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猫アレルギー
111
158
まあ
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かえ
311
「……つまり?」
最初に聞いたのは、 若武だった。
「協力者がいるってことか!?」
「まだ断定はできないけど」
美門君が、 ハンカチを見ながら言う。
「少なくとも、ここに二人いたのは確か」
「香水だけでそこまでわかるの?」
私が聞くと。
「うん」
普通に返ってきた。
「片方は甘めのフローラル系。さっきの子の匂い」
「え、わかるんだ……」
「もう片方は違う」
美門君が少し眉を寄せる。
「もっと落ち着いた匂い。大人っぽい感じ」
「大人っぽい?」
「香り強めだったから残ってる」
すご。
人間、そこまでわかるの?
「翼、犬みたいだな!」
「若武に言われたくない」
美門君が即返した。
「でもさ」
小塚君が考え込む。
「もし二人いたなら、なんで片方は出てこないんだろ」
「隠れてるとか?」
私が言うと。
「ありえる」
上杉君がうなずいた。
「さっきの子だけ目立ってるの、不自然なんだよ」
「不自然?」
「感情的すぎる」
上杉君が階段の手すりにもたれる。
「誰かに誘導されてる可能性ある」
一気に、 空気が変わった。
「……え」
「つまり」
黒木君が静かに続ける。
「誰かがあの子を使ってるかもしれないってこと?」
「可能性の話」
上杉君は冷静だった。
「でも、あのタイミングで出てくるのは出来すぎてる」
たしかに。
まるで、 私たちを見てたみたいだった。
その時。
「にゃー」
猫が急に鳴いた。
忍が顔を上げる。
「……あ」
「忍?」
「誰か来る」
「また猫情報?」
「うん」
本当に頷く。
すると本当に。
階段の下から、 足音が聞こえてきた。
「え」
「ほんとだ……!」
わたしが驚いている間に。
上杉君の目が変わる。
「隠せ」
「え?」
「ハンカチ」
「あ、うん!」
慌てて小塚君がポケットに入れる。
直後。
階段の下から、女子生徒が現れた。
「あ……」
一年くらいの女の子。
でも。
私たちを見るなり、 明らかに顔色が変わった。
「っ」
そして。
階段の途中にいる忍を見て、 ぴたりと止まる。
忍は、 猫を抱いたままその子を見た。
「……この人」
ぽつりと呟く。
「猫、嫌ってる」
「忍、それ今関係ある?」
若武が小声で言う。
すると。
「……待って」
急に、 美門君がその女子を見た。
「その匂い」
女の子がびくっと肩を揺らす。
「え……?」
「同じだ」
一瞬、 空気が止まる。
「ハンカチについてた香水」
「っ……!」
女の子の顔色が変わった。
「お前、あの子と会ってたな!?」
若武が勢いよく前に出る。
「若武、尋問向いてない」
上杉君が即ツッコんだ。
「し、知らない!」
女の子が後ずさる。
逃げようとしてる。
でも。
「待って」
黒木君が、 静かな声で言った。
女の子の動きが止まる。
「別に責めたいわけじゃない」
「……」
「ちょっと聞きたいだけ」
黒木君の声は、 優しかった。
安心させるみたいに。
女の子の表情が少し揺れる。
その時。
なんとなくわかった。
黒木君って、 ただ優しいだけじゃない。
ちゃんと、 相手を落ち着かせる話し方を知ってる。
「……先輩に頼まれたの」
小さな声だった。
「先輩?」
小塚君が聞き返す。
「名前は知らない……でも、黒木君たちのこと聞かれて」
「俺たち?」
「……立花さんのこと」
ぞくりとした。
「私?」
女の子は、 気まずそうに目を逸らす。
「最近、黒木君たちと一緒にいる子がいるって……調べてほしいって言われて」
「その先輩、どんな人?」
上杉くんが聞く。
女の子は少し考えてから。
「女の人。高校生くらいで……香水付けてた」
美門君が静かに目を細める。
やっぱり。
別に誰かいる。
「……塾内だけじゃ、足りないな」
上杉君が、小さく呟いた。
コメント
1件
まあさん、第13話読ませていただきました! 今回も一気に引き込まれました…! 特に黒木君の「落ち着かせる話し方を知ってる」って気づく場面、すごく好きです。優しさだけじゃなくて観察眼とか機転の効かせ方がキャラの厚みになってますよね。 上杉君の「塾内だけじゃ足りない」って締めも、話が外に広がる予感がしてゾクゾクしました。続きが気になります…!