コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
注意⚠️
誘拐1の続き、キャラ崩壊、kgri、誤字脱字、嘔吐表現、モブが喋る、何でも許せる方向け。またもや長いです。 最後の方ちょっと表現が汚い。
誘拐された。華麗な、とは言えない手口。しかし、絶対に抵抗を許さない手口ではあった。
スタンガンで眠らせれた後、気が付けば誘拐犯の恐らく自宅のベッドで寝かされていた。何が何だか分からないままでいると、急にキスをされたのだ、しかも舌入れる過激な方。余計混乱した、しかもこっちはファーストキスだったんだ、それを同年代男子誘拐犯に奪われたのだと言っていい。泣いた。それはもういたいけな乙女のように。…ちょっと嘘。
しかし、そんな状態で誘拐犯の事を好きかと聞かれれば、いいえと答えるのは当たり前で、けれどそれは誘拐犯にとっては気に入らない答えだったようだ。バチンッという音と共に再びスタンガンを当てられた。
どのくらい眠っていたのか、目が覚めると、誘拐犯と知らない男性がカップ麺を啜っていた。
「いなみ…おはよう。」
「ああ、君が伊波くんですか。こんばんわ、俺は星導ショウと言います。カゲツの親戚だと思ってもらって構わないですよ。」
オレを誘拐した誘拐犯もとい叢雲カゲツは、何処か気まずそうで、挨拶を返さない伊波に余計気まずさを感じてふいと顔を俯かせる。それに反し、紫髪の背の高い男性はニコニコと笑っている。というか、親戚ならば身内が誘拐を犯したとして、もっと慌てたり、警察を呼んだり、カゲツの年なら説教をしたりするではないか?
「………親戚ってマジ?」
「おや、鋭いですね。実は俺はカゲツとはなんの血の繋がりもない赤の他人なんです。ただ、両親がいないカゲツの為にちょっとした食料とお金をあげています。」
まぁ、この空間の異常さを抜きにしても、明らかに雰囲気が違うし、目も骨格も何もかも似ていないから、本来失礼だか他人を疑うのも無理はない。
「二人全然似てないし…髪とか……それ染めてんの?」
「地毛です。」
触ってみますか?と言い髪の束を差し出される。少し唖然として、その藤色に水色のメッシュが入った髪を触ってみた。指を滑らしてみたり、髪の束をくしゃっと広げてみたりする、光に当てるときらりと光った。確かにこの艶感は地毛か…。
そっと手を離すと、星導は首を傾げてニコッと微笑んだ。不思議な人だなと伊波は思う。何とも言えない瞳の色をしている、水色に黄色の光がさして、それを赤色が囲っていた。その目にじっと見つめられるのが、何だか落ち着かない。
「……なんで誘拐犯が目の前にいるのに何もしないんだ、とか思ってます?」
思った。数分前に。図星を突かれて素っ頓狂な声が出る。その様子を見て星導はさらに口角をあげる、髪を触らせる為に屈めていた腰をあげてトントンと叩き、背筋を伸ばす。
「俺、親バカなんです。カゲツが可愛くて、可愛くて仕方が無くて…」
「………やめてや。」
俯いていたカゲツが顔を上げると、頬が照れたのかちょっと赤く、それを見た星導は可愛いーっと言いぐりぐりと頭を撫でた。
一通り撫で終わった後、コホンっと咳をして切り替える。
「だから警察に突き出すなんて鬼のような真似出来ません。それが駄目な保護者のする事でもね。」
駄目な保護者、とはまさにこの人のように自分の子供の悪い所を叱れない大人の事を言うのだろう。ぴくぴくと痙攣する眉が、時折視界を狭ませる。
星導はさらに笑みを深めると、腰を上げてカゲツのカップこどゴミ袋に入れる。そのゴミ袋をくくって持つと、もう片方の手でトランクケースを持ち玄関に向かう。
