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R side
床に就く。
左手が少し痺れている。右手で包むようにゆっくり撫でた。
いつも手を握ってくれる、かのんはいない。
自分で遠ざけてしまった。
仕方のないことだった。
深く溜め息をつく。
怪我の回復が思ったより早く、明日は久しぶりの剣術だ。
その為にも、早く寝なければ。
目を瞑る。
その時だった。
「…おいっ…戻れ…っ!」
廊下で大きな声がした。
なんだ、騒がしい…。
K「るいさまぁーー?! 」
扉の向こうで、間の抜けた声がする。
かのん…か…?
だが、かのんが俺の部屋の前で叫ぶような事をするだろうか。
半信半疑で襖を開ける。
K「あ!るい様だ!」
目に飛び込んできたのは、虚ろな目で顔を真っ赤にさせているかのんだった。
俺を指差してにこにこ笑っている。
R「……酒か?」
「若様申し訳ありません、すぐに返しますので…っ」
かのんがふらふらと部屋に入ろうとする。
それを家臣が慌てて引き止めた。
R「…大丈夫だ。部屋で水を飲ませる」
「いや、しかし…」
R「離してやれ、預かる」
「……っ……では…お願いいたします…」
家臣が、納得しきれないという顔をしながら、かのんを引き渡してくる。
手を伸ばし、かのんの腕を支えるように持った。
K「へへ…ありがとうございます…」
かのんが覚束ない足取りで、部屋に入ってくる。
誘導するが、全然前に進めない。
数歩歩いた所で諦め、その場に座らせた。
R「飲め」
水を差し出す。
それを受け取ったかのんは、時々口の端から水を零しながら一気に飲み干した。
K「っはぁ…」
そして、湯呑みを持ったまま動かなくなった。
眠そうな目で、ゆらゆらと前後ろに揺れている。
寝るのか…?
R「…かのん?」
K「あ”!違う違う!」
かのんがはっとして大きな瞳を開き、頭を振る。
K「るい様…これぇ…」
差し出されたのは、俺が預けたお守りだった。
K「これ…返しに来ました…」
ヘラヘラと笑いながら、お守りを俺の手のひらに押し付けるように置く。
K「…返しましたからね…、じゃぁ…俺は…寝ます…」
そう言ってふらふらと立ち上がる。
R「も、戻れるのか…?」
K「…あい…だいじょーぶですっ」
信用ならない…。
その身体を支えようとすると、手で払われてしまった。
かのんは襖に背を向け、出口とは反対方向に歩き出す。
そして、相変わらず進めていない。
始めは呆気にとられていたが、酔ってるかのんが面白くて、何をするか見届けたくなっていた。
やっと辿り着いたのは蚊帳の中だった。
バタンと布団に倒れ込む。
そこ、俺の寝床…。
かのんが掛け布団を手繰り寄せ、抱え込む。
そして、ぐりぐりと顔を布団に埋めた。
K「…んー……るい様の…匂い…」
身体を丸め、さらにきつく抱き締める。
甘えるようなその姿。
見てはいけないものを見ている気がする。
でも、目を逸らせない。
K「……るい…さま……」
小さく呟いたと思うと、 かのんの肩が小さく震える。
泣いているのか…?
