テラーノベル
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アルテアの声に反応するフィニス達。
「この感じ……面倒だな……エレノアさん!この集落、他に人は?!」
ルシオが窓の外に身体を向けながら、視線だけをエレノアへ送る。
「ここには私達だけしかいません!」
「ニティアさんはそこでエレノアさんとアオをお願いします!」
そう言い、アルテアは地面を足で叩いて鳴らしてみせた。フィニスも頷き二つの剣を握りしめ、外へと飛び出す。
『あ〜ん!待ってよフィニス〜!』
肩から降ろされ、その場で宙に浮くゼフィリア。その後頬袋を膨らませながらぶーぶー言っていた。
「ほら、危ないから大人しくしてて」
『別にあんな雑魚達……なんとでもなるでしょ?ほら、エレノア!』
くるっと宙を舞い、ベッドの上で力無さそうに上半身だけを起こしているエレノアを見るゼフィリア。
『……仕方がないわね。今回はあんた達に譲ってあげる』
そう言うとゼフィリアはアオの頭の上にゆっくりと降り立った。
「少しは素直になりなさいよ……」
そう小さく呟きながらも、ニティアは術式を構築し始めていた。
⸻
アオ達の家の前でじっと構えるフィニス達。
「なぁ、俺の見間違いか?」
視線を動かさずにフィニスが呟く。
「多分見間違いじゃないと思うぜ」
「ええ……」
カサカサという動きと共に、大きな影が現れる。
無表情で血の気を全く感じられない人間の女性。その下半身が巨大な蜘蛛のようになっている。青藍色に輝く蜘蛛の身体とは裏腹に、蜘蛛の頭部と思われる場所には赤黒いコアが鈍く光っていた。
「アラクネア……」
フィニス達から少し離れたところで立ち止まるアラクネア。その上半身から、薄気味の悪い笑い声のようなものが漏れ出した。
『ウフフフ……アハハハハハ……』
その声に呼応するかのように、アラクネアの後ろからは無数のムカデや蜘蛛といった魔物達が姿を見せ始めた。
「後ろの魔物は気にするな。コアが無いってことはアラクネアの産み出した個体だ。あいつを倒せば勝手に消える」
「なぁ、俺初めて見たんだけど、あの上半身って……」
「……アラクネアが食べた人間です……美しい女性の身体を自身と結合させることで、人間を騙して捕食する……蜘蛛型の魔物が長い時間人を食べ続けると、ああいう生態になるらしいです……」
「……気分悪いな」
「……はい」
一瞬の静寂……
『アッハッハッハッハ!』
アラクネアが大きな笑い声をあげると同時に、後ろで待機していた小型の魔物達が一斉に襲いかかってきた。
「フィニス!毒がある奴もいるかもしれない!噛まれるなよ!」
「マジかよ!!」
⸻
『あんな奴が近くにいたとか……通りで臭いと思った……』
アオの頭の上で鼻を押さえ、手で仰ぐそぶりをするゼフィリア。外を覗き込んでいた視線をニティアに移した。
『凄い数だけど……大丈夫なの……?』
少しだけ心配そうな声を上げるゼフィリアに、ニティアは淡々とした表情で答える。
「え?あんた気付いてないの?」
『何がよ?』
「アルテアは、結界が使える自分じゃなくて、ここを私に任せた理由よ」
そう言い、術式効果を発動させると、家の中を回転するように上昇する風が吹き始めた。
『ん?どうしたのこんなところで』
風が家の天井の一点に集中していく。
「こっちのほうがフィニスたちにとっては厄介だろうしね」
『これってもしかして……』
「一応吸わないように巻き上げてるけど、気をつけてね」
メキッ
床材を破りながら、生えてくる無数の小さなキノコ。
「お母さん!見たことないきのこが!!」
「触らないで!こっちにいらっしゃい!」
「どこかの精霊さんは気づかなかったみたいだけど〜?これもデコイよ。触るとまた胞子が出てくるから気をつけてね」
『んなっ!!』
「痛い!ゼフィリア髪の毛引っ張らないでよ!」
ニヤリと笑ったニティアが杖を振りかざすと、無数の極細の針のようなものが輝きながら空中に生成されていく。
『なに……この魔法……』
見たこともない謎の魔法に、先ほどまでニティアに煽られて怒っていた表情が驚きへと変わる。
コン
ニティアが地面に杖を突き立てた瞬間……無数の光が床へ目掛けて突き刺さっていった。
ザザザザザザ
きのこや床を貫通し、さらに地面深くまで突き進んでいく光。あまりにも細い針だからなのか……突き刺さり、貫通したはずのきのこや床には穴ひとつ見て取ることが出来なかった。
「見つけた」
もう一度強く杖で地面を小突くニティア。
ミシミシっ!