「では、俺は仕事なんで帰りますね。……実は俺、ヒーローなんですよ。」
そう自慢げに鼻を鳴らしながら言う。けれど、今ここでヒーロー宣言をされても犯罪に加担している贔屓ヒーローという肩書がつく事になるが。星導はその事を知ってか知らずか、髪をたなびかせながら踵を返し、玄関の取っ手に手を掛ける。
「ああ、そうだ。伊波くん…」
「………ライでいいよ」
「おやそうですか?では、ライ。カゲツと仲良くしてあげてくださいね。」
そうパタリと扉が閉まり、部屋には時計の針が動く音だけ響く。
気まずい空気が一気に部屋を覆った。数分経つとカゲツがそっと距離を縮める、けれど伊波は同じくらい離れる。それに気付いたカゲツが心底傷付いたように顔を破綻させた。思い詰めたように、カゲツは下を向きカリカリと床を引っ掻き始めた。…出来れば向こうから話し掛けて欲しかったが、この空気をどうにかしてしまいたくて、絞り出すように口を開く。
「あの、さ…何でオレの事好きなの? 入学式以降会ってなくない?」
「………あったよ。僕が、学校休み始めて三日目くらいの時に……。」
約六ヶ月前の事である。どうりで覚えてない訳で、次々と記憶が更新されていく日々を過ごす伊波にとっては、その日の出来事はもう頭の片隅にでも追いやらてしまっている。フローリングの溝を重点的に引っ掛けるカゲツは、詰まりながらもポツポツと話し始めた。
「伊波が、プリント届けに来てくれてん。最近はまとめて学校から貰ってるから、もう話す機会なくて…寂しかった。」
そりゃ、毎回毎回プリントを届けていたら非効率だし…。
「…来てくれた時、学校に来た方がいいって…大人とおんなじ事言って、伊波も同じ人種なんだって思った…けど、その後連絡先教えてくれて、学校で嫌な事あったらここに言ったら良いって……。」
そうカゲツは自身のスマホのアプリを開いて見せる。そこにはセールスや星導の名前に混じって、ちゃんとアイコンの色が黄緑色の伊波ライと書かれたアカウントが登録されていた。頬に冷や汗が伝う。だって本当に忘れてたんだ。会話ログにはなんの記録もなく、ここで会話は行われていない。
「……初めになんて言えばいいか分からんくて、何も送れんかった。」
「…その、メール交換したので好きになったの?」
「いや…スーパーでも何回か見かけて、何買ったんか気になって見てみたら、僕も好きなお菓子買ってて…他にもレンタル店で僕も好きなアニメ借りとったし、買食いする時も僕もよく行く出店で買っとったし……。」
運命感じちゃったのだろうか。それ以降黙ってしまったカゲツは、床を引っ掻のをやめて、ほんのり赤くなった頬を膝に埋め、指をいじらしくもて遊ぶ。少しの間をおいて、きゅっと窄めた口を開いて 後…と付け足した。
「笑顔が好き…伊波の笑う顔が好き。」
コツンっと小石が頭に当たった感覚がした。先程のストーカー紛い、てかストーカーの台詞から一変し、王道の告白をされる。戸惑いを隠せず、へっと間抜けな声が漏れ出た。
「後、性格…明るくて好き。」
ポツポツ、ポツポツと次々に好きだ、好きだと囁いてくる。どうしたらいいのだろう、こういう時。素直に喜びたくとも、相手は激重誘拐犯だと、そう思うが、素直に嬉しいが勝ってくる。こうも真正面から偽りも無しに好意を伝えられると、だんだんと頬に熱が溜まる。
「それに…まつ毛長し、髪綺麗だし、声カッコいいし…。」
「す、ストップ! もういい!流石に恥ずいっ!」
「……そうなん?」
「うん……」
