テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
翌朝、またいつものように天井の一点を見つめていた。昨日の事を思いだし、俺はばっと起き上がる。
(人前で泣くなんて、恥ずかしいっ…。)
俺はそのままキッチンへ向かい、冷水を飲んだ。その時、ふいに祐の言葉が頭に浮かんだ。すると、ベッドの上の携帯がぶるぶると震えている。携帯の画面を覗き見ると、母からのメールだった。
『あんた、部屋はちゃんと片付いてるんでしょうね?』
俺は既読だけつけて無視をしようとしたが、さらにまたメールが。
『どうせ今家にいるんでしょ?写真送りなさいよ。』
俺は部屋を見渡す。もちろん、写真なんて送るわけない。こんなの送ったら母はきっと家に来る。俺は『ごめん、今外。』とだけ送って、携帯の電源を切った。
「っ乃亜、どした?」
祐は俺を見て、少し苦笑していた。きっと昨日のことが原因だろう。俺は勇気を出して、口を開いた。
「掃除…。」
「え?」
俺は唾液を飲んで、もう一度口を開いた。
「掃除、手伝えよ…っ。」
祐は目を見開いた。そして、くすっと笑った。
「任せとけ。」
そう言って、祐はさっそく俺の家に行き、掃除に取りかかろうとした。
「い、今からするのか?」
「え、明日するとでも思ったのか? 」
俺はゆっくりと頷いた。すると祐は俺のお母さんよりも優しく叱った。
「乃亜の明日するは絶対しないだろ。」
「す、するし…っ。」
「それに、乃亜は今掃除したいと思ったんだろ。」
祐はにやっと笑って言った。
「絶好の機会だろ。」
そう言って祐は俺に袋を渡してきた。「まずは要らないものを捨てよう」と言って、祐はさっそく掃除に取りかかった。
1時間後、本棚の整理をしていると、そこから小学生の時の卒業アルバムが出てきた。俺は卒業アルバムの表紙をめくった。そこには、にかっと笑っている自分がいた。髪の毛もしっかりと整えてあって、自然な笑顔。
「…俺って、本当に弱いな。」
「卒業アルバムか。」
目を丸くしながら振り返ると、そこには卒業アルバムに興味深々な祐がいた。俺は咄嗟に卒業アルバムを閉じた。
「そ、掃除して。」
「乃亜に言われたかねぇよ。」
30分後、ようやく部屋の半分くらいから要らないものの分別が終わった。
「今日はここまでにするか。」
俺はくたぁっと床に座り、息を吐いた。
「明日もするからな。」
「はいはい。」
祐は笑顔で手を振って帰っていった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!