コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
⚠︎少しグロ表現が含まれます。苦手な方はご覧にならないことをお勧めします。
『ただ君にだけは______。』
………………………………………………………
この世には『奇病』と言うものが存在する。
普通の病気とは違い、治療がとても困難なため、かかったものはほとんど亡くなることが多い。
種類もさまざまで、身体を傷つけるもの、一部を変化させるもの、精神的に傷ついていくもの。
『奇病』を患ったものは大抵普通の生活は送れない。
治る可能性がほとんどない、真っ暗な未来を見ながら『奇病』の苦しさを耐え続ける毎日に嫌気がさし、自ら命を断つものもいる。
彼らは死ぬ前に決まってこう言う。
『次は”普通”に過ごせますように』
泣く元気さえ残っていない、無表情で。
俺は暇那津。『奇病持ち』だ。
俺の奇病は『天使病』。
その名の通り背中に小さな白い翼が生えていて、だんだん翼に栄養を吸われていく病気。
最初は風邪のような症状がだんだん痛みに変わる。最後には激痛と栄養失調の中、翼が背中を突き破り、自分の姿を保てないまま死ぬ。
その姿は一生を精一杯生き抜ぬき、力尽きた天使のような姿から『天使病』と名付けられたらしい。
本当にタチの悪い病気だ。
発症したのは小学4年生。医者からは余命10年と言ったところだと伝えられた。
小学生の頃からずっと翼が原因でいじめが起きていた。
飛べもしない、動かすことさえできない、ただ栄養を吸い尽くすだけのこの翼。
『気持ち悪い』、『変』、『おかしい』。そんな言葉ばかり浴びせられていた。しかも、生徒だけではなく、教師、近所の人まで。
中学校に入る頃には不登校になっていた。どうしてもあの場所へ行く気が起こらなかった。
勉強は病院で看護師さんに少しずつ教えてもらいながら頑張った。
高校入学時には翼を隠しながらしっかり過ごそうと思った。いわゆる高校デビューである。
誰にも気づかれないように。
その頃は風邪症状が毎日あったため、体育、水泳などは更衣をせずにすんだ。
周りからも、『体が弱い子』という認識になり、好都合だった。
そして今年、高校2年生いっぱいで限界と告げられた。早くても夏。運が良ければ年越しはできる…そんな状態らしい。
現在、秋、11月。夏をなんとか乗り切り、早死には避けることができた。
しかし体調は悪化しつつ、本当にいつコロっと死んでもおかしくなかった。
赤「今年かぁ……、年越しまでもつのか…」
正直俺としてはもう死んでもいいのかもしれない。毎日のように続く頭痛と吐き気、貧血、栄養不調。もう懲り懲りだ。
赤「でもまぁ…死ぬのは怖いよなぁ、」
死ぬ時、想像するだけでもゾッとする。
赤「……ハァ、気分転換でもしよ、」
カンカンカンッ(登
ガチャ(開
ぶわぁっ
屋上に上がると一気に風が吹いてくる。
本当は閉まっているが、鍵が壊れているのを発見してからお気に入りの場所だった。
気分が下がった時は毎回ここに来る。
赤「んんっ……!グィー」(伸
「ふぅー…気持ちぃー」
深呼吸をすると少しだけ軽くなったような気がする。
赤「………ケホケホッ、」
酸素が薄いのか、風が強いのか、ここに来るとどうしても咳が酷くなってしまうので、あまり長くはいられない。
赤「ケホケホッッ、!……、」
???「咳してるなら帰れば?」
赤「え?クルッ」(振
声がした方に目を向けると、フェンスに寄りかかっている人がいた。
紫髪でアホ毛がピンっと起立しているその人は吊り目気味の黄金色の瞳を気だるそうにこちらに向けながら声をかける。多分同級生だろう。