布団で顔が隠れ、どんな表情をしているか分からない。
居ても立っても居られず、俺はかのんの背中をゆっくりと撫でた。
その体温はいつもより熱く、汗で湿っている。
K「…っ…………じゃない…」
R「?」
何か言ったが、聞き取れなかった。
R「大丈夫か?」
声をかけると、かのんがむっくりと顔を上げ、こちらに振り返る。
K「…あ…れぇ?なんで…いるんですか…?」
R「…ここ、俺の寝床なんだが……」
かのんが眉間に皺を寄せて周りを見渡す。
そして、うーんと唸ると四つん這いでこちらに近付いて来た。
のそのそと膝の上に登りだし、ついには、俺の胡座の上に座った。
R「…っ///」
かのんから距離を詰められ、鼓動が早くなる。
K「………」
かのんは何も言わない。
その代わり、口を尖らせ不満そうな視線を向けてくる。
ムギュ…
R「ん…っ」
かのんの熱い手のひらが、俺の頬を挟み込む。
そして口を開いた。
K「…るい様ぁ?…仕事…じゃないれす…」
少し濡れた瞳がこちらを覗き込む。
ーー仕事。
あの時かのんに放ってしまった言葉。
なぜあんな言い方をしてしまったのだろう。
K「…そんなふうに……思われるの……やだ…」
段々と涙声になる。
K「っ………悲しかった……」
そう言ったあと、俯き、黙ってしまった。
R「……悪かった」
他にかける言葉が見つからず、ただかのんの背中を擦り続ける事しか出来ない。
あの時は、苛立っていた。
自分でも認めたくないような感情だった。
俺だけを見ていて欲しい、という気持ち。
K「るい様ぁ…」
するとまた、ゆっくりと顔を上げた。
濡れた瞳が、切なげに見つめてくる。
その表情に、一瞬にして気持ちを乱された。
R「っ…なん…だ…」
そして、ゆっくりと、顔が近づいてくる。
少しずつ、距離が縮まる。
かのんの手が両肩に触れた。
自分の心臓の音が煩い。
かのんの吐息が感じられるほど近くなった。
俺はただ、その瞳を見つめるしかない。
あと、少し。
かのんが静かに目を閉じる。
そしてーー、
かのんの方から、そっと唇が触れた。
R「…っ……」
優しく触れて、名残惜しいように唇が離れていく。
かのんのまぶたがゆっくりと開かれ、こちらを見上げてきた。
K「……へへ……」
そして、照れたように笑う。
どう反応していいか分からない。
ただ、心臓が煩い。身体が熱い。
俺が拍子抜けしていると、かのんは胸元に顔を埋め、身体を預けてきた。
K「…ん…あったかい…」
かのんが口元を緩めたまま目を瞑る。
K「……」
そう言ったあと、すーっと寝息が聞こえてきた。
ね…眠った……。
突然やって来たかのんとの時間に呆然としてしまう。
かのんを胸に抱えたまま動けない。
R「重い…」
だが、心地の良い重さだった。
そのまま抱え込み、そっと布団に下ろす。
その寝顔を見つめながら、指で頬を撫でた。
自由で無防備すぎる姿に口の端が上がる。
今夜の出来事、明日のかのんは覚えているのだろうか。
仕事じゃないと言ったこと。
かのんからの口付け。
全て本心からなのか。
自信がない。
何より、酔っていたし…。
ちゃんと、かのんと向き合わなければ。
自分の中でうやむやにしていた事もある。
R「…かのん、おやすみ」
かのんの右手を手に取って、自分も横になる。
目を瞑ると、唇の先に柔らかい感触がまだ残っていた。
sssss!!
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コメント
5件
かわいいかわいいかわいい!!愛おしいですありがとうございます。シラフになったかのんがたのしみ🎶
更新ありがとうごさいます‼️やはり泥酔かのん最高ですね👏🏻✨よくやった泥酔かのん笑🤭かのんに押されてるるいさんも戸惑い混じってて可愛いです🤦🏻♀️💖次の日にかのんは覚えているのだろうか…笑 ぜひ覚えてて思い出して恥ずかしがるまでが見たいところです笑🤭💖 今回もありがとうごさいました‼️次の更新楽しみにしてます😽💕︎
やっと読めた…この話、めっちゃ良かったわ。 酔ってるかのんが「仕事じゃないれす」って言い直すとこ、あの場面のるい様の胸の痛みが刺さった。自分から遠ざけた相手が、こんな無防備に "るい様の匂い" って布団に埋まって泣いてるんだもんな…あの沈黙の重さがたまらん。 それからかのんからキスするとこ、心臓バクバクした。酔ってたとしても、"本心" って分かるよね。るい様があとで「ちゃんと向き合わなきゃ」って決める終わり方も、次が気になりすぎる🔥