テラーノベル
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「んだよ元気ねぇな」
「ほっといて」
自分史上最大の失恋の後、しょっぴーが家に来た。
ソファに横になる俺は、とんでもなく酷い顔をしていたらしい。
「国宝級イケメンが台無しだ」
「思ってないくせに」
「まぁな、見慣れたからよくわからん」
言いながらサイドテーブルにドサッと袋を置き、中から惣菜屋のローストビーフとシーフードサラダを出してきた。
「食え」
「食べたくない…」
「お前が痩せると見てられん」
しょっぴーはそう言うけど、本当に食欲なんてない。
動く様子のない俺を見てか、黙って惣菜を袋にしまっていく。
「ごめんね」
そう言ったけど返事はない。
ずっと仲が良いけど、しょっぴーは年上なのを忘れるほど気分屋だ。怒らせただろうかと一人ちょっと気まずくなる。
次に何を言おうか考えているとガサガサと袋の音がして、目の前にゼリー飲料が差し出された。
「ほら」
「え?」
「これなら食べられそう?」
思わず顔をあげてしょっぴーを見ると『お前の事なんてお見通しだ』と得意げに笑っている。
「失恋なんて時間が経てば忘れるもんだよ。でもちょっと食べないとずっと考えるからダメだ」
「しょっぴー…」
「俺が怒ったと思った?お前もまだまだだな。見直せ」
こういう所も年上っぽくないんだよな、と思うけど、言ったら恐らく機嫌を損ねるので黙っておく。
「ありがと…」
「お礼なら今はいいから。ちゃんと立ち直ったらうまいもん食わせて」
「そうする。何がいい?」
「肉」
「ふふっ」
想定内すぎる回答…いや、もうほぼ解っていて聞いたので、思わず笑ってしまってはたと気付く。
俺、失恋してから初めて笑った。
「感謝しろよ」
しょっぴーもそれに気づいているのか、一瞬驚いた顔をした後にどこかを見ながら空中にその言葉を投げ捨てた。
「じゃ、また来るから。これどうする?」
「いただく。置いてって」
「わかった」
心底安堵したような柔らかい笑顔。
普段周りに棘をまき散らすしょっぴーがこんな顔を見せるのを知っている人は、この世界の俺以外にどれくらいいるんだろう。
しょっぴーを安心させたい、だから元気になろう。
そう思いながらゼリー飲料を飲み干し、サラダを冷蔵庫に移していると、底にまだ何か入っていた。
前に俺がうまかったと話したチョコレートクッキーの小さい袋。
「…ほんと、そういうとこ」
失恋したてで今の今まで食べたくないほど落ち込んでたのに、好きになっちゃうよ?なんて思っている自分が不思議だった。
むしろ、しょっぴーが不思議な魅力を持っているのかも知れない。そうだとしたら、とんでもない人たらしだ。
ため息をついて、一度冷蔵庫にしまったサラダと箸を取り出してダイニングに戻った。
終
コメント
9件
仲良し🖤💙しょっぴー優しい✨✨
わたくし訳あって🖤💙はあまり書かないのですが、二人の仲良し感は好きなので出したかった。