ようやく華の部屋に辿り着き、律はそっとベッドに彼女を横たえた。
靴を脱がせ、毛布をかけると、華は安らかな寝息を立てる。
「……全く、世話の焼けるお嬢様だ」
そう口では言いながら、律の表情はどこか優しかった。
寝顔を見つめると、胸の奥に柔らかな熱が広がっていく。
(どうしてこんなにも、気になるんだろうな……)
酔っている時でさえ、自分にしがみつくように名前を呼ぶ姿。
ぶつかり合いながらも真っ直ぐな眼差しを向けてくる姿。
その全てが、律の心を揺らしていた。
「……もう好きだけどな」
思わず漏らした小さな呟きは、眠る華には届かない。
けれど、それは律が初めて自分の胸の内を認めた瞬間だった。