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数ヶ月の間、お互いにそれらしい動きは無く、無事に会食の日を迎えることができた。
「前から三ヶ月ぶりだろうか?」
国の化身である俺達は慎重に、そして雑に扱われている。どんなに刺されても、毒に晒されても死にやしない、大元さえ良ければいずれ生き返るから。
今だって、SPは一人づつのみで敵国と会食させられている。それなりの高級店であるものの、まともに味わえやしないな。
「そういえば、手紙を知らないだろうか? 前に来た時あたりになくしたんだ」
「手紙? それらしいものは無かったが、どうしてそんなもの持ってたんだ?」
嘘である。おそらく俺の拾ったラブレターを言っているんだろうが、落としたお前が悪いだろう。
「来る前にポストに入れるつもりだったんだ。忘れてそのまま持ってきてしまってな。見つけても中身は見ないで欲しい 」
とても焦っているようだったし、いつもより熱量があったので、余程見られたくない代物だったんだろう。もちろん見たが。
仲良く和気藹々と談笑、なんて出来るはずもなく、咀嚼とカトラリーの音だけが時間が続いた。
そのまま10分前後経ちそうになった時、ソビエトが思い出したように話を始めた。
「そうだ、これを」
ソビエトが取り出したのは、手のひらに乗るぐらいの長方形の黒い小箱だった。真紅色の細いリボンでラッピングされている。
「何も仕込んでいないから、隅々まで検査してもらっていい。良かったら使って欲しい」
「今開けてもかまわないか?」
「もちろん」
リボンを解いて箱を開けると、リボンと同じ色に染められた木軸の万年筆が入っていた。クリップの部分には小さな宝石がはめ込まれている。
「ルビーだ。ま、天然じゃないが」
「へえ、そうなのか」
装飾はその宝石ぐらいしか無く、高級感はそこまで無かったが、持つと手に馴染む。貰う物としては嬉しいかもしれない。
「ありがとう、使わせて貰うよ」
その日、重大な情報が得られた訳ではなかったが、無駄とは思わなかった。