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(……………クソ)


やがて列車は4区の裏路地へ墜落した

列車が原型を留めない程のその衝撃により…左手は擦り潰れ、残りの片手に片足は折れ曲がっており…横腹には列車の一部が突き刺さっていた

その上先の調律者による衝撃で全身血塗れ…満身創痍であった

そして…目の前には落下の衝撃で砕け散り、燃え盛る列車

その中には……


「…………クソっ!!!」


折れ曲がった足を引きずりながら、原型を失った列車へ足を運ぶ




─────




「…………。」

「……………生き……てる?」


瓦礫の下敷きになっている調律者

私と違い寝っ転がったまま落下したためか、辺りは血に濡れていた

……内臓も駄目になっていそうだ

心臓に手を当て、脈を確認する

…ある

生きているが…弱々しい

このまま放っておけば………


(……駄目)


残った左手でその黒髪を掴み、息絶える前に炎の中から引きずり出す


「………O-01-55《銀河の子》

…ゴプッ」


何とか引きずり出した調律者の口へ石を突っ込み、

……そして、O-01-55《銀河の子》を引っ込めた


(……D-01-106《ピンクの兵隊》は…と言うより、WAW以上のアブノーマリティは無理。

多分生成した瞬間血を吐きすぎて……死ぬ。

勿論二体以上の生成は出来ないし…何よりこの調律者は放置すれば死ぬ。

だから…私は治療しない。

このまま外郭まで向かう。)


…『ミミック』を口に咥え、今一度調律者の髪を掴む

今自分が何区の裏路地に居るのか分からない為、巨大なA社ビルに背を向けた

そして…まだマシな左足を使う事でもう片足と調律者を引きずりながら、痛みを抑えながら…暗く、長い裏路地へ一歩を踏み出すのであった








「……あ”ー……クソッ」


いつも通りに死体から内臓を漁る

…しかし、余りにもスッカスカな中身に悪態をついていた


…この場所……10区裏路地では派閥争いが多く、死体もそこらを探せばあるが…見せしめとでも言いてェかの様に中身がくり抜かれていた


「あ”ぁ”ッ!!クソが!!」


殆ど皮しか残っていない死体にナイフを突き立てる

……このまんまじゃあ日銭すら稼げねぇ

フィクサーにもなれない俺見てェなクズは…死体から取れる臓物を売っ払うしかカネを稼げねぇ

…もう一度ナイフを突き立てる


(……どっかに都合の良い…死にかけの奴でも居ねぇのか…)


……なんて、都市の掃き溜めに居る癖に都合の良い展開を妄想をしていると……


「……フ”ーッ……フゥ”ーッ……」


いた

それも想像以上に死にかけの状態で…都合良くカネになりそうなモンを咥え、カネ持ってそうな女を引きずっていた


…チャンスだ




……そう思っている筈が、足が動かない

この手に握られたナイフを…あれに向ける事が出来ない


(…………あ)


目が合う


「………クソ…クソクソクソクソ!!!」


”あれ”の目が…『規制済み』が頭ン中を満たす感覚に耐えきれず…俺は裏路地を駆け抜けていった




─────




……アブノーマリティを生成せず、尚且つ私に出来る最大限の事

『規制済み』の武器、装備E.G.O.を装備し、裏路地を通過していた

その為か…目が合うネズミ全てが発狂し、泣き叫び…走り去って行く

今の私ではネズミ共にすら勝てない……という訳では無いだろうが……もしその間に調律者が狙われればどうする?

……きっと、今の私には守り切れない

裏路地は地獄絵図と化しているが…そんな事はどうだって良い


…私はまた一歩を踏み出した








裏路地を抜け、区を抜け、裏路地を抜け…線路を超え……外郭の研究所が見えてきた頃


「……………………ぁ」


足に力が入らなくなった

たった一本の柱を失った体は地に伏せ、力無い声が漏れる

一度倒れた体を動かす事も出来ず、ギリギリ働く脳は発破を掛け続けていた


(……動け………動いて……)


そこら中に付いた傷、そこから溢れる大量の血液

突き刺さる列車の一部、へし折れている片足

…殆ど死に体がD社裏路地から外郭までの間を歩き続けられたのは…数百年間の苦痛に、彼との約束に報いる為、彼女の強い意志による物であろう

……しかし、精神がどうであれ身体には限界がある


(い……やだ………嫌だ………動け……)


…こんな所で終わって良いものか

貴方に報いる為に…貴方との約束に…これからの為に…


「……中途半端とでも言えるか……

彼の地で共に死に絶えて依れば……此の様に無様な終焉を迎える事は無かっただろうね。」


…調律者が話し始める

既に会話が可能な程回復が済んでいた様だ


「…お前が何故図書館へ…都市の不純物なんぞに興味があるのかは如何でも好い。

ただ…『頭』に攻撃を行い、私を打ち破ったその果てがこの様とは…実に滑稽だな。」


……黙れ……何も知らない癖に……


「此処までの行動力は賞賛に値する……が、所詮この程度の決心だったという訳だ。」


……あの地獄を、ハンスとの約束を、これからを……この程度?


(…………ふざけるな…)


そう思考する事は出来ても、身体は一切動かない


……なんて無力なのだろうか


「…私が………共に朽ち……くという………実に不快………るが…ガリオンと──




此処で耳が完全に聞こえなくなった

……本当に此処で終わりなのだろうか

ハンスとの約束も、言葉も、告白も、葛藤も、拒絶も…優しさも暖かさも力強さもだらしない所も肌も腕も瞳も血脈も筋肉も骨組織も…全部全部全部全部…!!!




…これで終わりなんだ
















”貴方は…よく頑張ったよ”


……………誰?


”何百年も苦しみ続けて…殺され続けて……漸く脱出できて、もう一度会えたと思えばあの子に殺されて…”


……………。


”自分を何万人も殺してまで頭に襲撃して…此処まで頑張ってきたのに最期は外郭で誰にも知られず……”


…………そうだ

…そうだよ

私…頑張ってきたのに…誰よりも苦しんできたのに……

報われなくて……!ハンスの為なのに覚えてなくて……!

何度も…何度も何度も何度も何度も繰り返して…頑張ってるのに…何時までも幸せになれなくて……!!!


……私、どうすればいいの?




助けてよ………




”……大丈夫。

もう、何も考えなくていい。

もう、苦しまなくていい。

……ただ、私に身を任せれば良いの。

貴方は誰かのためを思える人だから、傷つき過ぎてしまうの


…だから私が、貴方の『これから』を作ってあげるから。

…それでいいでしょ?”











─────






「……Q@ERGQ@9…FYR」


「…ねじれたか

……はぁ…何所までも中途半端な奴だ。

…お前を調律出来ない事だけが心残りだが…


…何とも、皮肉な姿だな。」


「…………D,」


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