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それぞれの帰り道
ORVASでの過酷な訓練が一段落し、公太、唯我、一祟はそれぞれの日常へと戻っていた。
だが、その心は決して穏やかではない。
三人はそれぞれ違う想いを胸に抱えながら、静かに日々を過ごしていた。
公太の焦燥
夕暮れの河原。
赤く染まった空の下、公太は土手に腰を下ろし、一人で風に吹かれていた。
頭に浮かぶのは仲間たちの姿ばかりだった。
唯我。
一祟。
そして、自分。
「唯我はゼノスを倒した……」
拳を握る。
「それだけじゃねぇ。アイツはさらに強くなってる」
悔しそうに俯く。
「一祟も新しい技を覚えたって言ってたし……」
そして、強く歯を食いしばる。
「くそっ……俺は――」
その瞬間。
拳から微かに熱が漏れ出した。
ネオ・コード《灼獄》。
赤い火花が指先で揺らめく。
(制御もできねぇ……)
脳裏に暴走した時の記憶が蘇る。
(また暴走したらどうする……?)
焦り。
嫉妬。
劣等感。
様々な感情が胸の奥で渦を巻く。
(置いていかれてる気がするんだよ……俺だけ)
夕焼けの風が吹く。
だが、公太の胸の炎は静かに燃え続けていた。
唯我の変化
町外れの神社。
静かな境内で、唯我は座禅を組んでいた。
木々の間から差し込む光が、静かに彼を照らしている。
「……強くなることしか考えてなかったな」
閉じた瞳の裏に浮かぶのは、美鈴との再会だった。
泣きそうな顔。
震える声。
長い間抱え続けてきた後悔。
その全てが胸に焼き付いている。
唯我はゆっくりと目を開いた。
「これからは――」
静かに立ち上がる。
「守るために強くなる」
龍焉刀に手を添える。
「誰かのために立てる男になる」
その言葉は誰に聞かせるでもない。
だが確かな誓いだった。
風が吹く。
唯我の瞳は以前よりもずっと穏やかで、そして強くなっていた。
一祟の平穏と祈り
久しぶりに寺へ戻った一祟は、境内で住職と話していた。
「その後はどうですか?」
住職の問いに、一祟は柔らかく微笑む。
「はい。畑中さんのもとで日々鍛えております」
その時だった。
「お兄ちゃん!」
元気な声が響く。
駆け寄ってきたのは妹の琴音だった。
喘息を抱えながらも、いつも笑顔を絶やさない少女。
一祟は優しく頭を撫でる。
「無理はしていませんか?」
「大丈夫だよ!」
そう言って笑う琴音。
しかし――
午後。
修行の最中だった。
「けほっ……けほっ……!」
突然、琴音がその場に崩れ落ちる。
「琴音!?」
一祟は慌てて駆け寄った。
顔色は真っ青。
呼吸も苦しそうだった。
急いで寝かせ、医師の診察を受ける。
幸い命に別状はなかった。
だが――
「薬が必要です。早めに用意してください」
医師の言葉に、一祟は静かに頷いた。
そして琴音の手を握る。
「待っていてください」
穏やかな表情の奥に、わずかな焦りが宿る。
「僕が必ず買ってきます」
立ち上がった一祟の瞳には、強い決意が宿っていた。
迫る影
――その頃。
白樺の森の奥。
月光だけが雪を照らしている。
音ひとつない静寂。
その中に、四つの影が現れた。
「……例のガキが町に出てきた」
低く呟いたのはレオン。
獲物を見定める狩人のような目をしている。
「いいじゃねぇか」
ダリウスが拳を鳴らした。
「もう誰からでも潰しちまおうぜ」
戦いへの渇望が隠しきれていない。
カインは冷静にモニターを見つめる。
「……金髪の少年は精神的に揺らいでいる」
画面に映る公太の写真。
「狙うなら今が最適だ」
そして最後に。
月を見上げていたセリーナが静かに口を開いた。
「……どの星が最初に堕ちるか」
冷たい声。
「見届けましょう」
モニターに映し出される三人の顔。
公太。
唯我。
一祟。
アビス四幹部は静かにそれを見つめていた。
誰を狙うのか。
誰が最初に襲われるのか。
その答えはまだ誰にも分からない。
だが――
確実に言えることがある。
新たな戦いは、すでに始まっていた。
コメント
1件
公太の焦りと嫉妬、すごくリアルでした。置いていかれる感覚って、誰にでもあるけど主人公が抱えてると余計に胸が締め付けられます。唯我が「守るために強くなる」と言い直した瞬間はぐっときました。一祟の妹さんも心配…。ラストで四幹部が動き出して、次誰を狙うのか気になりすぎます。