赤「大丈夫、wいつもこんなんなんで、コホッ」
???「体調悪いんじゃねーの?」
赤「体弱くて、w」
???「じゃあ余計帰った方が良くない?あと普通に邪魔、」
苛立っているのか、少し大きな声で再度帰るよう促すその声には、少し寂しそうな声音が混じっているような気がした。
赤「ッッ、…ここ、結構気に入ってるし、もうちょいいる、」
???「………そ、」
テクテクテクッ(歩
バサッ(掛
赤「え?」
???「暑い、持ってて」
赤「………ありがと、」
ぶっきらぼうに俺の肩にあいつの着ていたパーカーが投げつけられる。
暑いわけがない。もう冬間近の屋上だ。むしろ寒すぎる。
これでも彼の優しさなのだろう、とありがたく受け取った。
それからというもの、俺は毎日屋上に通うのが日課になった。原因はあのアホ毛がいるからである。
2、3回通うようになってからあの人のことは少しわかった。
名前は『紫音湋流真』(しおんいるま)。生徒に暴言、暴力も振るったことがある問題児らしく、いわゆる不良と呼ばれるやつだった。
正直その噂を信じる気はさらさらない。今まであいつに暴力を振るわれたことはないし、俺が長居しても怒ったことはない。逆にあいつから近づこうとしていないように見えていた。
少し喋るようになって、確かに言葉はきついが悪いやつなわけでもない。きっとあいつの見た目がそう思わせているだけだ。
カンカンカンッ(登
もう見慣れた階段から今日も屋上に上がる。
ガチャ(開
ふわぁ、
嬉しいことに今日はそれほど風は強くないため寒さもマシだった。
???「今日も来たん?」
赤「毎日来るよ」
???「悪化するぞ?」
赤「いいよ別に、w」
いつも通り短い会話を済ませ、そいつの隣に腰をかける。
この時間、特に何かを話したりするわけじゃない。寒すぎる風を浴びながらゆったりと過ごす。
ただ、今日違った。
???「…なんで来んの?」
赤「え?なんで、?」
???「俺不良って有名だし、邪魔って言ったし」
赤「あー、不良は別に気にしてない…というか信じてない」
???「っ……」
赤「あとは俺が来たいから。居心地いいんよ」
???「…………名前は?」
赤「暇那津」
紫「…知ってると思うけど、紫音湋流真。よろしく、」
赤「っ!よろしく、!」
初めて自分のことを話すそいつは少し照れくさそうな寂しそうな表情をしていた。
紫「、赤、はなんか、あんの?」
たどたどしく名前を呼びながら話し始める。
赤「なんか?」
紫「体弱いって…」
赤「あぁ……」
どうやって誤魔化すか考え始めた思考をふと止める。
もしかしたらこいつになら言ってもいいかと思ってしまう。
わかってくれるのではないか。受け入れてもらえるのではないか。そんな期待が膨らむ。
赤「………紫。否定しないって、誰にも言わないって……約束する、?」
紫「否定?」
赤「ッッ、」
パチッパチッ………スルスルッ(脱
紫「え?なんで脱いで……」
俺は上半身のシャツを脱ぎ捨てて紫に自分の背中を向けた。
最初は驚いていた紫もだんだん暗い表情になっていく。
紫「…………それ………、」
赤「ッッ、俺、……天使病なんだよねッッ、」
紫「…………」
赤「き、気持ち悪いよなッッ、…ごめんッッ、」
何も言わない紫がだんだん怖くなっていく。わかっていたことだ。最初からこの翼を気持ち悪く思わない奴なんていない。俺だって自分が気持ち悪く思える時さえあるのに。
紫「…………それだけ?」
赤「え、?」
紫「だから、それだけ?」
赤「、?」
紫から告げられた一言。『それだけ』。今その一言で済ませられることが起きていただろうか。