床下の地面が盛り上がったのだろう。床の1箇所にヒビが入り、そのまま盛り上がる。
バキッ
盛り上がったのだろう木材が限界を迎え、弾けるとともに、床下からは手のひらサイズの小さなきのこ。青白い傘の中央には小さく輝くコアが見て取れた。
『こいつ!!スポアリン!』
目の前に現れた小さなキノコの魔物を見たゼフィリアが目を見開いて叫んだ。
「そ、アルテアが魔物が来た時に地面を足で叩いてたの。最初は私も気づかなかったけど、あれで足元に意識を集中させたら微かに気配を感じられたのよね」
そう言って指先に魔力を込め、小さな炎の矢をきのこのコア目掛けて打ち込む。
パキン!
コアの砕けたきのこがたちまち白い炎に包まれて消えていった。
「おねえちゃんかっこいい!」
「んふふ〜♪あいつは胞子で獲物が動けなくなるまで地上に出てこないし、本体は弱くて魔力も小さいからピンポイントで見つけるの大変なのよ」
「ニティアさん、最初の光の魔法は……」
「……ここが家じゃなければ地面ごと抉り取ってやっつけられるんだけど……そういうわけにもいかないでしょ?だから床を傷つけないレベルの超微細な針を突き刺すことであいつの居場所を特定して、そのポイントを引っ張り出したの。あ、ごめんね!そこ穴あけちゃって!」
慌てて穴の空いた床に魔力を込め、土で穴を埋めるニティア。
『ふ〜ん……やるじゃん』
ボソッと呟いたゼフィリア。一瞬間を置いた後、外のことを思い出して声を荒げた。
『って!外は大丈夫なの!?助けに行かないと!』
その声に笑って答えるニティア。
「気になるなら見てきたら?」
⸻
数分前
「さて、どうしたもんか」
倒しても倒してもキリがない虫達。そして、中でもアラクネアの近くに陣取っている大きな甲虫が2匹。こいつらがフィニスとルシオの攻撃をことごとく防いでくる。
「家の周りに結界を張り終わりました。攻撃補助に入りますね」
「いや、攻撃はいいや。それよりもスピードの方を頼める?」
「ん?」
ルシオの提案に首を傾げるフィニス。その様子を見ていたルシオが、フィニスの耳元でぼそぼそと何かを呟く。
「なるほど(笑)」
「面白そうだろ(笑)。アルテア、補助が終わったらとりあえず一瞬でいい。目眩し的なの出せるか?」
「え?あ、はい。できますけど……」
補助魔法をかけ終え、アルテアが杖を構える。
「いきますよ……」
「おう!」
「アルテアちゃん頼んだよ〜」
アルテアの背後にある家の中から、白い光が溢れ出すのと同時に、高く掲げたアルテアの杖からも眩い光が放たれた。
あたり一面が白く染まったタイミングで、フィニスがアラクネア目掛けて駆け出し、ルシオもその後ろを追いかけていく。
小さな虫達は突然の眩しい光により目が眩み、戦う相手がどこにいるのかを見失ったのだろう。あたりをキョロキョロと見回していた。
そんな虫達を無視して突撃しているフィニス。既にアラクネアのすぐ目の前まで迫っていた。
「うぉ〜りゃ!」
キィーーーン
フィニスが剣を振りかぶると同時に、剣の効果を発動させる。
アラクネアを守ろうと、甲虫がアラクネアと剣の間に入り込んでくるも、フィニスの剣は勢いを止めることなく、甲虫を真っ二つに両断する。しかし、その剣の軌道は止まることなく、斜め後ろにいるルシオ目掛けて振り抜いていた。
ガキーン!
ルシオがフィニスの剣を受け止め、今度はルシオが槍を構える。
キィーーーン!
フィニスの剣同様、高音を発生させる槍。
「おかわりどうぞ!」
アラクネアを守ろうと間に入ってくる甲虫。超振動している槍は、そんな甲虫を軽々と貫通。そのままアラクネア本体のコアを貫いた。
パキーン
『アハハハハハ……ハハ……ハ……』
白い炎に包まれて消滅して行くアラクネア。アラクネアの消滅とともに、あたりにいた無数の虫達も粉々に消えていった。
「お疲れ様でした」
「作戦通りってな」
「あのまま盾ごと切れてたらウケたけどな(笑)」
「いや、ウケねーよ」
⸻
家の中から見ていたゼフィリア。
『あんなにあっさり……』
誰1人怪我をすることなく、すんなり魔物達を撃退して見せた4人に唖然としながらと、エレノアがいる家の奥へと戻っていった。
コメント
1件
うわ、53話も一気に読んだけど今回の戦闘めっちゃ熱かった🔥 ニティアさんのあの細かい針の魔法、床傷つけずにピンポイントでスポアリン引きずり出すの冷静すぎて逆に怖いわ…笑 フィニスとルシオのコンビネーションも息ぴったりで、甲虫ごと貫くところ鳥肌たった🕷️💥 でも何より、家の中のエレノアとアオを守るために全員が役割を理解して動いてるのが本当にカッコよかったです…読んでて胸熱になりました🖤 月白さんの丁寧な戦闘描写、毎回引き込まれます。次話も楽しみにしてますね🌙
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