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かんな
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いつものオタ活の時間。
イソトマとアルエはソファに倒れ込んでいた。
「イソトマ様、すみません。二次創作を公式に持ち込むような真似を」
「いいんだ、アルエ氏。いや、良くはないけど。元々プレゼン資料の予定だったし。何より、ルシアンにさ、あの感じで圧をかけられたら、逃げられないよね」
「圧というか、ルシアン王子に声を掛けられた時点で詰みです」
「それな」
声を掛けられるきっかけを作ったのはイソトマだ。
自業自得と言って過言でない。
(まさか、こんなことになるなんて。オタクにとって最も神経質になる部分なのに)
二次創作は公式が見ていない所でこっそりと、ガイドラインに沿って行いましょう。
この世界に二次創作のガイドラインはない。せめて、プレゼン資料に仕上げるまでは、公式である本人たちにバレないようにしたかったのに。
『なかなか素晴らしいよ。イソトマの目には、私がこんな風に映っているんだね』
怒っているのか呆れているのかすらも、わからなかった。
只々、ルシアンがずっと笑っていたのが怖かった。
「リリーは、あんまり怒ってなかったですね」
「そうだね。他人事だったね」
冷静というより、興味がなさそうだった。
『この学園での僕は、自分じゃない別のキャラを作って演じているから。作り物のリリーの話って感じ。だから別に構わないよ、この程度』
要約すると「どうでもいい」だ。その反応は大変有難い。
(最近は素のリリーとルシアンの関係に胸熱だから、次の同人誌はルシリリのキャラが変わりそうだけど)
その前に考えるべきことがある。
「学園祭で頒布、本当になっちゃったね」
「まさかの、ですね」
イソトマはアルエと共に息を吐いた。
『私とリリーの関係を裏付けるようで良い読み物だ。絵が主だから、読みやすいね。学園祭で配って、皆に読んでもらおう。レイヴン商団のキャラバンも出店することだし、ちょうどいいよ』
ルシアンから降りてきた作戦は、それだった。
ディルクやノアルが言っていた狙いと同じだ。
イソトマだって、その作戦には賛成だ。
「せめて、僕の名前を伏せられればなぁ」
「僕も、イソトマ様の名は伏せるべきだと思います。リリーが本当は恋人ではないと知れた時、婚約者に戻りづらくなりますよ」
「それはまぁ、うん。そうだね」
ルシアンには、作者の名前にイソトマと書くよう言われている。
「これも作戦なのかな」
ルシアンの考えていることが、いまいちよくわからない。
「学園祭だと、あと二ヶ月くらい先ですね」
「だねぇ。原稿はほとんどできているし、あとはベタとトーンと背景……ちょうど仕上がるくらいかな」
アルエが考える顔をした。
「印刷所の確保については、ルシアン様にご相談されるのがいいですよ」
「そうなの?」
「機密文書ですし。魔法印刷に回すにしても、場所が限られます」
「機密文書って……まぁ、間違ってはいないか。そうだね、仕上がったらルシアンに相談しよう」
ルシアンから無事に奪還した原稿を、テーブルに並べる。
「イソトマ様の貫徹の結晶ですね」
「それだけじゃないよ。オタクの絆だよ。引き続き、絆、繋ごう」
「おー!」
二人で拳を上げる。
そこにタイミングよく、ディルクが帰ってきた。
「おかえり、ディルク。父様、何か話していた?」
「案の定、リリーの件を心配されていた。ルシアン様の指示通りに話をしてきたが、胸が痛むな」
ルシアンとリリーが偽カプだと知っているのは、作戦に関わっている七人だけだ。
イソトマの父親には本当のことは話せない。ディルクは当たり障りなく父親を慰めてきた感じだろう。
「こればっかりは仕方ないよねぇ。レイヴン商団を捕まえないと終わらない」
イソトマとしても胸が痛むが、どうしようもない。
「一日も早い解決のため、我々は漫画を完璧に仕上げましょう」
「そうだね。明日から、セインとノアルにも手伝ってもらおう」
「……描くのは、三人では駄目なのか」
ディルクが、ぼそりと呟いた。
「ん? 何々、どしたの、ディルク?」
「……いや、何でもない」
聞き取れなかったので身を寄せたら、誤魔化された。
アルエがディルクの肩を叩いている。
「漫画を作るのを手伝ってもらうの意味であって、描くのを手伝ってもらうって意味では、なかったんですよね」
「言い出した手前、反対もしづらい」
アルエが何となく、慰めているように見える。
ディルクが何となく、頷いているように見える。
二人でコソコソ話しているから、聞こえない。
不思議に思いながら、イソトマは拳を衝き上げた。
「それでは改めて気合を入れよう。頑張るぞー!」
「おー!」
アルエとディルクも拳を上げた。
趣味でしかなかった漫画が、プレゼン用の資料になって、今は悪者を捕まえる手段になった。
(不本意とはいえルシリリ公認になった訳だし。こうなった以上、頑張るのみ!)
気合を入れて、イソトマは手書きトーンを書き込み始めた。
コメント
1件
うわああ第28話読み終えたよ〜!!✨ イソトマとアルエの「オタクの絆」にめっちゃ胸熱🔥 ルシアンにバレた時の「ずっと笑ってたのが怖かった」って表現、めちゃくちゃエモい…! あの圧、わかる気がする😭💕 ディルクが「描くのは三人では駄目なのか」ってポツリ言ったところ、何か複雑な思いが透けて見えてグッときた…。 趣味がプレゼン資料になって、ついに悪者捕まえるための手段にまで昇華する展開、熱すぎる!! 次も絶対読みます、霞花怜さん素敵な作品ありがとうございます🌸