こてん、と首を傾げたカゲツは数分の間を持つと、ふっと微笑んだ。何笑ってんだ。と文句垂れてやろうと意気込むと、カゲツの腕が伸びる。
「顔も好き……でも、これはあんま良い台詞ではないんかな…。」
そう言ってさっと前髪を攫ってはサラサラと流す。意気込みなんて、風で飛ばされたように無くなって。白髮に覗く目が、こっちを見ているんだと、そう今更ながら思った。
「……起きて早々のベロチューより、こっちが先の方が良かった。」
「えあっ!? あ、あれはっ…えと…」
「でも、いいよ。カゲツって意外とイケメンだし。」
「いけ、いけぇ……?」
顔を赤くしたカゲツの離された指先を追うように、ぐいと顔を近づけてやる。うわと驚いてカゲツは後ろに手をついた。キスでもされるとでも思ったか、カゲツはきゅっと目を瞑る。そんな事、先に舌入れてきた奴にする訳ないだろと、ぎゅっと鼻を摘んでやった。フガッと鼻を鳴らす姿に思わず吹き出す。
「なんすんねんっ!」
「ブタみたい。」
「うっさい!」
いつの間にか誘拐犯と仲良く話している。でも、その誘拐犯は同級生で、ただちょっと義務教育を投げ出してしまっただけの子で。オレの事を大好きだと言う。こういうのストックホルム症候群と言うのだろうか。顔が良いなんて理由で無許可のベロチューを許して、性格が可愛いから監禁されるのを受け入れて始めて……。ほんとに良いのだろうか。 学校や親はどうなるんだ。カゲツ意外の同級生、友達…きっと今頃警察も動き出してる。
「……カゲツ、オレカゲツに捕まって欲しくないよ。せっかく友達になれたのに。」
「え、捕まらんよ。だってここがバレる訳ないやん。」
そう言ってのけるカゲツに、でもと言おうとした時だった。 ふと、部屋にインターホンの音が響いた。
ピンポーン。と2回程鳴った時、カゲツが立ち上がった。
「…伊波、部屋の隅にでも隠れといて。宅配便でも、見つかったら面倒やし。」
そういうとカゲツは玄関へ向かう。
ここで助かりたかったから、扉の向こうの人物に助けてと叫ぶのが妥当だ。けれど、もし扉の向こうにいるのが警察だったら…。何か、誰にも見つからず、こっそりと帰えしてくれる説得の文言はないかと探すが、今はベッドの下にでもタンスの中にでも隠れるのが優先だった。
扉の向こうのいるのが誰であろうと、カゲツにとってはどうでも良かった。だって、この場所がバレる訳ない。ただの決めつけではなくて、カゲツは証拠を残さなかった。ただそれだけだ。凶器のスタンガンはちゃんと持ち帰ったし、伊波の髪の毛1本すら現場に残さなかった。残るのは伊波が消えたという事実だけ。だから見つかる訳がない。
「…どなたですか?」
扉を開けると、そこにいたのは宅急便や警察では無く、ただの一般女性だった。そこそこの年で、胸元にスマホをぎゅうと両手で握りしめている。食いしばった口を開くと、静かに声をはっした。
「貴方…親御さんはいる?」
「……いいえ」
「そう、この家に他に人はいる?」
「…………居ないすけど。」
「 嘘を言いなさいッ!! 」
唾が飛ぶほど、女はそう怒鳴った。スマホを落として、カゲツの肩を掴む。バキンッと画面が割れる音が鳴ろうと女は止まらず、ここに自分の子供がいるのと叫んだ。
嘘だと思った。だって、カゲツは完璧な犯行をした。だからこの女の言っている事は嘘に違いない。さっきからゴチャゴチャ言っては肩を揺すって、しかし彼女の言うことは何も耳に入らない。だって、彼女はきっと伊波のストーカーだ。そんな奴の話は聞かない。きっと、伊波を四六時中追いかけているから場所がバレた。そして盗られたからこんなにも激怒している。全く持って腹が立った。
