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荒野を真紅の炎が飲み込み、先頭集団が次々と爆発に巻き込まれていく。
《ブレイズ・エンジェルス》の火炎放射が、コースを地獄そのものにしていた。
悲鳴、火柱、黒煙――
コース全体が混乱し、阿鼻叫喚の渦が広がる。
そんな中、最後尾を走っていたパトカー《ジャスティス・ブレーカー》が
ひっそりと――だが着実に、アイテムリングへ滑り込んだ。
ピピピッ……!
青と赤のサイレンが一瞬強く閃き、
パトカーの計器に笑みを浮かべる男の姿が映る。
「当たりだ。――では、《指名手配》を開始しようか。」
サイレン音が空気を裂き、メガホンが吠える。
『対象車両――消防車《ブレイズ・エンジェルス》!
お前らは重火器乱用の疑いにより――指名手配だッ!そこを動くなっ!』
同時に、パトカーのサイレンが低く唸り始める。
ただの警告音ではない。サイレンの音波にジャミング電波が重なっており、数秒間ではあるが対象車両の電子機器を完全に停止させることができる能力となっている。
炎を撒き散らしながら走っていた消防車が、突然車体をビクンと震わせ、その場で硬直する。
「……止まった?」
レナがミラー越しに目を見開く。
エンジン回転数が急降下し、装甲の隙間から火花が散った。
運転席の男が叫び、防火スーツの女が焦ったように計器を叩いている。
「動かない! 制御を奪われて――!」
「くそ!あのポリ公野郎!」
その横を――
他の車両たちが
一斉に抜け去っていく。
炎のカーテンが割れ、
黒煙の隙間からスタジアムへ向かって駆けていく数台の影。
観客席が狂ったように沸き立つ。
パトカーは最後に追い越し際に消防車の運転席に向け、冷たく呟いた。
「違反車両、処理完了。」
そしてアクセルを踏み込み、ジャスティス・ブレーカーは砂煙を巻き上げながら前方へ消えていった。
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観客席の喧噪が遠ざかる。
ラビと――“アレクセイの姿をした何か”だけが、別の空気をまとっていた。
アレクセイ(仮)がゆっくり立ち上がり、ラビに笑いかける。
その顔は――アレクセイが今までに見せたことのない表情をしていた。
「やっぱり作戦がチープすぎたかな?」
肩をすくめる仕草もまるで本物。だが、その目は笑っていない。
「ナノマシンの痕跡をちらつかせて、それに釣られてノコノコやってくるってところまでは良かったんだけどな……やっぱり準備されちゃうよなぁ。」
ラビは無表情を装いながら、ゆっくりと目で追う。
「おいおい……あんまり動くなよ。お前に照準合わせてる凄腕スナイパーがいるんだぞ。」
アレクセイ(仮)は肩を揺らして笑った。
怖気も焦りも一切なく――
スタスタと歩き出し、スタジアム三階席の手すりへもたれかかった。
「へぇ。撃ってみなよ?」
次の瞬間――
彼の顔が ドロリ と溶けた。
ラビの背中に、氷水を流し込まれたような感覚が走る。
見慣れたアレクセイの顔面の皮膚が溶け、滴る金属の液体が顎から垂れ落ちる。
それはただ地面に落ちるのではなく――
うねるように揺れながら形を持ち、彼の首へ巻き付いた。
マフラー。
黒く光る、ナノマシンのマフラーへ変貌を遂げた。
ラビが息を呑む。
動悸が、耳の奥で爆音のように鳴り響く。
血を引き伸ばしたような赤い髪が、顔の異形さを際立たせる。
頬はこけているのに、肌だけが妙に滑らかで、鼻筋は妙に整いすぎて、人工物めいた直線を描いている。
そして口角だけが、チェシャ猫のように吊り上がっていた。
「軽く自己紹介をしよう。
僕の名前は《ギデオン》。お察しの通りクロエとライルの組織の者だ。
ちなみに本物のアレクちゃんはトイレで眠っているよ。」
さんねんせい@晒したら訴えっる
ギデオンは、手すりに座るように腰掛けると――
背後へ向かって軽く身を折り、後ろ向きに飛び降りた。
ラビ「待――!」
言葉が終わる前に、スタジアムの地面が盛り上がった。
アスファルトを砕きながら 巨大なワーム型マシンが飛び出す。
金属でできた顎がギチギチと音を立てて開き――
ギデオンを丸呑みした。
そして再び地中へ潜り込む。
残ったのは、割れたアスファルトと、揺れる観客たちの悲鳴だけ。
ラビは立ち尽くしたまま、硬直した。
「……やっべぇの来てんじゃねぇか。」
無線が耳元で鳴る。
ミラの声が、いつになく真剣だった。
『ラビさん。エリスを出してください。折角掴んだ手がかり―カイさん達がこちらに戻るまで逃がさないようにしましょう。』
ラビは拳を握り直す。
仲間が戦っているコースの向こうで、
別の脅威が動き始めていた。