テラーノベル
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スタートーー‼️
――深夜11時43分。
海底遺跡の巨大な門が閉じたあとも、アルカディア号はしばらく動かなかった。
船内には、奇妙な静けさが漂っている。
美月は甲板から海を見つめていた。
さっきまで青く輝いていた海底遺跡は、今では完全に闇の中。
「……あの黒い船」
美月が呟く。
「気になるよね」
隣でコナンが答えた。
「うん。あの船には、何か秘密があると思う」
「僕もそう思う」
コナンは腕を組む。
「それに、あの黒い船に乗っていた人物。僕たちが知らないことをかなり知っていた」
「五十年前のことも……」
「ああ」
そのとき――
船内から大きな音がした。
――ガタン!
「何?」
二人は顔を見合わせる。
コナンが先に走り出した。
「行ってみよう!」
⸻
◆
音がしたのは、船内の古い資料室だった。
扉を開けると、床に古い書類が散らばっている。
「誰かがここを調べたみたい」
美月がしゃがみ込む。
その中に、一冊だけ分厚いファイルがあった。
表紙には――
『ALCADIA 乗船者記録』
と書かれている。
「乗客名簿だ!」
コナンが手に取る。
「五十年前のものだね」
ページをめくっていく。
乗客。
乗組員。
研究者。
船の関係者。
そして――
「……あった」
コナンの手が止まる。
「白石澪」
る あ .
902
1,370
#一般人
유리
41
そこには、確かに名前が記されていた。
その下には、別の名前。
しかし、その部分だけ黒く塗りつぶされている。
「誰かが名前を消してる」
美月が言う。
「しかも、かなり意図的に」
コナンは名簿を光にかざす。
「紙そのものを削ったんじゃない。上から特殊なインクを塗ってるみたいだ」
「消された名前……」
美月はじっと見つめる。
その瞬間だった。
――ピッ。
美月のカメラが勝手に起動した。
「え?」
シャッターが切られる。
――カシャッ。
撮影された名簿の画面には、肉眼では見えなかった文字が浮かんでいた。
『白石澪』
その下に――
『同行者 白石――』
そして、そのさらに下。
薄く残っていた文字が少しずつ浮かび上がる。
「……!」
美月が息をのむ。
そこに書かれていた名前は――
『白石 澪奈』
「澪奈……?」
コナンも驚く。
「白石澪の……家族かな?」
「でも、どうして名前が消されてるんだろう」
美月がページをめくる。
最後のページには、さらに奇妙な記録があった。
――乗船者総数、312名。
しかし、実際の乗客名簿に記載されている人数は――
311名。
「一人足りない」
コナンが呟いた。
「最初から一人、記録されてない……?」
美月は名簿を見つめる。
すると、ページの端に小さな手書きの文字があることに気づいた。
――『彼女は乗客ではない。』
「彼女……?」
「誰のことだ?」
コナンが周囲を見る。
そのとき――
資料室の奥から、かすかな音が聞こえた。
――カタン。
「誰かいる!」
二人が振り返る。
棚の向こう。
そこには小さな箱が落ちていた。
コナンが近づき、箱を拾う。
蓋には、三日月と涙の紋章。
「また、このマークだ」
美月が呟く。
箱を開けると、中には古いペンダントが入っていた。
三日月型の飾り。
その中央には、小さな青い石。
「これ……」
美月は目を見開く。
「五十年前の写真に写っていた女の子が持っていたものと同じ」
コナンがペンダントを見る。
「つまり、その女の子は白石澪奈……?」
「まだ断定はできないよ」
コナンは慎重だった。
「でも、かなり可能性は高い」
美月はペンダントを手に取ろうとする。
その瞬間――
――カチッ。
船内の照明が消えた。
「また停電!?」
真っ暗になる。
そして――
船内放送が流れた。
『……乗客の皆様へ』
古い女性の声。
『アルカディア号は、まもなく――』
そこで声が途切れる。
代わりに、別の音声が流れた。
『第七保管室を確認してください』
コナンが顔を上げる。
「第七保管室……」
美月が振り返る。
「前にも出てきた場所だよね」
「ああ。でも、今度は船内にある」
⸻
◆
二人は船内を進んだ。
アルカディア号は五十年前の状態を残している。
廊下の壁。
古い客室。
閉じられた扉。
そして――
第七保管室。
扉には三日月の紋章が刻まれている。
「鍵は?」
美月が尋ねる。
コナンはドアノブを調べる。
「鍵穴がない」
「じゃあ、どうやって開けるの?」
「……たぶん」
コナンは美月のカメラを見る。
「これだ」
美月がカメラを扉へ向ける。
――ピッ。
カメラの画面に、三日月のマークが表示された。
そして――
扉が開いた。
――ギィィィ……。
中には、一台の古い映写機。
机。
そして大量のフィルムが並んでいた。
「すごい……」
美月が部屋を見回す。
机の上には、一枚の封筒。
そこには――
『未来の記録者へ』
と書かれている。
美月が封筒を開く。
中には一枚の紙。
そこには、白石澪の文字と思われる文章が残されていた。
「この船に乗った少女は、私の妹ではありません。」
「……え?」
美月が固まる。
コナンも目を見開く。