「ーーーッ!! ーーーッ!?」
もう完全に声を聞き取る事を放棄した耳は女の声を拾わず、肩に掛けれた腕を掴み、押し倒すと同時に片手でカッターを取り出し突き刺した。
喉をかっぴらくようにカッターが滑る。赤黒い飛沫をあげては壁に張り付いた。迷いはなかった、玄関に小さな水溜りが出来て、カゲツはトドメを刺そうと女に跨がる。そうするとトントンと部屋と玄関を区切る扉がノックされる。
「カゲツ?急に静かになったけど、何かあったの?」
「伊波、今来たらアカン。死体がっ…」
そう伝える前に、ゆっくり扉が開く。伊波は今の玄関の光景を見て目を見開いた。やってしまったと思った、きっとまた嫌われる。人殺しってマイナスイメージやもんな。恐る恐る伊波の顔を見ると、彼は力無く泣いていた。どうして、ストーカーの死にそんな絶望した顔して泣いているんだろう。…いや、だってそんな筈ない。嘘だ、嘘だ絶対。伊波。
「おかあさっ…」
その言葉の先を聞きたくなくて、走り出すと同時に伊波に飛び付いた。肺が地面に叩きつけられた事で声が止まる。きっと、自分は今酷い顔をしているのだろう。ゆっくりと頭を下ろしながら伊波の首筋に埋まる。
「……どこッ、ドコにもいかんでッ゙…お願い……。」
みっともなく泣いて、首筋を濡らす。弱々しく抱きつくと、嗚咽をはいた。お互い過呼吸になって、床に倒れて、水溜りは今も広がっている。あれじゃもう助からない。
「…っおぇ゙えッ…。」
ふと、肩に生ぬるい液がかかる。弾かれるように顔を上げると、伊波が吐いていた。続け様に床に液を広げる。
「うわっあ、いなみっ!しぬなぁ!!」
「…ん、ゆらっ、ゆらさないでっ…おぇ゙ッ…。」
まさに酷い有様だった。血に土砂物に涙でまみれた玄関で、お互い落ち着くまでそこにいた。
最後の胃酸を吐く。きっともう腹の中には何も残っていない。先程から背中にしがみついては、ジワジワと服を濡らし続けるカゲツになんて声を掛けたらいいか。ほんとに、本人にまず状況説明をして欲しかったが、今は何かと口の中が気持ち悪い。
「……カゲツ…水ちょうだい。口ゆすぐの。」
そういうと、名残惜しそうに腕が離れてカゲツは無言でキッチンへ向かう。ベタベタする自分の手の平を見て、洗ってしまおうと洗面台へ向けて立ち上がる。その時、風が吹いて伊波は気が付いた。玄関の扉が開いている。日の光が眩しくて、目を細めた。出ようと思えば、今簡単に外へ出れる。汚れてると言っても、公園にでも行けば水場があるし、汚たままだと警察に話す時信用されやすくなる。逃げるなら今だ。そう脳内で分かっていても、体は動かなかった。そのまま踵を返し、洗面台へ向かう。
誘拐されてもファーストキスを奪われても母親を殺されても、何故か大嫌いにはなれなかった。ストックホルム症候群とは心的外傷後ストレス障害とされているらしい。だとすれば、今の気持ちは正気度が飛んでいった末の好きなのだろうか。まぁ、でもそれでも構わないと思う。
「伊波、水…」
「オレ、カゲツの事好きだよ。」
俯いていた顔を上げる。カゲツは目を見開いて え。と呟いた。 好きになってしまえば、経緯とか理由などどうでもいいから、好きな人と共に過ごせる幸せを味わえるなら、潰される程の愛にとことん守られるのも悪くない。
おまけ
「伊波、ちゅーしていい?」
「口ゆすいだばっかだけど、いいの?」
「うん、 んむっ…酸っぱい…これが初恋の味か。」
「胃液の味だよ。」
次にキスする場所はきっと死体を破棄する山の中だろうな。