうもカゲツの足でつま先を踏まれた。
「…ごめん、くちあけて。」
舌をしまわず喋ったからか、舌っ足らずの声でそう言われる。瞬間、伊波はぶんぶんと首を横に振った。カゲツは困ったように眉を顰め、頬に添えていた両手のうち片手の親指を動かし、口元をなぞり始めた。徐々に親指は伊波の口を引っ張り、少し隙間が空くともう片方の親指を口に入れる。そのまま閉じないように親指をつっかえ棒にして、できた隙間に舌を滑りこませる。
「んんっ!」
舌が入ってきた瞬間、ぞわりと鳥肌がたつ。必死に暴れるが、手は握りしめられ足は動かした方から太ももに足を置かれる。動けないと分かっていても、必死に手や足をバタつかせようと脳信号を送る。それもだんだん曖昧になってきて、ぼやつく視界に目に涙をためているのだと理解する。くちゃくちゃとなる音だけが脳を支配して、残るのは息苦しさだけだった。
「ぷはっ…」
口を離した瞬間、伊波は咳込み必死に酸素を体内にいれる。口元にベタりと張り付く唾液を腕でぬぐって、カゲツは一回だけ腕の中で咳をした。
咳き込んでいくうちにぼたぼたと目から涙が溢れていく、咳に嗚咽も混じり始めて解放された手で顔を覆う。カゲツは伊波の背中に腕を回して上半身だけ抱き上げる。
「伊波…僕の事すき?」
「…ずきじゃないっ。」
背中に回していた手をぎゅうと爪を立ててシャツを掴む。布越しに爪が食い入りそうな程に握りしめて、奥歯を噛んだ。
「僕は…伊波の事好きだよ。」
「……オレはっ゙すきじゃないの゙っ!…すきじゃないっ…すきじゃっ゙…。」
カゲツの背中に回した手が怒りを込めて強く背中を引っ掻く。わざと爪を立て続けて、カゲツの服の胸元に濡れたシミをつくった。嗚咽を吐き出し続けていると、黙っていたカゲツの手は、ベッドサイドテーブルへと伸びる。前も聞いたようなバチリと静電気に似た音がやけに耳に響いた。
「ウソつき。」
玄関の扉を開けると、開口一番に睨まれながらそう言われる。きょとんとした顔でなんの事だと聞き返すと明らかに頬を膨らませ、不機嫌になる。
「好きって、どんぐらいか伝われば相手も好きなってくれるって。どんな伝え方もあるか教えてもらったけど…逆にきらわれた……。」
ああなんだ、その事か。くいと体を傾けて、彼の奥にあるベッドに目線を持っていけば、彼と同年代くらいの男子が横になっている。
「…ああ、その事ですか。聞き覚えのある事を適当に言っただけなんで、嫌われてしまう可能性もありますよ。」
「ウソつき!!」
「言い忘れていただけです。」
ウソつきと連呼するカゲツを過って奥の部屋へと足を進める。ベッドに横たわる男子に近づけば、カゲツはピクリと肩をあげて気まずそうな反応をした。
ベッドサイドテーブルにはスタンガンが置かれていて、物騒だなと思いつつ棚にしまう。
「こういうのは、ちゃんと隠しておくものですよ。」
「…ん。」
なんで所持しているのか、なぜ男子がベッドで寝ているのか。気になる点はあれど、どれも聞きたい事ではない。なので自分は聞かない。カゲツはまだ若いから、色んな事を経験するといい。人一人監禁してしまうのも、若気の至りというやつだ。
「…ちゅーした後に好きって言ったら、オレは好きじゃないって言われた…。」
「だからスタンガンで眠らしたんですか?」
カゲツの言葉を背中で聞きながら、そっと眠る男子のうなじの髪をめくる。白い首筋には、目立つ二つの赤い点があり焦げているようで、少々痛々しかった。
「…それにしても強く押し当て過ぎですよ、痛かったでしょうに。」
そう優しくさすって呟くと、カゲツは俯いて自身の腕を強く掴んでいた。
眠る顔を見てまだ当分起きそうにないなと思い、カゲツに夕飯を食べようと声を掛けた。
カップに入る麺が湯気を出す、ふーと息をかけて冷ますとちゅるちゅると啜り始めた。
「どのぐらい好きか受け止めるのに、心の準備ってのがあるんです。」
「………聞いとらんぞ。」
「言い忘れてました。」
奇っ怪そうな顔をするカゲツを無視して汁を飲む。汁は一口だけ飲むのが好きだ。麺を途中で噛み切る。少し咀嚼してこくんと飲み込んだ。
「いっぱいアタックして、徐々に伝えていけばいいんです。ちゅーは最後から2番目かな。」
「…一番最後は何なん?」
「…………またちゅーができたら教えてあげる。」
ズッと最後の麺を口に入れる。汁だけ残ったカップをカゲツは持ち上げて、こくこくと飲み干していく。カップを机に置くとカゲツは俯いたまま星導に聞いた。
「星導は、僕の事好き?」
「好きですよ。」
「…どんくらい?」
そう言うと、星導は特に悩む素振りも見せず微笑み、ちょんとカゲツの鼻に人差し指を置いた。
「食べちゃいたいくらいです。」
「………例えがよぉ分からん。」
星導は肩を弾ませて、より一層口角をあげた。
ゴソゴソとシーツの擦れる音が鳴る。目線を向けると、気だるそうに伊波が起き上がっていた。虚ろな目と目線があう。
「………増えてる…。」
伊波はそう消え入りそうな声で呟いた。
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