さらに続きがあった。
「彼女は、海で見つかった子です。」
「名前も、過去も分かりません。」
「ただ一つ分かっていることがあります。」
次の一文を見た瞬間――
美月の表情が変わった。
「彼女は、蒼月の涙を守るために選ばれた存在です。」
「……選ばれた?」
コナンが呟く。
そのとき。
映写機が突然動き始めた。
――カタカタカタカタ……。
「えっ!?」
スクリーンに映像が映る。
そこにいたのは――
五十年前の白石澪。
そして、あの少女。
少女は何かを抱えている。
それは――
蒼月の涙。
『この子には、不思議な力があります』
白石澪の声が響く。
『遺跡に近づくと、蒼月の涙が反応するのです』
少女が宝石に手を近づける。
――青い光。
遺跡全体が輝く。
『だから、私たちはこの子を守らなければならない』
映像が切り替わる。
アルカディア号の船内。
大勢の人が走っている。
警報。
青い光。
そして――
黒い影。
『彼らが来た!』
白石澪の声。
『蒼月の涙を狙っている!』
映像の中で、少女が白石澪に何かを渡す。
――ペンダント。
『これを持っていて』
『でも……』
『大丈夫』
白石澪は微笑む。
『いつか、きっと誰かが真実を見つけてくれる』
その瞬間――
映像が激しく乱れた。
そして最後に一枚だけ、静止画が映る。
少女。
白石澪。
そして――
その後ろに立つ、もう一人の人物。
「……!」
コナンの目が鋭くなる。
「この人……」
美月も画面を見る。
そこにいたのは――
第7章で海底遺跡に現れた黒い船の人物と、よく似た姿。
「五十年前から……いた?」
美月が呟く。
だが、映像には顔が映っていない。
その人物がゆっくりと振り返ったところで、フィルムが切れた。
⸻
◆
沈黙。
美月はしばらく何も言えなかった。
「じゃあ……あの人は五十年前から関わってるの?」
「可能性はある」
コナンが答える。
「でも、同一人物だと決めつけるのはまだ早い」
コナンは机の上を調べる。
すると――
「ん?」
一枚の紙を見つけた。
そこには数字が並んでいた。
07-17-23-00
「またこの数字だ」
美月が言う。
「07:17、23:00……」
コナンは考える。
「これまで出てきた時間と一致してる」
そして紙の裏側には、一行だけ書かれていた。
――『月が真上に来たとき、最後の乗客を探せ。』
「最後の乗客……」
美月が呟く。
すると突然――
船内のスピーカーが鳴った。
『……美月』
「!」
自分の名前を呼ばれ、美月は振り返る。
『あなたが探している少女は――』
ノイズ。
そして――
『まだ、この船にいる』
「……!」
コナンがスピーカーを見上げる。
「誰だ!?」
返事はない。
ただ、船の奥から――
小さな足音が聞こえてきた。
――コツ。
――コツ。
――コツ。
美月が振り返る。
「……誰かいる」
二人は廊下へ出る。
そこには誰もいない。
ただ床の上に――
一枚の古い写真が落ちていた。
美月が拾う。
写真には、五十年前のアルカディア号。
その甲板に立つ少女。
そして――
写真の裏には、たった一言。
『彼女の名前を思い出せ。』
美月は写真を強く握った。
「……この子は誰なの?」
その瞬間。
船の窓の外に――
青い光が浮かんだ。
そして、その光はゆっくりと――
人の姿へ変わっていった。
「……!」
少女のシルエット。
五十年前の写真と同じ姿。
少女は海の向こうから、美月を見つめている。
そして、かすかな声で――
「……美月……」
名前を呼んだ。
美月が息をのむ。
「どうして……私の名前を……?」
少女は答えなかった。
ただ、指を海の彼方へ向ける。
そこには――
再び姿を現した、あの黒い船。
そして船上には、謎の人物。
その人物が静かに言った。
「次の航海が始まる」
――汽笛が鳴り響く。
ボォォォォ――――ン……。
アルカディア号の時計が、静かに動き始めた。
時刻は――
0時00分。
五十年前と同じ、深夜0時。
止まっていた時間が――
再び動き出した。
――第8章・終――
次章予告
第9章「名もなき少女の記憶」
五十年前のアルカディア号に乗っていた、謎の少女。
彼女はなぜ「蒼月の涙」に選ばれたのか。
そして、なぜ今になって美月の前に姿を現したのか。
美月たちは、少女の過去を知るため、アルカディア号の最深部へ向かう。
そこで発見された一枚の写真。
その写真に写っていたのは――
現在の美月と、驚くほどよく似た少女だった。
コメント
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いぬ🐶さん、第8章読みました。 乗客名簿の311人目と白石澪奈の名前——消された記録の表し方が本当に巧いですね。それに07:17-23:00の数字がまた出てきたことで、時間が単なる暗号じゃなく物語の芯と繋がっている予感が強まりました。写真の裏に「彼女の名前を思い出せ」と書かれているのも、読者にも問いかけてくるようでゾクっとします。 そしてあの黒い船の人物が五十年前からいた——これで過去と現在が一本の線で繋がり始めましたね。少女が美月の名前を知っているのも気になる…。続きが待ち遠しいです。