紫「俺、そもそも…興味ないし………」
またもやたどたどしくそう告げる紫。
『興味ない』。翼が生える生えないなんてどうでもいい。
今まで一度も言われたことない言葉だった。否定もせず同情もせず、ただ一言、興味がないと。
気づいた時にはもう遅かった。紫の方を振り向きながら水滴が溢れ出していた。
赤「ッッ、ポロポロッ」
紫「ッッ⁉︎、赤ッ、ちょ、違くて……!」
赤「ッッ〜、ポロポロッ」
もっと泣き出す俺に紫はどうすればいいのか分からず慌てて謝罪の言葉を探しているように見えた。
俺は謝罪される前に言わないといけないことを言う。
赤「紫ッッ、ポロポロッ」
「ありがとうッッニコッ」
満面の笑みを浮かべ、ただ一言。感謝の言葉をあなたに。
赤「ヒグッ………ヒグッ……」
紫「………落ち着いた、?」
赤「ん、ありがとう、」
紫「別に、」
あのあと紫はギャン泣きする俺に肩を貸してくれた。
別にそれだけで、さすったりとか、撫でたりとかはせずに、ただ俺が落ち着くまで静かに待っていてくれた。
紫「…………赤、はさ、」
赤「っ、?」
紫「風邪って……その天使病ってやつのせいなんだよな、?」
赤「そう、これ、どんどん酷くなってくんの」
紫に全てを話す。天使病のこと。発症し始めた頃。終わりを迎える余命の話。
上手く言葉に出来ていないところも、紫はしっかり聞いてくれた。
紫「…………そっか、」
赤「ん…まぁ、頑張って限界まで生きるつもり」
紫「……………俺も、ボソッ」
赤「ん?」
紫「多分…赤なら、わかってくれる、」
独り言のように自分に一言一言唱える紫。突然なんの話かと思ったが、すぐにわかり、目を見開く。
紫はさっきの俺と全く同じ行動をして、俺に背中を見せる。
紫「俺、さ…………」
紫の背中には真っ黒な小さい翼が生えていた。
開いた口が塞がらない。目を見開いたまま瞬きでさえ忘れてしまうほどの衝撃の事実だった。
赤「悪魔病………」
紫「赤みたいにしんどくなったりはしないんだけどさ、」
『悪魔病』
どうやら死ぬことも、栄養を吸われることも、風邪症状も出ない。はっきり言って人体には翼がついてるだけで、なんの影響もないらしい。
ただ、自分が思っていること、やりたいことと全く正反対、もしくは違うことを始めてしまう。
時にはそれが、暴言や暴力になり変わり、人を傷つけてしまう時だってある。しかし、抗おうとすると酷い頭痛が襲ってくるらしい。抵抗時間があまり長いと息が苦しくなって来たそうで、それ以来誰も傷つけないよう生きてきた。紫の奇病は精神的にエグられていくものだった。
きっと最初に俺にパーカーを投げつけてきたのは、羽織ろうとして投げてしまったのかもしれない。
紫「だから…あんまり、近づきたくないんだよな…人」
近づこうとしなかったのは、自分も他の人も、下手に傷つけるのを防ぐためなのだろう。途切れ途切れで話すのも、自分の言葉を確認しながら話しているから。
不良と言われている紫。きっと、1番怖いのは紫自身なのに。
赤「頑張ったね……紫」
俺は紫と同じように一言。肩を貸しながら言葉をかける。
紫「………ッッ、ポロポロッ、」
それ以上の言葉を伝えるつもりはなかった。ただ側にいるだけで、いてくれるだけで、安心する感覚はわかっていたから。
親は俺が中学校に上がったあたりで育児放棄した。毎月決まった額が送られてくるたびに、1ヶ月の区切りを実感する。
別に十分生きていける額が送られてくるので、辛さはない。ただもしこの翼が生えなければ……と考えると、どうしても翼に対しての怒りが湧いてくる。
なんで、なんでなんでなんでなんでなんでッッ!!!
