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午後九時。須藤が時間通りにビルから出てきた。「須藤。」
その声に、須藤はゆっくりと振り返った。
「……おや、これはこれは。雨宮家の玲子じゃないですか。」
冷たい笑みを浮かべる彼に、私は何も答えず、ただ視線を鋭く向けた。
「……よくも私たちを襲い、このシマを荒らしたわね。」
「それが親父の指示なんでねぇ。」
須藤は、まるで無意味なことを言うかのように肩をすくめた。だが、私の心には怒りが満ちている。これ以上、こんな奴に許しを与えるつもりはなかった。
「最後に聞くことだけ聞いておこう。」
「……なんだ?」
「このシマを荒らしたのはなぜ?」
須藤はしばらく黙っていたが、やがて低い声で答えた。
「全部、雨宮家前当主のせいですよ。久利組は雨宮家がこの都市の極道をまとめ上げた時に反対した者の集まりでね。雨宮家があの時現れなければ、彼らはまだこのシマに居続けられていたんだ。」
なるほど、そういうことか。彼らは、ただの反逆者ではなく、もっと深い理由があった。だが、それがどうした。私には関係ない。
「なるほど。でも、獅子合が調べたら、あなたたち、守ることを優先せず、お金儲けを優先して動いていたわよね?」
須藤は一瞬、顔色を変えた。だがすぐに冷徹な笑みを浮かべる。
「僕はそんな彼らをまとめ上げた。彼らを守るためにね。だから君と戦うよ、雨宮玲子。」
その言葉に、私は無表情で頷いた。
「私も、子供たちを、このシマを守るために最後まで戦うわ。」
言葉を交わすことなく、私たちは同時に剣を向け合い、激しく斬りかかった。
刀と刀が激しくぶつかり合う音が響く。その刃は火花を散らし、鋭い音を立てて交錯する。
「そういえば君も剣は得意だったね!」
須藤はその言葉を吐きながらも、手元から拳銃を取り出し、私に向けて発砲した。
サイレンサー付きのため、周囲には音が伝わらない。だが、私は反射的に剣でそれを防ぐ。弾丸が刀に当たる音が響く。
「くっ……。」
もう、体が思うように動かない。昔のように、弾を避けることなんてできない。だが、それでも私は剣を振るい続ける。防ぎ、斬り、また防ぎ、そして斬る。息も絶え絶え、体力も底をついていた。
そして、最後にお互い、剣を振りかぶり、全力で斬りかかる。
その刃が交わり、私はついに須藤の体を貫いた。
「すごいな……君、もう体の中が星屑でいっぱいで、思うように動けないはずだろうに……っ」
須藤は、口から血を流しながら、痛みに歪んだ顔を見せる。
「……っ、まさか……」
そして、彼は力なく膝をついて倒れた。私もその場に立ち尽くし、彼の死を見守る。
「……お前が、最後まで…戦ったのは…無駄じゃなかった。」
その言葉が、彼の最後のものだった。
須藤は絶命した。彼の体が完全に力を失い、静かに地面に倒れ込む。私もその場に膝をつき、呼吸を整える。
星屑が体内で静かに崩れていく音が、耳の奥で響いていた。だが、私は無駄に悲しむことなく、ただその死を受け入れた。彼もまた、戦いの中で生き、死んでいったのだ。私も、同じように戦ってきた。
そして、私はその場に倒れ、星屑を大量に吐き出した。体が重く、すぐに動けなくなった。吐き出す度に、喉が痛み、心臓が締め付けられるような感覚が走った。だが、それでも私は笑顔を浮かべようとした。
「玲子!」
獅子合の叫び声が私の耳に届く。振り返ると、彼が急いで駆け寄り、私を抱きかかえた。
「獅子合……私……勝ったよ……」
息も絶え絶えに、私はそう言った。だが、獅子合は私を抱きかかえながら、冷静さを失わずに叫んだ。
「いいからしゃべるな!すぐに美紀さんを呼ぶ!」
私の手が獅子合の携帯に伸びたが、すぐにそれを取り上げて、かすれた声で告げた。
「最後くらい……二人でいさせてよ……馬鹿……」
獅子合は絶望的な表情で私を見つめ、必死に反論した。
「奇跡が起きるかもしれないだろう!?」
だが、私はそれを否定するかのように静かに笑った。
「奇跡なんて起きない……そんなこと獅子合だってわかっているくせに……」
彼の顔が歪む。私の言葉を認めたくないのだろう。だが、私はその時、もう覚悟を決めていた。
「ねぇ獅子合……私……あの時返事していなかったね……」
私はその言葉に少しの苦しみを込めて、彼の肩を抱き寄せ、耳元に口を近づけた。
「私もね……好きだよ……子供たちも好きだけど……獅子合と一緒に……家庭を築きたいって思えるほどに……」
「……!」
獅子合の目が大きく見開かれ、驚きと深い感情が交錯するのを感じた。
「愛しています……ずっと……どうか……幸せになって……」
その言葉を最後に、私の体は言葉を発することなく静かに動かなくなった。
意識が遠のき、体が次第に軽くなっていく感覚があった。きっと、星屑が私の体の中で静かに爆発し、広がっていったのだろう。私はもう何も恐れずに、ただその瞬間を受け入れた。
獅子合は私の名を叫び続けていた。
「玲子!玲子!!」
その叫びが、私の意識の中に響く。だが、それはだんだん遠くなり、最後には静寂が訪れた。
午前零時。私の体は星となって、その場で弾け飛んだ。
街の灯りが静かに瞬く中、獅子合の泣き声だけが響いていた。それは、まるで時が止まったかのように、街中に広がっていった。