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次の日、
いくら待っても若井滉斗は教室に来ない
…いや、待つ必要はないんだけど
もうすぐで先生が来る
走ってくる人影が見えた
若井滉斗だった
一瞬だけ、目が合った
けど、すぐにそらされた
それだけで、胸がぎゅっと縮む
若井は、
何も無かったように笑って
クラスメイトに囲まれていた
たった1日いなかっただけなのに、
すごく心配されていた
もちろん隣の席
でも、
なぜかすごく遠く感じた
休み時間になっても、
若井は話しかけてこなかった
あんなに、 うるさいくらいだったのに
でもこれは、
僕が望んだ静けさだったはずだ。
ノートに視線を落としながら、
それでも隣を気にしてしまう
視線が合いそうになって、
慌てて目をそらす
それを繰り返していた
放課後
帰る準備をしていると、
後ろから声がした
w「……元貴」
心臓が跳ねた
ゆっくり振り返る
若井は、
少しだけ困った顔をして、
立っていた
w「…ちょっといい?」
逃げようと思えば、 逃げられた
でも、 足が動かなかった。
ついて行った先は
あの日、僕が突き放した場所だった
w「昨日さ……」
言葉が、続かない
o「…なに」
自分でも驚くくらい、 小さな声
w「休んでて、ごめん。
風邪ひいてた」
o「…そう」
それだけ
沈黙が続く
w「あと……」
若井は、
一度、深呼吸してから言った
w「元貴に話しかけてたの、
同情だけじゃない」
その言葉に、
胸が、少しだけ揺れた
w「最初は、
放っておけなかったのは、 ほんと」
否定しないんだ、と思った
w「でもさ、
一緒に帰ったり、
隣で話したりしてるうちに、
普通に、楽しかった」
若井は、
まっすぐこっちを見ていた
w「迷惑って言われて、
正直、めちゃくちゃ傷ついた」
その声は、
少しだけ震えていた
w「でも、
元貴がそう思うなら、
無理に話しかけるつもりはない」
一拍おいて
w「……ただ、
誤解されたままなのは、
嫌だった」
胸の奥で、
なにかが、ほどけた気がした
w「それに、考えるきっかけになったんだ」
w「 今まで、
良かれと思ってやってたことが
誰かを傷つけてしまうって気づいて」
o「……」
言葉が出てこなかった
若井は自分の思いを伝えてくれたのに
僕は何も言わなくていいのか
頭の中で、あの日の目標が浮かんだ
•上をむく
•挨拶をする
これは、挨拶でもなんでもないけど
o「…ごめん」
若井の目が、 少し見開かれた
o「勝手に決めつけた。 同情だって」
言葉を探しながら、続ける
o「それが、
嫌だっただけなんだと思う」
若井は、
しばらく黙ってから、 小さく笑った
w「そっか」
その笑顔は、
前より少し、やわらかかった
w「じゃあさ、 また話しかけてもいい?」
心臓が、 うるさくなる
即答は、できなかった
でも、
o「……少しだけ」
若井は、
「十分だよ」って言うみたいに、
うなずいた
その瞬間、
若井との距離が、
前より近く感じた
帰り道
気づけば、
いつもより少しだけ、
若井のほうを見て歩いていた
上をむく、なんて意識しなくても、
視界に、自然と入ってくる
それだけで、
今日は十分だった気がした