………………………………………………………
紫「赤、?どうした?ぼーっとして」
赤「え、?」
いつも通りの屋上、今日は雨が降っていたから、屋根の下で話をしていた。
なんとなくぼーっとしていると、時々過去のことが蘇ってくる。酷く辛い、できるなら消したい過去である。
紫「赤?体調悪い?」
赤「大丈夫…ちょっとな、」
紫「そ…しんどくなったら、無理しない方がいい」
赤「気をつけるよ」
今日は雨のせいか頭痛が酷い。頭が働かない。もともと低気圧には弱いので明日には治るだろう。
赤「紫、ちょっと横になってもいい、?」
紫「っ⁉︎え、ここ?固くね?」
赤「や、大丈夫、」
紫「………じゃあこれ…邪魔だから、」
紫はパーカーをフードの中に全てしまって枕のような状態で渡してくれた。
悪魔病のせいで素直に言えないが、優しさはちゃんと伝わってくる。
赤「ありがとう…ちょっと寝るわ、」
感謝を伝え、深い眠りに落ちた。
赤「ん”ん、………ふぁ、」
紫「あ、起きた」
目を覚ますと隣には紫がいた。俺が起きるまで待っていてくれたのだろう。
赤「どんくらい寝てた?」
紫「10分くらい」
寝ても頭痛はとれず、むしろもっと痛くなったような気がする。
中途半端に寝たからだろうか、と思いながら、もうすぐ休み時間が終わることに気づく。
紫は授業にはあまり出席しない。学校に来てからはほとんどの時間ここで過ごしていた。
赤「じゃあ、俺戻るわ、」
紫「ん、頭痛は?」
赤「多分低気圧だから大丈夫、」
紫「それならいいけど、」
紫と別れ階段を降りる。今日はやけにいつもより長く急な階段に見えた。
カンカンカンッ(降
テクテクテクッ(歩
頭が痛い……頭痛が酷い……吐き気がする……体がだるい……、
赤「ッッ、バタッ(倒」
モブ「ッッ⁉︎ちょ、誰か!先生呼んでッッ!人倒れたッッ!」
ザワザワザワ……
バタバタバタッ(走
先生「おいッッ!暇っ!大丈_____」
プツンッ_______
最近仲良くなった。毎日来るから、少し気になってしまった。
いつのまにか赤と会うのが楽しみで学校に行くようになった。
誰も近づこうとしない、仲良くなろうともしない………いや、俺がしていないだけで、もう少しやり方はあったのかもしれない。
突然発症した奇病。何を言うにも頭痛がとまらない。そして結局言いたくもない傷つける言葉を発する毎日。いつのまにか『不良』と呼ばれていた。
もう誰とも話したくなくなってしまった。そんな時に出会った赤。最初は早く突き離したくて少しキツイ言い方をして……と思った。
でもなんとなく、赤にだけは出来なかった。キツくならないように、でも自分に無理がないように。
大抵の奇病は治療法がない。赤も俺もまだ発見されていない。
最近、だんだん赤も体調が悪くなって来ていた。俺と会う時間のほとんどを睡眠に使う。時々一言二言交わすくらいで、もう喋る元気さえ無くなってきているのかもしれない。
紫「ッッ、…………」
赤の苦しさが分からず、変わってあげることもできない。ただ見守ることしかできない自分に腹が立ってくる。
紫「赤はッッ………毎日戦ってるのにッッ………」
ピーポーピーポー(遠
紫「…………騒がしい、」
誰か倒れたのだろうか。
そういえば、赤と別れる時、少し辛そうにしていた気がする。
紫「………ッッ!、まさかッッ、」
したくもない想像をしてしまう。もう12月中旬。そろそろ赤の………
紫「ッッ、!バッ」(立
バタバタバタッ(走
カンカンカンッ(降
バタバタバタッ
急いで階段を降りて下の階に出ると生徒が密集していた。
嫌でも聞こえてくる会話。
モブ「どうしたの、?ボソッ」
モブ「倒れたんだってー、ボソッ」
モブ「え?誰?ボソッ」
モブ「知らない、先生が『暇』って言ってたけど、ボソッ」
モブ「知らない、どこのクラス?ボソッ」
紫「ッッ、暇ッッ、………」
