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阿「・・・」
教室に入ると、乾いた空気が流れていた。午前7時前。教室には、数人の生徒しかいなかった。僕は、運悪く一番前の席。真ん中の席では無かった安堵感があった。
午前8時。チャイムが鳴る。クラスメートたちが、登校してきた。髪色が明るい人、スカートの丈が短い人、僕には絶対真似できない行動の数々。
この学校は、S市唯一の普通科と芸能科のコースがある。芸能科に通う生徒は、普通科の教室に入ることが出来ない。芸能科専用のクラスで授業を受けることが出来る。但し、例外もある。その例外対象が、、、
目「遅刻しました」
先「はい、遅刻1な」
(ク→クラスメート)
ク「きゃあ~めめ様だわ~~今日も素敵すぎる~~///」
目「ありがと、」
ク「今ぁ、目合った~~!!もう、きょう命日かも、、、、」
目黒蓮。小学生の頃から、子役として活躍していた。今では、映画にドラマに引っ張りだこの人気俳優。そんな彼は、芸能科に進むはずだった。でも、彼は当然のように普通科のクラスに入り、普通の生徒として、授業に参加している。先生からそのような説明をされた。
先「目黒くんは、みんなと一緒に同じ教室で受けることになった。彼を、芸能界の人だからといって、贔屓するつもりは無いし、彼も承知をしているから、みんなも普通に接するように」
先「じゃあ、授業始めるぞ」
阿「・・・」
僕は、そんな彼に1年片思いをしている。去年、彼のいないクラスで過ごし、今年から同じ教室で授業を受けることになった。
先「今日は、昨日の授業の最後の演習問題の答え合わせをしていく。5分時間あげるから、周りの人と答え合わせしてみろ」
その時間が、僕にとって嫌な時間だった。大好きな物理の授業も、その一言で一気に崩れていく。話せる人はいるが、その人は、僕以外の人と話す。その結果僕は一人になる。その時だった、
目「あ、阿部くんだっけ?」
阿「え、?」
目「物理好きなんだよね?」
阿「まぁ、うん」
目「俺、物理苦手でさ、教えてほしくて」
阿「あ、うん、いいよ」
目「ほんとに!!?」
阿「え、まぁうん」
目「じゃあさ、お願い」
阿「あ、うん」
目「この問題なんだけどさ」
阿「あ、ここは、2⃣の公式を使えば、解けます」
目「え、ああうん、」
阿「はい」
目「あのさ、」
阿「うん?」
目「もし、昼休み暇だったらここに来てよ」
阿「え、」
目「じゃあ」
そう言って、彼は微笑んで自席に戻った。右手には彼からもらった小さな紙。まだ、隣には彼が纏っていた香水の匂いが漂っていた。
先「じゃあ、阿部、解いてみろ」
阿「はい」
先「お!正解だ、」
拍手が起こる。振り向くと、彼が笑顔だった。不器用な僕は、微笑むことが出来なかった。
先「お、もうすぐ授業終わるな、じゃあ、ちょっと早いけど、授業終わります」
昼休みになって、彼から貰った紙に書かれている場所に向かった。
阿「遅くなってすみません」
目「ううん、大丈夫」
阿「なんでしょうか」
目「俺たち、クラスメートなのに、なんで阿部くんは敬語で喋るの?」
阿「だって、住む世界が違うし、」
目「でも、同じ高校2年生でしょ?」
阿「でも、」
目「俺は俳優だけど、馬鹿だよ?」
阿「僕は、演じること苦手です」
目「でも、頭いいじゃん」
阿「みんなも頭いいと思うけど、」
目「ふーん、そんなこと言うんだ」
阿「え、」
目「前に会ったことあるのに、覚えてないんだ」
阿「え?いつ?」
目「それは、教えない、俺自身っていうか、目黒家だから」
阿「そうなの、、、?」
目「でも、俺が急に転入してきたの阿部くんがいたからだよ」
阿「え、」
目「いや、また会いたかったから」
阿「そ、そうなの///」
目「うん」
阿「そうなんだ」
目「まぁでもここまで詳しく話すと、どっかで情報漏れると怖いから、また今度話すね」
阿「わ、、わかった」
目「じゃあ、またね」
阿「え、帰るの?」
目「うん、俺この後ドラマ撮影だから、今帰んないと遅刻するんだよね」
阿「そうなんだ」
目「だから、また明後日」
阿「え、明日来ないの?」
目「明日は、接待があるからさ」
阿「高校生が、、、、接待!!?」
目「あ~wwお酒飲まされるわけじゃないよ。」
阿「じゃあ、なんの接待?」
目「今度出演するドラマの監督さんとご飯食べるんだよね」
阿「朝~夜まで?」
目「朝はドラマ撮影、夜からご飯食べに行くんだ」
阿「そうなんだ、頑張ってね」
目「え、ああうん」
阿「敬語外せるように頑張るね」
目「もう外れてるじゃんww」
阿「あ、、///」
目「じゃあね」
阿「ばいばい」
彼とした楽しい会話は、一瞬で終わってしまった。彼は、笑顔で話しかけてくれて嬉しかった。と同時に彼は明日来ないことに寂しさが来た。時計の針は、もうすぐ5限が始まろうとしていた。駆け足で、教室に戻ると彼のカバンがすでに無くなっていた。クラスメートたちは、騒ぎもしなかった。自席に着いて、歴史の教科書とノート、問題集を机に置いた。
?「あいつ、、、」
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