お呪様を祓うという仕事は、いわばクエストのようなもので、祓うお呪様を選べるか選べないかは早い者勝ちである。そのため僕たちは、全速力でそのクエストのある場所へと走っていた。
「も、もう疲れたよぉ!」
僕が弱音を吐くとすかさず、
「っはぁ〜、だっらしねぇなぁ!もっとこう、腕を動かすんだよ!」
そんな祓い屋くんの言葉につい
「分かるかぁ!」
と、返すのだった。
そして、そのクエストのある場所へ着いた。
「づがれだぁ!」
僕が、ぜぇはぁと息を荒くしている間に、祓い屋くんと触手くんはクエストを申し込みに行っていた。
「店長!大物のお呪様のクエスト、まだ残ってるか?」
店内にも響き渡る声で祓い屋くんは店長に話を伺っている。それに対し、隣の触手くんは、まるで他人事のように頬杖をついている。周りの視線が一気に二人に向いているのが分かった。
「おいおい、いくらお前さんらとはいえ、辞めておいた方がいい」
「なぁに言ってんだ店長!俺たち最強3人組なら大物のお呪様なんて余裕だぜ?」
店長と祓い屋くんが話しているのを聞くに、今回のお呪様は相当やばい様だ。…というか、3人組って、まさか、本当に僕を連れていくのか?いいなんて言ってないぞ!
「今回のお呪様は、最低でも10人は必要とするほどの強敵だ。なんせ東京で生まれたお呪様なんだからな、相当な恨み憎しみを糧としている。たった3人で立ち向かうなんて無謀だ」
「…そんなん聞いたら、もっと、もっともっと燃えるじゃねぇか!」
「これだから脳筋は…お前に限っては頭が悪い」
「おい触手野郎なんか言ったか、おい」
「店長、俺からも、どうにか頼めないだろうか?こいつの援護をする気は無いが、アンタがそういうほどの相手だ、相当なんだろう。そんな相手を俺も見たなった。」
……どうやら、触手くんも本気のようだ。あの眼は本気だ、でも口が歪んでいるのを見るに、面白そうだからというのが彼をあそこまで駆り立てる理由なんだろう。
「やれやれ、しょうがねぇなぁ、俺は忠告したからな…ほら、現世への扉の鍵だ。扉を開けりゃお前さんらの求めているお呪様のいる付近へと出るさ。」
「ありがとうな!店長!行ってくるぜ!」
「すまない、感謝する。」
「おら!いつまでも座り込んでないでいくぞ!ユウレイ!」
ここまで言われては行くしかないだろう。周りは僕が弱いことを知っているので、ヒソヒソと、 大丈夫かや、すぐやられてしまうなど、声が聞こえてくる。そんな声を遮るように、触手くんが言葉を発した。
「ユウレイ、本気…出せよ?」
「…僕はいつも本気さ」
こうして、僕ら3人は東京に居る、大物のお呪様の所へ行くのだった。
扉を開けると、高層ビルが立ち並び、車が渋滞しながら走っている。今、現世は平日、8時。ちょうど通勤ラッシュの時間だ。現世の人間には僕たちが一応見えてはいるのだが、服装が少しおかしかったり、霊感とかそういう職業柄の人にとっては、明らかに普通の生きている人間では無いのが察せられる。まぁ、そういうこともあり都市伝説などで僕たちのことが書かれたりするものだから非常に面白いかった。と、いうことで、大物のお呪様探しから始めるのだが…明らかに背中から刺されるような気持ち悪い呪いが渦巻いているのがわかる。その渦をたどって僕たちはそこへ辿り着いていた。そこには…
「うぅわぁ!」
人間がいた。まぁ、大体検討はつく。祓い屋の人間だろう、祓い屋くんと同じだ。大物のお呪様が目の前にいる。こりゃぁ、普通の人間の手に負えるような相手じゃぁない。僕たちはその人間を庇うように前に立つ。
「あんた達は…、そうか!、すまねぇ!もっと人を呼んでくるから、それまで耐えてくれ!」
その人間は僕たちが何なのか気づいたようで、増援を呼んでくれるようだ。
「ッハ、増援なんて来る前にさっさと終わらしてやるぜ!」
「まぁ、それには同意だ。」
そんな祓い屋くんと触手くんの声を合図に僕たちはそれぞれの武器を構える。
「敬意を持って…祓わせていただきます!」
そんな掛け声とともに僕たちは地を蹴るのだった。
これはいわゆる激戦というやつだ。一進一退の攻防を繰り返している。それに、僕は現状ついていけていない。身体能力の欠けらも無いぼくが2人についていけるわけが無いのだ…だが、そんなことで諦めるほど僕はやわじゃない、隙を見て斬撃を入れる。祓い屋くんは、武器に加えて御札を使って攻撃をする。触手くんは、武器と自身の触手を使って攻撃をする。ほとんど2人で戦っているようなものだ。一進一退なこの状況は、あまりよろしくない。そしてついに、僕にお呪様の攻撃がみぞおちに直撃した。
「っがっぁ」
近くのコンクリートのへいにめり込む。
「…っはぁ、はぁっ」
上手く呼吸ができない、視界が霞む…現世に降り立った時、一応肉体があるにはあるので、ここで死んだ場合…それは本当の死。魂の消滅。これだけは避けないと行けないのだが…こりゃもうダメそうだな…
ついにまぶたが閉じてしまう。飛び出た鉄骨が体を貫いている、その鉄骨に串刺しになってぶら下がっている状況だ。結構グロい………死の間際ってのは頭が回らないもんだ、戦闘音は絶えない。まぁ、2人には勝って欲しいな…
おやすみ_____