その中に知っている名前が出て来た。それは紛れもなく、赤の苗字だった。
紫「先生ッッ!」
先生「ッッ⁉︎紫音、」
モブ「え、不良、⁉︎」
モブ「なんで今……」
ザワザワザワ…
あんなに恐れていた会話も怖いと思う暇さえない。とにかく、赤の側にいたい。きっと、もう消えてしまう赤の側に。最後くらいは。
紫「赤はどこ行った?」
先生「暇ならさっき先生が電話して____」
紫「どこ行ったって言ってんだよッッ!」
先生「ッッ、1番近い六奏総合病院に____」
ダッ(走
先生「あ、おいッッ!紫音ッッ!」
口調が強くなっても、先生に呼び止められても、もうどうでも良かった。ここから走って約15分。
____俺は君に伝えないといけないことがある。
赤?『やっとか、とうとう終わりだなw』
赤「うるせぇ、だまれ」
赤?『強気だなwもうお前の体も限界。残念だなぁ、年越しまでもたなくてw』
赤「………わかってたことだし、」
赤?『もうすぐ突き破るんじゃねぇーの?』
赤「ゾワッ、」
赤?『www怖がってやんのw』
赤「ッッ、………」
俺に生えている翼の人格が話しかけてくる。
俺の顔をコピーして全く同じ顔で発言する翼。ただただ気持ち悪い。その性格も、この現象も。
赤?『もっとしんどい人生で自殺を図ると思ってたけど………ずいぶん楽しそうだったなw』
赤「…………楽しいよ、これからもずっと、楽しくなるはずだった」
赤?『”これからもずっと”?バカか?wどうせ年越しには死んでんだぜ?w』
赤「お前が来なければの話だ、ギロッ」(睨
赤?『うぇー、こっわ、』
目の前の俺は白い大きな翼が生えていて、見た目だけ見ればまるで天使。なのに性格は悪魔そのものだった。
赤?『………チッ、もう目覚めんな、』
赤「…………」
赤?『まぁ、せいぜい苦しい最後を楽しめよw』
赤「………パチッ…ッッ、」
目覚めた途端激痛が走る。痛すぎてもうどこが痛いのか分からなかった。
他にも吐き気、貧血が襲いかかってくる。
赤「う”う”う”ぅぅぅぁあ、ッッ!」
あまりのしんどさにどうしても声が漏れる。
赤「い”いぃぁ、ッッ、……あ”あ”あ”ぁぁッッ!」
もう死んでしまうのかもしれない。
記憶がある頃にはもう生えていた翼に殺されるのかもしれない。
ずっと苦しかった。親も、友達も、先生でさえ、誰も頼ることが出来なかった。
___『自殺を図ると思ってたけど』
図ったよ。何度も何度もいろんな方法で試そうとした。でも、直前で怖くなってやめてしまう。諦めてしまう。
次、怖くなくなった時に、また。
そんなことを繰り返して、一度も怖がらないことなんてなかった。
どれだけ苦しくても、辛くても、死ぬ以上に怖いことなんてない。
これからもこんなことを繰り返しながら、1人激痛の中死んでいくんだろう。
_____そう思ってたのに。
屋上で話しかけられた時にはすごく驚いたけど。君と会って。1ヶ月もなかったけど、毎日毎日話して、昼寝して、時々授業サボったりして……w
初めて、”普通の人”になれた気がした。
嬉しかった、本当に。紫にだけは、存在認めてもらえていた。許してもらえた。
そんな当たり前が、俺にとっては宝物で。いつのまにか、君自身も
赤「宝物になっててッッ、………wポロポロッ」(泣
…………ッッ、やっぱ辛いな。死ぬのは怖い。
でも………最後だけ、一言だけでいいから、
_____君に伝えたかった。
ハッハッハッハッ!(走
走っていた記憶なんてない。気づいたら病院に着いていた。
紫「ッッ、あのッッ!暇さんの病院室はッッ⁉︎」
看護師「どちら様でしょうか?関係者でないと___」
紫「いいからッッ‼︎どこだよッッ⁉︎」
看護師「ッッ、………209号室ですが、あの、どちら様でッッ____」
ダッ(走
ッッ、209ッッ、
バタバタバタッ(走
3段飛ばしで階段を登っていく。一刻も早く、赤の所へッッ………早くッッ、!
