テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

【- 前編 -】


「海を見に行こう。」そう決めた親友の背中を見送る星螺。一日経って駅まで迎えに行く約束をしていた。だが、親友は姿を見せなかった。連絡を入れても音沙汰無し。親友のことが心配になったので毎日、親友の家に通った。親友の親も親友については何も知らないらしく今、どこで何をしているのかも知らないらしい。

そんなある日、親友から一通のDMが届いた。

「明日、午後五時くらいに秦良しんりょう駅に集合ね。絶対だよ、話したいことがあるの。またね」

秦良駅?見覚えのない駅名に戸惑いを覚えつつ代官駅からのルートを調べた。秦良駅に行くためには代官駅から、鳥雲ちょううん駅に乗り換えが必要らしく五百八十円の運賃がかかる。

せめてその秦良駅の付近について調べようと検索を掛けると、『夕陽の名所』があるということに気づいた。そもそも、代官市も美しい海が見れる。浜前市よりもやや左に面していて都会のような喧騒と自然の豊かさが混在している代官市とはわけが違う。

「ここから、五十分かかるんだ⋯⋯。」

そう呟くと、隣に座ってスマホをいじっていた友人が

「んー?何がぁ?」

と、あくび混じりに聞いてきた。体制を変えた友人が星螺のスマホを奪って画面を見た。

「え⋯?秦良駅に行くの?なんで?え⋯?だって⋯⋯」

画面を見た友人は行くことを否定した。詳しく話を聞くと人身事故が多いことで有名の駅だった。秦良駅は『夕陽の名所』が近くにあるが、決してデートスポットでは無いのはそのせいなのかもしれない。

「別に死にに行くわけじゃないよ。」

消えた親友も人身事故にあったような感じではなかった。きっと第三者や環境に問題があって帰ってこられなかっただけかもしれない。亡くなるわけがない。そもそも、親友はDMを飛ばして教えてくれた。だから、生きている。

「もう、またそうやって友達に気を配って⋯ほんっと心配性だね。大丈夫でしょ、だって、星螺の友達だよ?」

友人はため息をこぼして心配するように星螺に抱きついた。心臓の音が徐々に速まっていることを肌で感じた。星螺の髪が風邪で靡いて、春の訪れを音で察した。神秘的な空気の中で二人で座っているベンチの上に桜の花弁が落ちてきた。

「もう、行かなくちゃ。あの子が秦良駅で待ってるからさ。」

「うん⋯。気をつけてね。最近、不審者も多いみたいだし、ち、痴漢とかあるかもだから席、空いてたら遠慮なく座ってね!あ、後⋯手すりに⋯。」

「はいはい、分かってるって!もう⋯心配性なのはどっちなんだか⋯」

星螺は、歩き出して公園から離れようとした。ところが、突風が星螺を襲った。星螺は、急いで帽子が吹き飛ばされないように手で抑えた。体を冷やす寒い風が肌を伝いぐっと押し寄せた。

親友に早く会いたい一心で近く遠い秦良駅を目指した。そのために乗り換え用の切符を購入した。薄い青と青のストライプ柄の切符を改札口に通して電車が来るまで待っていた。やがて待ち続けていると、停車音が駅のホームに響いた。

「よし⋯」

星螺はゆっくりと息を飲んで乗車した。一歩踏み出した星螺、親友はこんな気持ちだったのかな。そんなことを想像しては会いたいなぁ、早く会えんかなぁと願っていた。

「あ、次かな?」

そう思う間もなく、乗り換え駅に着いた。秦良駅まで後一歩というところでまたDMから連絡が来た。

「あともう少しだね。楽しみ。きっと会いに来てくれてるよね。」

その文章を読んだ星螺は、素早いタイピングで文章を綴った。

「当たり前でしょ。じゃ、またね。」

星螺は微笑みながら連絡を返すと、反応スタンプが付けられた。

星螺は席に座ってじーっと外の景色を楽しんでいた。長いトンネルを抜けて住宅街も超えた。そして、星螺の目の前には美しい港が広がった。

「あ、海だ⋯」

代官市にある海とは何かが違かった。兎にも角にも、本当に美しくそしてどこか切なかった。ここに訪れるために親友は秦良駅に向かったんだ。

「そっか、そりゃあ、帰りたくないよね。」

現実逃避のために海に向かった親友の胸の内を考えると海がピッタリだということが分かってほっとした。星螺の好きな雰囲気で満たされたその海を眺めてうっとりしているとアナウンスから秦良駅の名前が聞こえてきた。やっと着いたその駅のホームを見てここが自殺の名所になっていることに驚きを抱いた。血なんて微塵も見えず、本当に真っ白で美しい場所だった。夕日に映える車窓からの景色を思い出しながら駅のホームに降りたった。

すると、目の前の光景が現実の物のように感じた。人が一人もいない、だけれどしっかりと掃除されているタイルの美しさ。まるで写真の中に入ったかのように電車が去ったホームを見つめて端の方で親友が現れるまで待っていた。

すると、改札から人影が見えた。近づくと

「あ!星螺!お久しぶり!」

と、最後にみた姿と今、目の前にいる姿が全く違うように感じた。

「おかえり⋯⋯零香れいか⋯会いたかった!」

改札の外にいたのは七日間、姿を見せなかった親友そのものだった。


続く。.:*・゜

【100人フォロワー突破記念作品】夕陽に君と二人で

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

0

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