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[彼女目線]
「このクレープ、透と一緒に食べたいなぁ……」
そう思いながら文化祭の人混みを歩いていたときだった。
「ねぇ、そこの子。可愛いじゃん」
突然、知らない男子が目の前に立った。
目が合った瞬間、にやっと笑われる。
「何組?一緒にまわらない?
君、ひとりで歩くの危ないよ〜?」
「いえ、大丈夫です。待ち合わせしてるので」
軽く断ると、
男子はわざと道を塞ぐように前に回り込んできた。
「そんな冷たいこと言わなくて良くない?
どーせ彼氏とかいないでしょ?」
うわ……めんどくさい……
あのやり方、完全にナンパのやつ。
早く透のところに戻りたいのに。
「ちょっとだけでいいから──」
その瞬間。
背後から、聞き慣れた声が低く落ちてきた。
「……おっ、へぇ〜……?
彼氏いないと思ってんの?」
透の声がいつもより低い。
その時点で、あ、怒ってる……ってわかった。
振り向くと、及川徹が立っていた。
普段のキラキラ笑顔が一切ない。
でも目だけが、ぎゅっと尖ってる。
「と、透……」
「ごめんねぇ?ちょっと遅くなっちゃって。
……で?俺の彼女になんの用?」
男子は気まずそうに身を引いたが、
透は笑顔だけ浮かべて一歩前へ。
「ねぇ、聞こえなかった?
“俺の彼女” って言ったんだけど?」
完全に圧。
男の子の顔が青ざめていく。
「い、いや、何も──」
「うん、じゃあもう行こっか。俺の邪魔しないでね?」
透はそのまま私の手を掴んで、
指を絡めてきた。
その手が少し強い。
怒ってるのが分かる。
男子が完全に逃げていったあと、
透はこちらを見た。
目元は笑ってるけど、声は本気。
「……怖かった?」
「ちょっとだけ……」
言った瞬間、透の眉がきゅっと寄った。
「ごめんね。本当に。
遅れちゃって……守れなかった」
ぎゅっと抱きしめられた。
あぁ、透だ。
「大丈夫。もう透がいるから」
そう言うと、彼は顔を上げて、
ふわっと笑った。
「うん。離れないからね。ずっと」
耳まで赤いのが可愛い。
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ぐはは