バタバタバタッ
203………204………205ッッ、!
…………あったッッ、!
ガラッ(開
紫「赤ッッ!」
赤「あ”あ”あ”あ”ぁぁぁッッ‼︎ポロポロッ」
紫「赤ッッ、」
そこには、無駄に広い部屋の中にポツンと置かれているベッドの上で、上半身裸の赤が苦しそうにしていた。
翼はちょっとずつ大きくなっていく。
紫「赤ッッ、!俺だ、わかるッッ?」
赤「ッッ!………い”…紫ッッ?ポロポロッ」
紫「そうッッ、俺、紫ッッ」
赤「あ”あ”ッッ、紫ッッ、紫ッッ‼︎ポロポロッ」
どんどん大きくなっていく翼、赤の背中から溢れて止まらない血液がベッドシーツを真っ赤に染めていた。
紫「ッッ、赤ッッ、俺、ちゃんと赤に伝えないといけないことがあるッッ」
赤「おッッ、俺もッッ……!……う”ぅぃッッ⁉︎ッッ、」
紫「赤ッッ、俺はッッ………」
ドクンッ
紫「う”ッッ⁉︎、」
紫?『無駄だってwお前は一生素直になれねぇで死ぬんだからw』
紫「俺はぁッッ‼︎」
ドクンッドクンッ
ズキズキズキッ
紫?『抗うなよ?w死ぬぞ?w』
頭が割れそうで、心臓が痛くて、声が出ない。俺の翼の人格が邪魔をする。
昔からそうだった。ずっと俺の邪魔をして、気づいたら嫌われている。
俺と全く同じ顔で、全く正反対のことを喋る化け物。
でもッッ、赤の方がきっともっと苦しい。しんどい。だから……だからッッ、
紫「赤ッッ!俺はッッ、!」
赤「い”い”ぃぃ、ッッ、ポロポロッ」
しんどいはずなのに、一生懸命こっちを見て聞いてくれる赤。
最後まで、本当に、
なぁ、赤。
俺さ、お前と会って変わったんだよね、
少しだけ、人と向き合おうって思ったんだよね、
君を、君に初めてッッ、
______好きだと思ったんだよね。
だからッッ……
赤「あ”あ”あ”ぁぁッッ、!」
紫「赤ッッ!俺はッッお前がッッ‼︎」
赤「ッッ、!ポロポロッ」
紫「ハァ、ハァ、ハァ……俺ッッ、と!」
「付き合ってッッ、くれますかッッ?ニコッ」
最後くらい。笑おうと思った。だって嫌じゃん。
泣きながらされる告白なんて、かっこよくなくね?w
ねぇ、紫。ずるいでしょ。その笑顔は、
俺もう死んじゃうのに。紫もわかってるはずなのにッッ、
______もっと好きになっちゃうじゃんッッ
赤「ッッ、!………ポロポロッ」
その瞬間純白の翼と漆黒の翼があらわれる。
まるで、翼が自我を出したように。
そして空に向かって静かに消えた。
【治療法】
天使病
“最高の幸せを知ること”
悪魔病
“天使病を患った人に本音を伝えること”
「紫ーっ!早くいこっ!」
「待てってw転ぶぞw」
「転ばんってw_____!」
「赤、愛してる」
「っ!ニコッ」
______俺もっ!
真っ青な空の下。楽しそうな2人の笑い声が響く。
あの悪夢のような日々に突然の出会い。
救ってくれた君に、助け出してくれたあなたに、伝えたかったことを告げる。
きっと、これからもずっと______。
『end.』