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檻の中の苺
エピソード8
再び訪れた、ブルーさんの自宅に向かう日。
昨日の夕方ごろ、城に帰ってきてからもあの罪悪感と申し訳なさ、そしてあの上目遣いのブルーさんの顔が頭から離れずに渦を巻いている。ブルーさんが僕の名前を呼んでくれたこと、
でも、それは僕が臆病で計画不足なせいで生まれた『嘘』だということ。
そして、そんなことも知らずに僕に微笑むブルーさんの顔……
そんな思考の状態で服を着替えていたものだから、思わずシャツのボタンを掛け違えてしまった。急いで直したあと、白く薄い、シンプルな手袋を付ける。
まとまらない思考のまま、昨日と同じようにボディーガードを1人連れてブルーさんの自宅へ向かう。
ピンポーン
インターホンを鳴らしたあと、十数秒経ってからガチャッと扉が開いた。
待ちに待ったインターホンが鳴り響き、左手で壁をつたい、右手を前に伸ばしながらできるだけ急いでドアに向かって開ける。
ガチャッ
その瞬間、あの、昨晩からずっと求めていた心の芯からとろけてしまいそうなほど、甘くて安心する赤いいちごの匂いが心を包んだ。
あまりに心地良い匂いのせいで、無意識に表情がほころんでしまう。
ブルー
「……シルバーさんですね…!
待っていました…!」
レッド
「ッ…はい…そうです……ッ
お邪魔します…」
靴を脱いで、スリッパに履き替える。
そして、家に踏み入れた
すると、ますます緊張感と罪悪感が心を刺す
その後、昨日と同じソファーに腰掛けると、ブルーさんはふと、思い出したかのように目を開いて、
ブルー
「あぁ、そういえば今日の朝、名店のショートケーキを注文していて…今、冷蔵庫で冷やしているんです。よかったら一緒に食べませんか…?」
レッド
「ショートケーキ…ですか…?
ブルーさんがよろしいのであれば、ぜひ…!」
そう答えると、ブルーさんは近くのキッチンへと引き返し、冷蔵庫からケーキを取り出して戻ってくる。それを眺めていた僕はハッとして手伝おうと立ち上がる。
そのとき、
ブルー
「あっ…」
フローリングの床の溝に足をとられ、今にも倒れそうになる。その瞬間、目の前がスローモーションかのようにゆっくりに見えた。
レッド
「危ない!」
気づくと、倒れかけていたブルーさんを受け止めている自分がいた。
顔が、近い。
甘い匂いが、今までより近くで感じる。
体を優しく支えられ、久しぶりに感じる人の体温に安心して身を預けてしまう
腕の中のブルーさんの体温が、じわりと伝わってくる。
心臓の鼓動が自分でも分かるくらいに激しくなって、もはやどちらの鼓動なのか分からない。
ブルー
「あ、ぅ…えっ…と…」
戸惑ってる…可愛い
目を泳がせて、必死に言葉を発しようとしていて…愛おしい…
しばらくの沈黙が流れたあと、ブルーさんは無理矢理声を引き出すかのように
ブルー
「あ、そういえばケーキ…」
僕もショートケーキのことを思い出し、振り返って確認する。
そこにはなんと、少々崩れているもののほぼ原型のままのケーキが床にまるで誰かが意図を持ってそっと置いたかのように落ちていた。
レッド
「え…!?ケーキ…綺麗なままです…!!」
ブルー
「え…?本当ですか…!?」
レッド
「ええ…少々崩れていますが…傾かずに綺麗に…」
その瞬間、お互い思わず笑いが溢れた。
ブルー
「ふッ…ははっ…」
レッド
「ふふっ…wふっ…」
先ほどまでまだ少し緊張感が漂っていた空気がふわっとほどけた
ブルー
「あの…シルバーさん
その…よかったらでいいんですが…タメ口で話しませんか…?呼び方も、呼び捨てにして…
あのっ、ほんとに、よかったらでいいんですけど…」
レッド
「…え?」
『タメ口』それは、今まで王族としてしか生きてこなかった僕にとっては使うことのない言語で、それと同時に…ずっと、憧れていたものだった…
そんな憧れの話し方を、ブルーさんと交わせるのか…?そんな、夢みたいな話があっていいのか…?
ブルー
「どう…ですかね…?」
おどおどとした、自信なさげな様子で、再び上目遣いで見つめてくるブルーさん
レッド
「ッ…!!
も、もちろんです…!!あ、もちろん…!
ブルー……!」
その瞬間、ブルーの表情がパァァと明るくなった
ブルー
「あぁ…!良かった…!!
シルバー……!」
白く澄んだ右目が、キラキラと輝いている。
そして、頬をほんのり赤く染めながら、小さな口を広げて嬉しそうに僕の偽名を呼ぶ姿。
そんな嬉しそうな笑顔を見て、ただでさえ激しい鼓動がさらに高まる。
ブルー
「えっと…そろそろ大丈夫だから…下ろして…」
恥ずかしそうに言うブルーの言葉で、はっと正気に戻る。見ると、まだブルーを支えたままだった。慌ててブルーを床にそっと降ろす。
数秒、静かな時間が流れた
レッド
「ケーキ…食べよっか…!」
ブルー
「っ…!うん…!」
体はまだ、お互いの体温で温かいままだった
コメント
1件
うわあ、もう最高でした……!「タメ口」に切り替わる瞬間のシルバーくんの戸惑いと嬉しさ、そしてブルーさんの上目遣いと「シルバー……!」って呼ぶ声、心臓がきゅってなりました。二人で笑い合った後の温かい空気感もたまらない。ケーキが無事だったおかげでほどけた雰囲気、運命っぽくてすごく好きです。続きが気になりすぎます〜!