「湊さん…」
コインランドリーにシンが顔を出す。
「3週間ぶりだな…元気だったか?」
「この前はすみませんでした…すこ」
「いいって…謝らくちゃいけねーのは俺の方だから…悪かったな」
「あの…これ…」
そう言ってシンはカバンから取り出したチケットを差し出す。
「何これ?」
湊はチケットを受け取る。
「来週学校の文化祭があるんです。来てもらえませんか?」
「文化祭かー懐かしいな…」
「本当は当日まで内緒にしたかったんですけど…この前は文化祭で使う衣装の買い出しをしてたんです」
「だったら初めからそう言えば良かったじゃねーか。別に隠す事でもねーだろ。笑」
「でもこれだけは誤解しないでください……俺は湊さん以外の人と一緒に居ても全然嬉しくも楽しくもないです…」
シンの真剣な眼差しに
「悪かったよ…」
「文化祭。絶対来てくださいね」
「俺みたいなやつが行ったら目立つだろ…?」
少し考えこむとシンは
「確かに…」
「おぃっ!笑」
「可愛すぎて危険なんで、俺が護衛します」
シンは真面目な顔で答える。
「はっ?」
「湊さんには誰一人指一本触らせませんから!!」
あ…圧がすげぇ…
「そこまでされるとこぇーから行くのやめるわ…」
「大丈夫です!何かあっても俺が必ず守りますっ!」
「…シンちゃん…人の話をきちんと聞きなさいね…はぁ…」
「ダメですか?」
「めんどくせぇな…わかったよ」
「本当ですか!」
「でも護衛はいらないからな!」
「わかりました。笑」
「で、お前のクラスは何やるんだ?」
「当日まで秘密です…」
「秘密ね〜…」
「楽しみにしていて下さいね」
シンは満面の笑顔を浮かべる。
「はいはい…」
「懐かしいな〜」
シンに誘われた文化祭に来ていた。
ここは湊の母校でもあった。
「アキラさん!」
「おっ!明日香。何だその格好は?」「あれ?シンから聞いてないの?俺たちのクラス執事喫茶やんの」
「なんだそれ?」
「女子からの熱い要望。笑。特にシンの執事姿見てみたいって」
「シンもそんな格好してんのか?」
「シン目当ての女子が殺到して、あいつ教室から出られないから俺がアキラさん迎えにきたってわけ」
「あぁ…なるほどな…」
「アキラさん。気になる?」
「別に…」
「シンにアキラさん早く連れて来いって言われてるから、行くよ!」
「ちょっ…明日香ひっぱるなっ!」
シンの教室に着くとシンは目を輝かせ
「湊さん!来てくれたんですね!」
立ち上がる。
シンの執事姿はその種の表紙を飾りそうな程似合いすぎていた。
今まで幾度となく見てきたどの格好よりはるかにイケメン度を増している。
見慣れている筈の湊でさえ一瞬立ち止まって声を失う程に…
シンの視線が湊に向けられると、同時に 女子生徒の視線が湊に集まる。
湊は気恥ずかしくなって
「よっ… 」
控えめに手を上げる。
「こっち空いているんで」
シンは湊を誘導する。
席に着くと、湊はシンに顔を近づけ小声で
「やっぱり俺目立ってるんじゃ…」
「気にし過ぎですよ…」
「お前が近くにいると余計に目立つだろ…お前目当ての女子が待ってるから他行っていいぞ…」
「今から湊さん専属になりましたので」
シンは湊を見てにっこり笑う。
「頼んでねーって…」
湊は頭を抱える…
仕切りにこっちを見る女子生徒の視線が怖かった…
「明日香」
教室の入口に箱を抱えた男性が立っていた。
「柊くん!」
柊と呼ばれた男性は明日香の知り合いらしい。
「どうしたの?」
明日香が柊に聞く。
「孝之が今日使うお菓子お店に忘れたから届けに…」
抱えた箱には菓子が入っていた。
明日香はその箱を受け取ると、少し照れながら
「柊くんどう?似合ってる?」
柊の前で回ってみせた。
「うん。良く似合ってるよ」
「褒められた…」
柊の言葉に照れていた。
その様子を見ていたシンは湊に
「誰ですかね…?」
そう尋ねる。
「お前の担任の佐久間先生の甥っ子。駄菓子屋継いでるって聞いたけど…明日香と仲良いんだな…」
「…ふーん。英もあんな顔するんですね…」
そう言いながらシンは持ってきた飲み物を湊に差し出す。
そして、ポケットに手を入れると
「そうだ。これ…」
そう言って取り出した袋を机に置く。
「なにこれ…クッキー?」
「俺が作りました」
「お前が?」
「クラスで出してるお菓子はどれも市販のだから…湊さん甘いの苦手でしたよね」
「ああ」
「甘くないクッキー焼いてきました」
「お前は…」
シンの気遣いは嬉しかったが、忙しい中自分の為にそこまでしてくれる事が申し訳なかった。
「いらなかったですか…」
「そーじゃねーって…ありがとうな…」
そう言ってクッキーを一口食べる。
「どうですか?」
「美味いよ…」
少し照れながら湊は答える。
シンは湊の手に触れると小声で
「湊さん。一緒に抜け出しませんか…? 」
湊を誘う。
「えっ?」
「ずっと休憩なかったんで…」
シンは湊の手を掴んで立ち上がると
「行きましょう」
そう言って湊を引っ張る。
明日香の横を通り過ぎる際に
「休憩行ってくる…」
それだけ言って湊を連れて教室を出て行く。
生徒や来客で賑わう廊下をすり抜けるようにシンは湊を連れて歩いて行く。
人が少なくなった場所まで行くと
「ちょ…シン!いいかげん手を離せっ!」
「……」
「おいっ!」
「湊さんこっち…」
シンに連れて行かれた先は立入禁止の誰もいない教室だった…。
【おまけ シン&明日香 編】
「柊さんの前で猫被ってるけど、お前猫みたく可愛くねーからな」
「はぁあ?シンだってアキラさんの前で犬みたく尻尾振ってるけど、犬みたく可愛くないかんな!」
「猫被ってるお前に言われたくない!」
「先に言ったのはシンの方だろっ!この忠犬ハチ公もどきの腹黒野郎がっ!」
「俺のどこが腹黒なんだよ!」
「アキラさんに忠誠心見せつけてるけど腹ん中じゃ何考えてんでしょうねっ!」
「お前だって、柊さんの前で可愛子振ってるけど何企んでるかわかんねーよな!」
「お互いな…」
「……」
「……」
「…だな…笑」
「年上って…どうやって落とすんだ…」
「わっかんねー…」
共通の悩みを抱えるシンと明日香でした…。
【あとがき】
シン明日のやり取り書きたくて無理矢理柊くん登場させました。笑
この回は作者がただただシンに執事の格好をさせたくて書いた話です。笑
次回作は今夜か明日投稿します♪
文化祭編最終話です。
それでは、次回作でまたお会いできますように…
月乃水萌
コメント
6件
続き楽しみです!
続き楽しみすぎる😆